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ミソサザイの歌  作者: 和泉ユタカ
第三章 〜 Songs of Wren
42/123

忘れ草(中編)

     4


 公園から帰ってきたあき子が庭の花壇をふと見ると、まだ夏だというのに早咲きの秋桜の蕾が膨らんでいた。昔は秋桜と言えばその名の通り、秋の深まる頃に咲く花だったけれど、最近は五月六月頃から咲く品種があるらしい。

「我が家のコスモスは秋咲きだから、夏頃に咲くコスモスの種を買ってきましたよ」今年の春先、嫁の律子がにこにこと嬉しげにあき子に種を見せたことを思い出した。「お義母さん、コスモスお好きでしょう?秋だけじゃなくて、夏にも花が咲いたら喜ばれるんじゃないかと思って」

 楽しげに庭に種を蒔く律子の後姿にあき子が微笑みを浮かべ、胸の中で呟いた。秋桜を愛したのはわたしではないのよ。わたしはただ、秋桜を愛でるひとの姿を愛したの。



 あき子の姑は随分と気性のキツイ人だった。遠い親戚の紹介でこの家に嫁いできた当初、姑はあき子のお国訛りを泥臭いと言って酷く嫌がった。夫は気にするなと言ってくれたが、あき子は少しでも姑の気に障らないようにと懸命に言葉遣いを直そうとした。しかしいくら気をつけていても、ふとした拍子に言葉の端々に訛りが出る。その度に姑に睨まれて、とうとうあき子は人前では喉が詰まったようになり、喋れなくなった。口もろくろく利けず、子供も出来ないあき子への姑の風当たりは益々強くなった。

 そんな折、義妹の千代子が婚家から一人息子を連れて出戻ってきた。やや病弱な義妹は元々婚家との折り合いが悪かったところへもって、夫に愛人と子供がいることが発覚したことが原因らしいが、本当のところはあき子にはよく分からなかった。

 千代子は美しく、透き通るように色が白く、儚げで、そして時々庭で咳をしていた。一体どうしてこの母親からこの娘が、とあき子が不思議に思うほど千代子は控えめで物静かだった。舅は早くに亡くなっていてあき子は出会ったことはないが、噂によるとやはり物静かな人だったらしい。あき子の夫も無口だったから、家に一人で(かしま)しい人間がいると、他は必然的に無口になるのかもしれない。

 娘と孫を溺愛していた姑は、出戻ってきた娘を嘆くどころか大喜びした。

「千代子が帰ってきて、崇志もこっちに来たわけだし、もうこれで跡継ぎの心配もなくなったわ。お陰であき子さんもお役御免ねぇ。あき子さん、ご実家に帰りたいなら、私達に遠慮することなんて何もないのよ?」

 姑の隣で新聞を読みつつお茶を飲んでいた夫が、あほか、と吐き捨てるように言って席を立った。何を言われても微笑みを絶やさず無言で後片付けをするあき子の横顔を、千代子は陶器の人形のように白く無表情な顔で見つめていた。


 朝食の片付けを終えたあき子が、お櫃に少し残って硬くなったご飯に水を加えて柔らかくすると、それに出汁をとった鰹節と前夜の残り物を混ぜた。あき子が皿を持っていそいそと家の裏に出ると、にゃあと甘えた声がして、小さな影が足下に駆け寄ってきた。

「お腹がだいぶ大きくなってきたわねぇ」あき子が食事を終えて満足気に前足を舐めて顔を洗う猫の大きく膨らんだ腹をそっと撫でた。「たんと食べて、元気なややこを産むんやで? ほんで産まれたらちゃんと見せに来るんやで?」

