表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/37

25話 カーラエルの初戦闘


 結果から言えば、ミシェルの先制攻撃で、ワイルドボアは爆散した。


 最初は、現実世界にいる猪と同じくらいか、やや小さめのワイルドボアに、剣を片手に勇ましく挑んでいくミシェルの姿を、内心ハラハラしながら見てたんだ。


 だって幼児なんだぞ?!

 見た目よりしっかりした走り方だったし、全然危なっかしくなかったけどッ!!


 ………相手はノンアクティブモンスターだし、こちらから手を出さない限り、いくら近付いても襲ってこない。だからミシェルが先制攻撃を当てたら、俺もすぐに加勢するつもりでいたんだ。…まぁ、加勢したところで、俺の筋力5しかないから、大して役に立たなかっただろうけどな。

 それに結局、すべて杞憂に終わったし。

 「えいっ!」という可愛らしい掛け声とともに、ミシェルが繰り出した一撃で、本当に、呆気なく、ワイルドボアが爆散してしまったからだ。

 あまりにも呆気なく終わるので、試しにワイルドボアを《鑑定》してみて、その理由が分かった。


==================


名前:ワイルドボア

レベル:1

レアリティ:★1

空腹度:0

HP:28/28

MP:7/7

筋力:16

体力:12

知力:3

器用さ:5

素早さ:10

運:4

【スキル】

突進


==================


 弱い。弱すぎる。

 同じレベルなのに、能力値に差がありすぎる。これなら一撃で倒せて当然だ。

 レアリティが違うだけで、こんなにも能力値に差が出るのか……。

 でも、これなら俺でも倒せるかもしれない。


「…じゃあ今度は俺がやってみるかな」

「だめ…っ!」

「ダメぇ!」

「えっ、ルシエル? ミシェル?」


 2人は激しく首を横に振って、俺の動きを止めるかのように、足にしがみ付いてくる。


「ままはぼくたちがまもるの!」

「オレたちがママをまもるの!」


 えぇー……。2人の気持ちは嬉しいけど、それだと俺、パートナーに寄生してることにならないか?


「う〜ん、でも1度は1人で戦ってみたいんだ」


 アバター作成後のチュートリアルでは、付与魔法の使い方しか習ってない。攻撃は実戦あるのみ☆って言われたからだ。


 …誰にって?

 こんなふざけた言い方をするは1人しかいない。パックだよ、パック!


「まま……けがしない?」

「けがしないでくれる?」

「できるだけ怪我しないように戦うよ」


 心配そうに見上げてくるルシエルとミシェルに、安心させるように笑い掛けた。


「うん…」

「けがしないで……?」


 渋々頷いてくれた2人の頭を一撫でしてから、ワイルドボアに近付く。

 正直、一度もAWOで戦ったことがない俺が、無傷で勝利するなんて無理だ。

 多分杖による打撃じゃ、ダメージは与えられないだろう。だって俺の筋力5しかないし。となると、杖に火属性を付与して、ワイルドボアが火傷状態になるまで、延々と打撃を繰り返すしかないか…?


 ――――結構時間が掛かりそうだな。


 ハァ、と息を吐いて、俺は自分の杖に火属性を付与した。


「《属性付与・火》」


 杖が一瞬赤く染まり、赤い靄のようなものが杖全体を覆う。これで火属性が付与できた。

 《属性付与》は1度属性を付与すると、効果が120秒間も続く。なのに消費MPは、たったの8。しかもキャストタイムとリキャストタイムがないんだ。かなり使い勝手のいい魔法だ。


 ――――さて、準備は整った。


 俺はグッと杖を持つ手に力を入れて、動きを止めているワイルドボアに、背後から襲い掛かった。


「ピギイィッ」


 火属性の打撃を受けたワイルドボアは、悲鳴を上げて俺に向き直る。続けざまに何度か攻撃を繰り返すが、ダメージを受けている様子はない。……やっぱり筋力が低すぎると、防御力に防がれてダメージが通らないようだ。それでも、ワイルドボアの毛が焦げているから、火傷状態にはできるかもしれない。

 体制を整えるために少し距離を取ろうとして、ワイルドボアが前足で激しく地面を掻いていることに気が付いた。


「やば…ッ」


 突進か!

 これは――――避けられないッ!!


「く……ッ」


 杖でワイルドボアの突進を受け止めようとしたが、受け止めきれずに吹っ飛んだ。大した痛みも衝撃もなかったけど、ノックバック効果があるのか、受け止めた時の姿勢が悪かったせいで、かなり派手に吹っ飛ばされてしまった。


「まま…ッ!」

「ママぁーッ!」


 ルシエルとミシェルの悲痛な叫び声が聞こえる。


 ――――ごめん、2人とも。


 やっぱり無傷は無理だった。

 俺は無様に地面を転がって、HPが減った。…ワイルドボアの《突進》で減ったっていうより、地面に転がった衝撃でHPが減ったような気がするんだけど、どういうことだ?

 …っと、まだ戦闘は終わってない。

 ワイルドボアからの追撃を警戒し、体を起こした俺が見たものは――――……、


「……ゆるさない」

「ママをいじめるヤツはゆるさない…ッ!」


 怒りで体を震わせるルシエルとミシェルが、ワイルドボアを攻撃している姿だった。

 ルシエルの前には複数の魔法陣が同時に出現し、キャストタイムなしで複数の魔法が同時に放たれる。その魔法が放たれるよりも前に、いつの間にかワイルドボアに肉薄していたミシェルは、見たことのないスキルでワイルドボアを滅多斬りにしていた。


「ふ、2人とも……」


 それ……完全にオーバーキルだ。

 だってミシェルの一撃で、ワイルドボアは爆散するんだぞ? それなのに滅多斬りなんて……。

 ルシエルの魔法だってそうだ。ワイルドボアには一発で事足りる。それが複数の魔法を同時になんて……。


 ――――オーバーキルにもほどがある…!


 魔法が着弾する直前に、ミシェルはサッとワイルドボアから離れる。あれが《以心伝心》の効果なんだろう。こんな場面でスキル効果を実感するとは思わなかった。



 ――――ところで2人とも……そんなスキル持ってましたっけ?


 思わず敬語になってしまったのは、忘れてくれ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これで、一人で戦うorパパと呼ぶを選ばせてそれでもママにこだわったらタイトル回収感が強かったかも
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