異国の料理の基準
こっちの世界もすっかり春の陽気になってきた。
花粉がない事もあり花粉症に悩まされない天国でもある。
そんな中あまり見ない食材を手に入れた様子の理津子。
理津子から見た外国の基準でもある。
「りっちん、本当になんでも作れるよね」
「あいつの父親が元プロの料理人っていうのはたぶん嘘じゃないんだろうな」
「それの背中を見て育ったって事だもんね」
そんな理津子が作ってきたのはボルシチやビーフストロガノフ。
外国の料理も食材さえ手に入れば作れるのはその背中を見てきたからこそだ。
「またずいぶんと真っ赤なスープを作ってきたね」
「ビーツが手に入ったから、つい作りたくなってね」
「それにこっちはハヤシライスか?」
「ハヤシライスじゃなくてビーフストロガノフね」
「なんか強そうな名前だね、とりあえず食べようよ」
ビーフストロガノフは強そうな名前。
その気持ちは分からなくはないので、理津子も分かっている。
まあ世の中にはファンタジー世界の登場人物の前のような食べ物はたくさんある。
「ん、美味しいねぇ、見た目よりずっと美味しいやん」
「そりゃしっかり作ったからね」
「でもこういうのってお前の世界で言う外国の料理なんだろ」
「まあそうなるよね、外国の料理ってなると海を越えれば大体それだし」
「そういえばリツコの暮らしてた国って島国だっけ」
海を越えれば大体外国。
海外や外国といった言葉なのも島国だからなのかもしれない。
とはいえそうした外国の料理も勉強するのは料理が好きだから。
「でもりっちんからしたら異国っていうと海を越えたらそこはもう異国なんね」
「そうだね、だから和食とか洋食の基準って大体海を越えたかどうかだし」
「それが基準なのか、分かりやすくていいな」
「あたしの中ではそんな感じだよね、まあ外国の料理も美味しいのは多いから好きだよ」
「でも外国の料理って食材とかがなかなか手に入らないんじゃない?」
確かに外国の料理を作るとなると最初の壁は食材の調達になる。
国内では入手しにくいを使うとかが出てくる事は珍しくない。
そのため別の食材で代用するみたいな事も普通に起こりうるのだ。
「でもりっちんって食材はどこから食材を調達しとるんかね」
「基本的には輸入品を扱うスーパーとかかな、珍しいものは大体あるし」
「そういう店もあるんだな」
「まああたしの国の場合その国の人の味覚に合うようにアレンジされてる事も多いしね」
「つまり本場の味っていうわけでもないのか」
実際理津子の国の場合その国の人の味覚に合うようにアレンジされている事は多い。
本場の味も美味しいが、その方が大衆受けするという事なのかもしれない。
なので美味しいの基準は味覚とマッチするかという事なのかもしれない。
「外国の料理を作る際に食材の調達がまず壁になるってのはあるあるなんかね」
「珍しい食材とかも普通にあるからね、まず探すのは外国のものを扱うお店になるし」
「やっぱり作ってる生産者が少ないとかがあるんだろうな、そういうのは」
「だから輸入品に頼るっていうのはある程度の仕方なさもあるんだよね」
「ないわけじゃないけど、輸入品以外だと探すのが難しいのは外国の料理って感じだよね」
理津子が割と経験している食材探しの難しさ。
外国の料理を作ろうとするとまずはそこにぶつかるのだ。
なので輸入品を扱うスーパーなどに行くのが基本なのだと。
「でも外国ってのは知らない料理もたくさんあるもんよね、自分の味覚を感じるし」
「それに加えて好まれる味も違うからね、本場の味は口に合わないとかあるし」
「それは自分の国で食べる味に慣れすぎてるんだろうな」
「ただ外国の人があたしの住んでた国に来てその食文化に驚くとかは多いけどね」
「隣の芝生は青く見えるみたいな話なのかな」
何を美味しいと感じるかはその人の味覚が大きい。
外国に行って料理を美味しいと感じるのはその人によるところも大きい。
本場の味は本場で食べてみたいと思ってしまうのは料理好きの性なのかもしれない。
「とりあえず美味かったぜぇ」
「それはどうも、また珍しい食材が手に入ったら何か作ろうかな」
「本当にそういうのが好きだな」
「それも含めての料理が好きっていうのが分かるよね」
外国の料理に憧れるのは料理好きの性。
食材の調達に苦労するのもまた外国の料理でもある。
いろいろ作れるこっちの世界が想像より楽しいのだろう。
珍しい食材に出会うと冒険をしたくなるのだから。