 猫が自分を撫でるあき子の手をひょいっと小さく柔らかな前足で押さえつけると、喉を鳴らしながらざらざらとした舌で舐め始めた。

「まぁ、私も綺麗にしてくれるの? 親切やねぇ」

 不意に猫が顔を上げ、後ろに飛び退いた。人の気配にあき子が振り返ると、千代子がすぐ後ろに立っていた。

「あら、ごめんなさい」と言って千代子が口許を抑えた。「驚かすつもりはなかったんだけど」

 あき子が慌てて前掛けで手を拭いて立ち上がろうとすると、千代子が笑って、いいのいいの、と言いながらあき子の隣にしゃがんだ。少し離れたところに座り、再び顔を洗い始めた猫を見て、可愛いわねぇ、と千代子が目を細めた。

「あっちの家にも猫がいたのよ。キジトラのオス猫でね、寒くなると必ず私の布団に潜り込んでくるの。その子があんまり温かいから、冬でも私だけアンカが要らないくらいで。ごろごろって振動付きのアンカだったけどね。だけど暑くなり過ぎると布団から這い出て、私の首に襟巻きみたいに乗っかるのよ。そこでゴロゴロ喉を鳴らしたりするから、雷でも鳴ってるのかと思って、びっくりしてよく夜中に目を覚ましたわ」

 こんなによく喋るヒトだとは思わなかった。目を輝かせながら次々と話す千代子をあき子が驚いて見つめていると、千代子が少し恥ずかしげにうふふ、と笑った。

「私がお喋りでびっくりした?」と千代子に聞かれ、あき子が慌ててかぶりを振った。

「あき子さんも猫となら話せるのね」

「あ、あの、でも、ひ、ひととは……」

 何か言いかけて口ごもったあき子に千代子が首を傾げた。

「ひととは話したくないの?」

 そうではない。あき子が俯いた。話したくないわけではない。訛ると思うと恐ろしくて、言葉が口から出たがらないだけだ。無理に出そうとすれば声は震え、吃り、余計に恥ずかしい。

 しばらく優しい目でじっとあき子を見つめていた千代子が、あのね、と穏やかな声で言った。

「相手をひとだなんて思わなければいいのよ。私のことは猫くらいに思ってくれればいいわ」千代子がくすくすと笑った。「お隣の小母さんは狸、うちのお母さんはお台所のお米を盗む大鼠くらいに思えばいいのよ。あの意地悪そうな目付きがそっくりですもの。鼠が何を言って騒いでいても、相手が鼠ならたいして気に障らないでしょう?」

「そ、そんな、き、き、気に障るやなんて……」

「優しいのね、あき子さん。優しくて、いつもにこにこしていて。酷いことを言われても、どうしていつも微笑んでいられるのか、不思議だわ」

「そ、それは、あの、わ、笑えって、いつも、母が……」

 どんなに辛い時でも、いつもにこにこしとらなあかんよ、と母は口癖のように子供達に言い聞かせた。いつも笑っていれば、いつかいいことがあるからね。

「あき子さんは強いのね。知ってる? 悲しい時に笑うのは、怒ったり泣いたりするよりも、ずっと力が要るのよ?」

 私もあき子さんのように強くなりたい、と言って千代子が微笑んだ。

 家の中からあき子を呼ぶ姑の甲高い声がした。行きましょう、と言って立ち上がった千代子が、あき子に向かって透き通るように白い手を差し伸べた。

「鼠がチューチュー言ってるわ。大喰らいだから、きっとお米が足りないのね」


 飽きもせず嫁いびりに精を出す義母に千代子が面と向かって何か言うことはなかったが、しかし義母がぐちぐちと始めると、千代子はあき子に何かしら用事を頼んでその場から引き離すか、それが無理なら義母に聞こえぬよう小さな声であき子の耳許でチューチューと囁いた。それが可笑しくて、笑いを堪えるのに必死で、あき子は義母の文句や愚痴など半分も聞こえなかった。そして知らぬ間に吃りは治まり、あき子はまた普通にひとと話せるようになった。


  ❀


「お義母さん、お茶にしません?」

 縁側でぼんやりと庭を眺めていると、律子が菓子や湯呑みを乗せた盆を持って部屋に入って来た。律子は明るくテキパキとしていて、実によく出来た嫁だ。こんな嫁だったら、義母の気にも入ったのだろうか。

