35話 ボス戦
襲い掛かってくるモンスターを倒し、何度も行き止まりに打ち当たりながら、地下水路の奥へと進んでいくと、突然開けた場所に出た。
マッピングはしてないから、確実なことは言えないけど、多分ここが終着点のはずだ。そしてここに、討伐対象である【地下水路に潜む者】がいるはず、……―――なのだが、ドーム状に開けたそこに、ボスらしきモンスターの姿は見当たらない。ただ空所の中央に、豪奢な装飾が施された宝箱が1つ、ポツンと置かれている。
「たからばこー」
「たからばこだー!」
「あぁ、そうだな」
どっからどう見ても、不自然で怪しい宝箱だ。
「あやしい……」
「あやしいよね…」
2人とも訝しげに宝箱を見るだけで、一歩たりとも近付こうとしない。…まぁ、あまりにもあからさますぎるからな。
ボス部屋らしき場所に、ボスの姿はなくて、その代わりにあったのは、宝箱が1つ。
――――どう考えても、あの宝箱がボスだろ!
そもそもモンスター知識のおかげで、視認した時から、宝箱の頭上に【ミミック】って表示されているしな!!
「ルシエル、ミシェル。あれは宝箱じゃなくて、ミミックだ」
「みみっく?」
「あのたからばこ、モンスターなの?」
「そうだ。……見てろ」
先手必勝、というわけで、ウォーターボールを宝箱に扮してるミミックに向けて放つ。突然の攻撃に、ミミックは宝箱に扮するのを止めて、慌ててウォーターボールを避けた。
「当たらなかったか…」
結構素早いな。当てるつもりで放ったのに。
ウォーターボールを避けたミミックは、ガタガタと体を揺らして、ガパリッと宝箱の蓋を開けた。蓋の淵にはサメのようなギザギザの歯があり、中身は闇のように暗く、空虚だ。
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名前:ミミック・宝箱
レベル:??
レアリティ:★8
空腹度:28
HP:????/????
MP:???/???
筋力:???
体力:???
知力:???
器用さ:???
素早さ:???
運:???
【スキル】
突撃
噛み付き
火魔法
・ファイアボール
風魔法
・ウィンドカッター
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★8…っ?!
しかもレベルや能力値が表示されない!?
HPやMPも表示されてないけど、HPの?が4つあるってことは、HPは4桁いってるってことか?!
AWOはHPゲージが表示されないから、鑑定してもHPが表示されないとなると、残りHPを確認することができない。……これは…精神的に結構キツそうだな。
「ホーリーフェター」
ミミックの鑑定結果に驚いていると、ミシェルが行動阻害の魔法を放った。俺の魔法を避けたことで油断してたのか、ミミックはホーリーフェターからは逃れ切れずに、光り輝く鎖に縛り付けられた。
地面に縫い付けられたミミックは、拘束から逃れられようとガタガタと体を振るわせる。
「……あ、そうだ!」
モンスター図鑑に書かれていたミミックの混乱!
俺はインベントリーから混乱薬を取り出した。
「ミシェル! これをミミックにぶつけてくれ!」
「わかった!」
俺から混乱薬を受け取ったミシェルは、ミミックに向けて投げ付ける。
混乱薬はミミックに命中し、黄色い薬液がミミックに降り掛かった。
混乱の付着率は15%しかない。インベントリーからもう1つ取り出しつつ、ミミックの様子を観察する。
「…? ……ッ??」
ミミックはガタッ、と大きく体を揺らした後、小刻みに体を震わせ、空虚から大量のコインを吐き出した。
「混乱した!」
モンスター図鑑に書かれていた通り、ミミックは体内に貯め込んでいたものを吐き出し始めた。
「…ッ! …??!」
ミミックは相当貯め込んでいたようで、コインだけじゃなく、淡い水色の石や赤色の石、灰色の布、サークレットや鎧などの装備品を吐き出していく。
ホーリーフェターの効果が切れても、ミミックの混乱状態は治まらない。ミミックはガッタガッタと左右に大きく体を揺らして、自分に向けて魔法を放った。当然それを避けるはずもなく、ミミックは自分の魔法で自爆する。
「ミシェル、もう1度頼む」
そろそろ混乱の持続時間が切れるはずだ。
俺はミシェルに混乱薬を渡した。
「うん!」
ミシェルはタイミングを計りながら、ミミックに混乱薬を投げ付ける。
「……ッ?! …? …??」
どうやらミミックは状態異常攻撃に弱いようだ。再び混乱状態に陥ったミミックは、あらぬ方向に向けて魔法を放った。




