32話 隠しダンジョンの情報?
声がする方へと獣道を進んでいくと、だんだんと叫んでいる内容がはっきりと聞こえるようになぅてきた。
「……いませんかー!」
…? 誰か捜してるのか?
声はどんどん大きくなっていく。
「誰かぁー!」
あれ? これはもしかして……。
声に導かれるまま進み、着いた先にあったのは、大きな穴。その穴の中から声が聞こえてくる。
「たーすーけーてぇ〜!!」
やっぱり! 誰か穴に落ちてる!
「大丈夫ですか?!」
慌てて穴に近付いて中を覗いてみると、10歳前後の少女が膝を抱えて座り込んでいた。マーカーの色は、NPCを示す黄色だ。
穴はなかなか深く、3〜4mはありそうだった。
「あっ! た、助けてください!」
俺の声に安堵したのか、バッと顔を上げた少女が、涙声で助けを求めてくる。
「分かった! 怪我はしてないか?」
「足捻っちゃったけど、大丈夫です…!」
そっと顔を伏せた少女だったが、すぐに顔を上げ、ニッコリと笑った。
痛がってるようには見えないけど、座ったまま立とうとしないってことは、それだけ痛みが激しいんだろう。もしかしたら骨にヒビが入ってしまってるのかもしれない。
「怪我してるなら、先にポーションを落とすから、まずはそれで怪我を治してくれ」
「えっ?! で、でも…っ、何もお礼……」
「気にしなくていい」
遠慮する少女に笑い掛け、俺はインベントリーから上級ポーションを取り出すと、それを穴の中に落とした。…落とすのは下級ポーションでもよかったかもしれないけど、下級ポーションはギックリ腰は治せても、骨折は治せないそうだから、万が一を考えて上級ポーションの方にしておいた。
え? 勿体ない?
回復量が1000もあるから、当分使い道がないし、いいんだよ。
本当は中級ポーションがあればよかったんだけど、手元にはない。材料である★4の薬草はあっても、水がないから作れないんだよな。
「こっ、これ! 上級ポーション?! つつ使えませんよ! こんな高級品!!」
「いいから気にするな」
あわあわと慌てふためく少女の声を聞きながら、俺は予備で買っておいたロープを取り出し、片方を近くの木の幹に巻き付け、きつく縛った。
道具屋で売っていた捕縛用のロープは、西部劇で見るような投げ縄用のもので、長さは20mほどある。引っ張り上げるにはちょうどいい。因みに、ミシェルが《捕縛術》で使ったロープは、適切な長さに切ったものだ。
「ちゃんと使ったか?」
「は、はい!」
「じゃあロープを垂らすから、それを腰の辺りで縛ってくれ。引っ張り上げるから、しっかりロープを掴んでるんだぞ?」
「分かりました!」
ロープを垂らすと、少女がいそいそとロープを体に巻き付ける。それを見て、俺はルシエルとミシェルに向き直った。
「ルシエル、ミシェル。一緒にこのロープを引っ張るぞ」
「うん」
「わかった!」
2人は意気揚々とロープを掴んだ。俺もロープを掴むが、きっと大して役には立たないだろう。
だって俺、筋力5しかないからな!
△▼△▼△▼△
穴から救い出した少女と一緒に、アルビスタに向かう。
何故穴に落ちたのか訊けば、薬草採取に夢中になって、穴が空いてることに気付かなかったらしい。ドジっ娘か。
せっかく集めた薬草をダメにしてしまった、と嘆く少女に、俺たちが集めた薬草を分けてあげたら、「恐れ多いです」ととても恐縮されてしまった。
「でも、森の奥には高レベルのモンスターがいるから、君1人じゃ危険だろ?」
「あ、それは大丈夫です! 魔物除けの香水を付けてるんで、モンスターは近寄ってこないです」
「なるほど」
だからあんなに大声を出していたのに、モンスターに襲われるどころか、近寄ってくる気配すらなかったのか。
「あ、そうだ。今南区でちょっとした噂になってるんですけど、選士様は何かご存知ですか?」
「噂? いや、何も知らないな」
「そうですか…。実は、南区から地下水路に入れるんですが、最近そこに、モンスターが棲み着いたらしいんです。真偽は分からないんですけどね」
地下水路にモンスターか……。
何だか隠しダンジョンっぽいな。…まぁ、水路だからダンジョンってわけじゃないんだけど。
アルビスタで装備やアイテムを整えたら、ちょっと行ってみるか。