「どうかしましたか?」

「……秋桜」

「はい?」

「さっき見たら、秋桜に蕾がついてて」

「あぁ、そうなんですよ。あと二〜三日で咲くんじゃないかしら」

 コスモスっていいですよねぇ、と言って律子がお茶を淹れながらにこにこと笑う。

「花も葉っぱもふわふわとしていて繊細で、色も優しくて。丈夫でいっぱい咲くし」

「律子さんは嫌いな花なんてあるの?」

「嫌いってことはないですけど」律子が首を傾げた。「でも百合の花なんかはちょっと苦手かも。匂いもキツイし、もうあんまり派手で豪華だから庭なんかに一輪咲くだけで他の花が霞んじゃうじゃないですか。色が白ならまだマシなんですけど、赤とかピンクの百合はもうホントにダメというか」

 そうねぇ、と言ってあき子が微笑むと、手の中の種に目をやった。種の割れ目から覗く小さな薄黄緑色のもの、これは芽かしら……?


     ❀


 あき子が公園に行くと、朧月は必ず現れた。そしてベンチで自分を待つあき子を見ると、目を細めるようにして微かに笑う。

「煉くんはお兄さんに会えた?」

「北の小さな町で、兄貴を知っているという奴に会った。と言っても、兄貴がそこに住んでいたのはずっと昔のことで、中学に入る前に引っ越したらしい」



     5


 秋桜が散り、冬が来て、再び春が巡ってきた。千代子の咳は益々酷くなり、梅雨が明ける頃には床を出ることもままならなくなった。


 甘い果物なら食べれるかもしれない。暑さの為か、食欲の無い千代子のために井戸水で冷やした桃の実を剥くと、なるべく涼しげにみえるようにと深い青色のガラスの器に盛った。

 桃を持って千代子の寝間に行くと、中から人の話し声がした。あき子が縁側の障子を開けようとした時、崇志、と息子に話しかける千代子の柔らかな声がした。

「もし母さんがいなくなったら、あき子伯母ちゃんのことをお母さんって呼んであげるのよ? あき子伯母ちゃんは優しいし、きっと崇志のことも可愛がってくれるから」


 障子を開けようとした手が凍りついたように動かなくなった。そんな事を言ってはいけない、と叫びそうになった。不吉なことは、口にしたら本当になてしまうかもしれないから。わたしはあなたの代わりになんてなれないから。誰も、あなたの代わりになれるひとなんて此の世にいないのだから。


 いかないで、と不意に崇志の消え入るような声が聞こえた。

 いい子にするから、お勉強もお手伝いももっともっと頑張るから、だから僕をおいてどこにもいかないで。


 青いガラスの器の色が滲んでぼやけた。皿をそっと廊下の端に置くと、あき子は足音を忍ばせ、逃げるようにそこを離れた。


 千代子の為に何か自分に出来ることはないか。幾夜も寝ずに考え、お百度参りなるものを思いついた。あき子が子供の頃、病気の母の為に毎晩神社に通った幼い娘の話を、祖母が話して聞かせてくれたのを思い出したのだ。

 真夜中、家の者が皆寝静まってからそっと家を出て町外れの神社に通った。そして夜の暗い風のざわめきに満ちる神々の気配に向かって真剣に祈った。千代に八千代に幸せを約束された名を持つヒトを、どうか連れていってしまわないで下さいと。


