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桜餅のうんちく

こっちの世界も春になり暖かくなり始めてきた。

桜の開花はまだ先だが、梅の花が開き始めているようだ。

植物のシーズンは自分の世界とそこまで差はない様子。

春も始まったという事で、母親直伝のものを作る事に。


「なんか甘い匂いがする」


「小豆を買ってきてたぞ」


「小豆って事は和菓子でも作ってるのかな」


和菓子作りは母親直伝の腕前でもある。


そんなこの季節に美味しいものはというと。


「いい匂いがすんね」


「桜餅だよ、長命寺と道明寺両方作って、青いお皿がつぶあんで白いお皿がこしあんね」


「そういうところは抜かりがないな」


「和菓子はお母さんに仕込まれてるからね」


「とりあえず食べようよ」


作ってきたのは桜餅。

きちんと長命寺と道明寺を作り、それに加えつぶあんとこしあんも作ったという。


あんこ論争は理津子の世界では一種の戦争のようなものでもある。


「んー、美味しいねぇ、あたしはこっちのクレープっぽいやつが好きかも」


「それは長命寺だね」


「長命寺とか道明寺ってなんなんだ?種類の名前か?」


「あたしの世界の発祥の名前がつけられてるんだよ、名前の由来だよね」


「つまり最初に作った人のお店の名前とか?」


主に関東で食べられている桜餅が長命寺である。

その一方で関西で主に食べられている桜餅が道明寺になる。


長命寺は同名の寺が深く関わっている事から、道明寺は道明寺粉を使っている事が由来だ。


「一通り食べたけど、あたしは長命寺のこしあんが好みかねぇ」


「あたしは関東人だけど、道明寺のつぶあんが好きなんだよね」


「そこは好みもあるだろうからな、異国に住みながら別の異国の料理を好むみたいな話か」


「特につぶあんこしあん論争はそれこそ戦争みたいなのもあたしの国の文化的なものだし」


「あんこの論争ってそんなに活発なんだね」


あんこの論争はそれこそ好みの話でしかないのは事実。

ただあんぱんから大福、あんまんなどもあんこ論争は常に起こってきた。


つぶあんが好きな人もこしあんが好きな人も譲れないものがあるという事なのかもしれない。


「でも長命寺と道明寺ってなんなん?寺の名前?」


「長命寺は発祥のお店の近くのお寺だね、道明寺は道明寺粉っていう粉を使ってるのが由来だよ」


「それでそのままそう呼んでるって事なんだな」


「それで東側の地域では長命寺、西側の地域では道明寺が主流なんだよね」


「リツコの住んでた国って東西で分断されてるとかなの?」


分断はされていないが、関東関西という言われ方はするし、地域もそれだけではない。

とはいえ関東と関西では異なる文化圏という感じも強い。


要するに同じ国の中で様々な異なる文化があるという話である。


「にしても東西で文化の違いみたいな話は面白いねぇ」


「そう?あたしの世界だと外国でも北部と南部で文化が違うとかもあったよ」


「そんなものなんだな、国は広いものってイメージだけど、文化の話は面白いな」


「こっちの世界だと国の中でも東西南北で文化が違うとかないの?」


「そういう違いはあるよ、ただそれは割と国土の大きい国に限られるけどね」


文化の違いがある国は国土が大きい国の話ではあるらしい。

そこまで大きくない国では文化的な違いがある事は珍しいとか。


なんにせよ国土が広いから多様な文化が発展するという事なのかもしれない。


「でも桜餅一つ取っても面白いもんだねぇ」


「こっちは流石に道明寺粉は手に入らないからどっちも小麦粉で形だけだけどね」


「それはまあ仕方ないだろうな」


「そういえばこっちの世界には桜餅とかないの?」


「東の国にはあるらしいけど、ここだと渡ってきた人が経営するお店ぐらいかな」


こっちの世界にも桜餅自体はあるらしい。

東の国から渡ってきた人が経営する店では和菓子や和食も食べられるとか。


ただそうした店は珍しいという事でもある。


「まあなんにしてもたまには和菓子もいいもんね」


「桜餅も春の名物だしね」


「桜の開花にはまだかかるけどな」


「今度は桜餡の今川焼きでも作ろうかなぁ」


「ならそれも期待してるね」


次は桜餡の今川焼きでも作ろうかと考える。

桜餡には桜の葉が必要なのでそれをどこで手に入れるかにもなる。


とりあえずそれを探してくるところからである。


「また美味しい和菓子期待しとるぜぇ」


「うん、任せておいて」


「和菓子も割と珍しいし悪くはないよな」


「胃袋を完全に掴まれたもんね」


和菓子作りは母親直伝。

こっちに来てからは洋菓子も得意になった。


料理もお菓子も作るのも食べるのも好き。


春の味覚を探し始めたのだった。

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