30話 生け捕りは難しい
十分すぎるほどの薬草を採取した俺たちは、ホーンラビットを捕獲するために、森の奥へと進んでいった。途中、見付けにくいと【薬草辞典】に書いてあった、状態異常薬の材料になる茸を見付け、即行採取。他にもレアリティの高い薬草を採取できた。これはきっと、ルシエルのユニークスキルのおかげだろう。
森の奥へと進んで20分ほど経った頃、ミシェルの索敵に反応があった。
「ママ、みつけた」
「そうか。今度こそ捕まえような」
互いに声を潜めながら、ホーンラビットの姿が視認できる距離まで近付く。発見したホーンラビットは小型犬くらいの大きさで、耳をピンッと立てて、辺りを警戒するかのように周りを見渡していた。
ワイルドボアと違って、ホーンラビットはアクティブモンスターだ。見付かれば襲い掛かってくるが、劣勢になると逃げる。実際、あと少し、というところで、脱兎の如く逃げられた。
実はここに来るまでの間に、十数体のホーンラビットと遭遇し、捕縛しようとした。
―――…が、すべて失敗。
理由は簡単だ。ミシェルが強すぎて、遭遇したホーンラビットを瞬殺してしまうからだ。しかもホーンラビットを倒したことでレベルアップしてしまい、更に強くなってしまうという悪循環。
《捕縛術》は相手をある程度弱らせないと使用できない。だからホーンラビットを弱らせようと攻撃すると、一撃で倒してしまう。
……俺? 無理無理。俺の攻撃力じゃダメージ与えられないし、《水魔法》だと倒してしまう。当たり前だけど、ルシエルの魔法でも一撃だった。
剣と魔法に見切りを付けて、今度は投擲でHPを削ろうとすると、《捕縛術》が使えるようになる前に逃げられてしまう。
ホーリーフェター?
勿論使ってるさ。ホーンラビットを拘束状態にしてから、投擲でHPを削っていく方法で。
…けど、レベルが低いと投擲でも倒してしまうし、いい感じに削れていても、クリティカルが発生して倒してしまったり、持続時間が切れで逃げられてしまったりして、なかなか上手くいかない。因みに、投擲をしてから拘束しようとすると、投擲を受けた時点で、ホーンラビットはあっという間に逃げてしまう。
そんなわけで、レベルが高いホーンラビットを求めて、森の奥に来たわけだ。
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名前:ホーンラビット
レベル:5
レアリティ:★2
空腹度:0
HP:62/62
MP:28/28
筋力:35
体力:36
知力:28
器用さ:30
素早さ:36
運:25
【スキル】
突撃
脱兎
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発見したホーンラビットは、今までで1番レベルが高く、レアリティも高かった。
――――あ、この知力とHPなら、俺の魔法でも一撃じゃ倒せない。
「ミシェル。ホーリーフェターを使ってくれ。あのホーンラビットなら、俺の魔法で援護射撃ができそうだから、絶対に捕まえよう」
「うんっ」
力強く頷いて、ミシェルはホーンラビットに掌を向ける。
「……ホーリーフェター」
声を潜めたまま、ミシェルが魔法名を発すると、ホーンラビットがいる場所の地面から鎖が現れ、地面に縫い付けるかのようにその体を拘束する。
「…ッ?!」
「ウォーターボール!」
突然のことに混乱しているホーンラビットに向けて、俺もすかさず魔法を放った。
15cmほどの水の球が、ホーンラビットに向かっていく。
「ブギィ…ッ」
ウォーターボールが命中したホーンラビットは、豚みたいな鳴き声を上げ、拘束から逃れようともがく。
「ミシェル!」
「うん!」
ミシェルは近くに落ちている小石を拾い、ホーンラビットに投げ付ける。本来なら、投げナイフとかの武器を投げるべきなんだけど、ちゃんとした武器なんて用意してなかったし、何よりこれが、1番HPの減りが悪い。
小石が命中し、ホーンラビットの動きが少し鈍くなる。投擲のリキャストタイムが終わり、再度ミシェルの投擲が命中すると、ホーンラビットはもがくのを止めた。
「ギィィ……」
弱々しく鳴き声を上げ、地面に伏している。
「ミシェル、はい」
「ありがとう」
ルシエルから捕縛用のロープを受け取り、ミシェルは手早くホーンラビットを縛り上げた。縛られたホーンラビットは、黄緑色のライトエフェクトを放って消える。
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【捕縛クエスト】
ホーンラビット 1/3
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ハァ、やっと1匹捕まえた。残りはあと2匹か……。