 ある晩、いつものようにそっと家を出ると、突如背後から声をかけられた。

「毎晩毎晩、一体お前は何をやっているんだ?」

 びくりとして振り返ると、電柱の陰に腕組みした夫が立っていた。

「見んといてっ」とあき子が叫んで顔を隠した。「折角あとちょっとやったのに、見られたらお百度参りが台無しや!」

「お百度参りって、お前なぁ」呆れたように夫が溜息をついた。「……帰るぞ」

 肩を震わせて啜り泣きながらも帰ろうとはしないあき子を、夫が困ったように眺めた。

「何をそんなに必死に頼んでいたんだ?」

「……千代子さん」嗚咽を堪えながらあき子が言った。「千代子さんがよくなりますようにって」

「……そうか」

「でも、どうしても千代子さんが欲しいなら、私が千代子さんの代わりになりますから、どうか私を連れていって下さいって……」

「馬鹿もんっ」と不意に夫が怒鳴った。後にも先にも、夫が声を荒げるのを聞いたのはこの時だけだった。

「ひとは誰しもが唯一無二の存在で、誰も誰かの代わりになることなんて出来ないんだ。まして誰かの代わりに生きたり死んだりすることは絶対に出来ない。二度とそんなくだらない事を口にするな」

 あき子に背を向けて歩きだした夫の肩が微かに震えていた。


 千代子は美しすぎたのかもしれない。その透き通った硝子細工のような美しさを手元に置いて愛でようとしたのか、それともひとにあるまじき美しさへの妬みだったのか、神々はあき子の願いを聞き入れようとはしなかった。

 目に映る全てが真っ白に霞むほど暑い夏の日、降りしきるような蝉時雨の中、本当に眠るように、ただひたすら静かに、あのひとは逝ってしまった。


     ❀


「もうすぐ千代子お母様の命日ですねぇ」

 居間で編み物をしていると、シャツにアイロンをかけていた律子がふと言った。

「ハジメは模試があるから今年は行けないんですけど」

 あき子が編み物の手を止めてまじまじと律子を見た。

「律子さん、あなた何を言ってるの?」

「え?」と言って律子が顔を上げた。「何って、あの。あ、やっぱりハジメも模試を休ませてお墓参りに連れて行きますか?」

「お墓参りって、一体誰の命日だって言うの?」

「誰って、あの、千代子お母様の……」

「千代子さんは亡くなってなんかいませんよ」あき子が飽きれたとでも言わんばかりに溜息をつくと編み物を取り上げた。「まったく、縁起でもないこと言わないで頂戴な」


      ❀


 手首に巻きつき、腕を這うように伸びる暗緑色の茎を、朧月がそっと指先でなぞった。茹だるような真夏の日差しにもかかわらず、その指はひんやりと冷たい。

「煉くんは今どこにいるの?」

「街に向かったよ。兄貴は両親と都会に住んでいるって誰かに教えられて」



     6


 千代子の四十九日が済むと、夫はあき子と崇志に正式に養子縁組することを伝えた。これからは自分を父と、あき子を母と思うように、と淡々と話す夫の前に正座した幼い少年は、亡き母の面影を色濃く受け継いだ白い陶器の人形のように無表情な顔で、あき子と夫に向かって深々と一礼した。


 夫の話が終わった後、あき子が台所の窓からふと外を見ると、崇志が庭で空を見つめていた。もう秋だというのにその日も暑く、ゆらゆらと立ち上る陽炎に少年の影が頼りなく霞んでみえた。濡れた手を拭いて庭に出ると、あき子がそっと崇志の隣に立った。あのね、タカシ君、とあき子が言った。

「あのね、おばちゃんのこと、無理にお母さんなんて呼ばんでもええのよ? ちゃんとわかってるから、タカシ君のお母さんはひとりだけだって、おばちゃん、ちゃんとわかってるからね」

 少年は何も言わず、ただ無表情に空を見つめていた。

「お母さんなんて呼ばれなくったって、おばちゃんとタカシ君は今までだって仲良しだったでしょう? だから大丈夫。おばちゃんはタカシ君が大好きだから、なんも心配することも気を遣うこともないのよ?」

