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一番であるということ

夏も近づきつつあり暑さが少しずつ近づいてくる陽気の日。

いつものように家の仕事している理津子がロザリオがいない事に気づく。

セルベーラが言うには息抜きに外に行ってくると言って出ていったらしい。

珍しいと思いつつも少しは心境が変わったのかとも思い帰りを待つ事に。


「すまないな、つきあってもらって」


「いえ、私と話がしたいというので、何か相談ですか」


「…セテラは最速になりたいんだよな?最速になってどうしたいんだ?」


ロザリオは誰かと競うという事をどうにも苦手にしている節がある。


その一方で学校などの環境にいない事もそれに関係しているのか。


「一番になりたいっていうのは分かるんだ、でもなって何がしたいんだ?」


「そうですね、ではこちらから聞きますが、一番になったらその後に何があると思います?」


「一番になったその後?そりゃ新しく一番を目指す奴が出てくるよな」


「そうです、一番になるというのは一番になって終わりではないんです」


「でもセテラは最速になりたいなら、それで夢は叶うって事じゃないのか?」


セテラが言う一番というのはただなるのではなく、一番で在り続けるという事を言う。

それは一番で在り続ける事がどれだけ難しい事なのかという事でもある。


ロザリオは一番になってからが本番なのだという事に気づく。


「一番になるってそれで終わりじゃない…なるだけなら多くの人がなれるんだよな」


「そうです、一番になるだけなら努力で多くはなんとかなるんです」


「勉強でもスポーツでも狭い世界なら一番になれる、でも世界は広いんだよな」


「ええ、そして一番になったら次は一番を守る戦いが始まるんです」


「テストでも次のテストでは一番になれないかもしれない、スポーツでもそうだ」


一番で在り続けるという事は一番の椅子を守り続けるという事でもある。

一番になってはいおしまいではないのだ。


挑戦者達を全て返り討ちにしなければ一番を守る事は出来ない。


「セテラが最速になりたいっていうのはそういう事なんだな」


「でも私は機界人です、いつか私の上位互換が現れるかもしれない」


「それでも最速を守り続けられたのならそれは本当の意味での最速、なんだな」


「そういう事です、どんな勝負でも一番を守るというのはそれだけ大変なんです」


「挑戦者は負けても再挑戦出来るけど、防衛側は一度でも負ければ陥落するもんな」


それが一番の座にいるという事でもある。

新たな挑戦者からの挑戦を受けそれを守り続けなければならない。


一番になるというのは同時に一番を守るという事でもある。


「なんか一番であるっていうのは想像よりずっと大変なんだな」


「それで終わりではなく、今度は自分が前の一番の人と同じ事をするわけですからね」


「でも僕は誰かと競うっていうのはどうにも苦手なんだよな」


「それでもいいと思いますよ、でも勝負となれば必ず優劣はつくものですから」


「勝ち負けってどんな世界でもほぼ確実にあるもんな」


勝負というのは必ず勝ち負けがつくものである。

得点を競うスポーツでも得点を取らなければ勝てない。


勝てないけど負けないというのはそうした世界では有利にはならないのだ。


「セテラはそれでも最速になりたいのか」


「もちろんです、私の夢は最速になる事ですから」


「でも自分より優れた奴が出てくるかもしれないって考えると怖くならないか」


「そうは思いませんね、いいライバルだと思いますよ」


「そう考えられるのはなんというか、羨ましいな」


セテラにとって最速になるというのはスピード勝負に勝つという事でもある。

同時に上位互換が出てくるかもしれないという考えもある。


技術は常に進化し続けているという事だ。


「セテラが最速になるには壁は高そうだな」


「壁は高いほどに燃えますからね」


「頼もしい限りだな」


「壁というのは越えて終わりではないですからね」


「壁を超えてもまた次の壁がある、そう言いたいんだな」


セテラが言う壁というのは何度も越えなければいけないもの。

壁を越えればまた新しい壁がある。


だからそれで終わりではないという事を理解しているのだ。


「なんとなくだけどスッキリしたよ、ありがとう」


「いえ、ならいいんです」


「それじゃ僕は屋敷に戻るよ、あいつが作る飯を食わなきゃならないしな」


そう言ってロザリオは屋敷に戻っていった。

一番になるというのはそれで終わりではないという事。


一番になればその一番を守らなければならない。


一番で在り続けるというのはそれだけ大変なのだ。

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