 家の中からあき子を呼ぶ姑の声がした。はーい、と返事をしてあき子が慌てて家に戻ろうとした時、少年が不意にあき子の割烹着の端を掴んだ。


 いかないで、と崇志が囁くような声で言った。僕をおいて、どこにもいかないで。

「……いかへんよ」

 思わず地面に跪き、少年の小さな背中を抱きしめた。

「心配しなくていいんよ、もう誰も、タカシ君をおいていったりせえへんよ」


 崇志はあき子のことを『お母さん』、と呼んだ。産みの母のことは『母さん』と呼んでいたから、『お』がついているか、いないかの小さな違いだが、そうすることで少年はその小さな胸の内で自分なりに折り合いをつけていたのかもしれない。


 崇志の亡き母は秋桜を好み、秋桜の柄の浴衣を大切にしていた。庭の隅に花壇を作り、コスモスの種を蒔こうか、とあき子が言うと、崇志はとても嬉しげに頷いた。

「お母さん、水汲んできたよ」 あき子が花壇の土を耕していると、大きなバケツを引きずるようにして崇志が近づいてきた。

「あらあら、重いのによう持ってきたね。力持ちねぇ」

 得意気な崇志を見てあき子が微笑んだ。と、庭を通りかかった義母が不意に、石女が、と憎々しげに呟いた。

「産みもしない子供に自分のことをお母さんだなんて呼ばせて得意気にして、図々しいったらありゃしないよ。子も産めない癖に無駄に丈夫で、千代子はあんな若くで死んでしまったというのに」

 崇志の為にもあんたが代わりに死んでくれれば良かったのに。義母の吐く毒に、あき子がそっと俯いた。悪く思ってはいけない、と密かに自分を戒めた。このひとは寂しくて、悲しくて、それを私にぶつけているだけなのだから。私は何も言わず、ただ微笑んでいればいい。

 ばしゃり、と大きな音に驚いて振り返ると、頭から水を滴らせた義母が茫然として突っ立っていた。その前で、空のバケツを手にした崇志が無言で祖母を睨みつけていた。


 以後、義母が面と向かってあき子の悪口を言うことは二度となかった。


     ❀


「まぁ、お義母さん、そんな格好で、どうしたんですか?」

 びっしょりと服を濡らして風呂場掃除をしているあき子に律子が目を丸くした。

「お義母さんったら、そんなにびしょびしょで、いくら夏でも風邪引いちゃうじゃないですか。後は私がやっておきますから、早く着替えて下さいな」

「でもねぇ」あき子が困った顔で嫁を見つめた。この優しげな若い女性は誰だったかしら。「御夕飯の前にお風呂の用意をしておかないと、お義母さんのご機嫌が悪くなるからねぇ」

「は?」

「それにね、お義母さんは少しだけだけど晩酌を嗜まれるから、やっぱり酔って熱いお風呂に入ったりしたら危なくって、私も落ち着かないしねぇ」

 律子が困ったように口籠っていると、「どうしたの?」と崇志が顔を覗かせた。

「うわ、お母さん、びしょびしょじゃん。後はりっちゃんに任せて早く着替えておいでよ」

「はぁ、あの、でもよそ様にそんな事をさせるわけには……」

 この妙に馴れ馴れしい中年の男は一体誰だ? 何処かで見た気もするが、頭が霞がかかったようにぼんやりして、どうも思い出せない。

「は? よそ様?」

 崇志が首を傾げると、律子がそっとその袖を引っ張った。

「だから言ったじゃない。お義母さん、最近ちょっと様子がおかしいのよ。なんだか少し混乱しているみたいで……やっぱり一度病院に行って診て貰ったほうがいいんじゃない?」

 ひそひそと背後で話す二人組を無視して、あき子が再び風呂場のタイルをごしごしと擦り始めた。


     ❀


 腕に絡みつく茎は益々濃く、太くなってきた。

「煉くんは街に着いた?」

「うん、でも都会ってのは広くて人間が無駄に多いからね。虱潰しってわけにもいかなくて、流石のヤツも手こずっているよ」


(To Be Continued)

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