13話 お着替えをしましょう
お風呂から上がって部屋に戻ると、ベッドの上にあった卵の殻が、一部を残して服や靴、武器に変わっていた。どうやらこれらが、この子たち専用の装備品らしい。…ご丁寧にボクサータイプのパンツまである。
服をどうするか悩んでいたから、ちょうどよかった。
どちらがどちらのものかは、残っている卵の殻を見れば分かる。
灰色がかった卵の殻が残っている方が、ルシエルの装備品で、薄黄色の卵の殻が残っている方が、ミシェルの装備品だろう。
「まずはルシエルからな」
見た目は3、4歳だけど、生まれたばかりだから、1人で着替えるのは無理だろう。
「おいで」
「まま!」
手招きすると、ルシエルは包まっていたタオルを放り出して、嬉しそうに俺に抱き付いてくる。…可愛い。
この子たちをお風呂に入れていて、気付いたことがある。
ルシエルは大人しくてしっかりした印象を受けたが、実はとても甘えん坊だった。
湯船に浸かっている間は、俺の手をずっと掴んで離そうとしなかったんだ。ルシエルの髪や体を洗ってる時も、俺に触れようと手を伸ばしてきたほどだ。
「ルシエルずるい! オレも!」
ぷくっと頬を膨らませて、ミシェルもオレに抱き付いてきた。
ミシェルは最初に受けた印象通りの活発な子だった。湯船の中ではしゃぎまくって、俺を濡れ鼠状態にしてくれたからな。…まぁ、裸になってなかった俺も悪いんだが。
ルシエルほどではないが、ミシェルも甘えん坊で、俺がルシエルを構うとすぐにヤキモチを妬く。双子だからってのもあるのかもしれない。
え? 濡れた装備はどうしたのかって?
《乾燥》のスキルで乾かしたんだよ。試しに使ってみたら、濡れた装備にも使えたんだ。
対象が薬草じゃなくても使えるようだから、かなり利便性が高い。しかも一瞬で乾くから、不快な思いをしないで済むし。
「あー…、ミシェルは少し待っててくれないか?」
さすがに2人まとめて着替えさせるのは無理だ。俺には子育ての経験がないからな。
「いい子だから。…な?」
「……うん」
頭を撫でながらお願いすれば、ミシェルは渋々頷いて俺から手を離した。
「いい子だ」
もう一度、今度は髪をかき混ぜるようにくしゃくしゃっと撫でれば、ミシェルは「わっ」と小さく声を上げた後、嬉しそうに顔を綻ばせた。その様子を確認して、俺はベッドの上に置かれたルシエルのパンツを手に取ると、ルシエルの前にしゃがみ込んだ。
「じゃあ、まずはパンツからな。…ルシエル、こっちの足を上げて」
ルシエルが転ばないように俺の肩を掴ませ、パンツを履かせる。インナー……はないようだから、次は服を―――…って、これ、セーラー服か?
畳まれていた服を広げてみれば、それは黒いセーラー服だった。…まぁ、セーラー服は水兵の制服だし、別におかしくはないか。
黒いセーラー服を着せ、紺色の半ズボンを穿かせる。靴下はハイソックスだったから、立ったままだと危ないか。ルシエルをベットの端に座らせて、黒いハイソックスを履かせた。あとはこの黒いブーツを履かせたら終わりだ。
「……よし、これで終わりだな」
キュッとブーツの紐を締め、俺ばホッと息を吐いた。
「靴、キツくないか?」
「うん。まま、ありがとぉ」
「…ルシエルもいい子だな」
ちゃんとお礼が言えるなんて。
「つぎ! オレのばん!」
ルシエルの頭を撫でていると、どんっと勢いよくミシェルが俺の背中にしがみ付いてきた。
「…っと、ああ、次はミシェルの番だ」
「うんっ!」
満面の笑みで頷くミシェルに、俺も釣られて笑ってしまう。
ミシェルを背中から剥がして、ベッドの上からミシェルのパンツを手に取る。
向き直って、ミシェルの前にしゃがみ込めば、ミシェルが俺の肩をギュッと掴んできた。どうやら、さっき俺がルシエルにしたことを見ていたようだ。
「じゃあ、こっちの足を上げて」
「うん!」
ミシェルは溌溂とした様子で右足を上げた。
△▼△▼△▼△
白いセーラー服に紺色の半ズボン、白いハイソックス、黒いブーツ。
ミシェルの装備も、セーラー服とハイソックスの色が違うだけで、作りはルシエルと同じだった。
手を繋ぎながら、ベッドの端に並んで座る2人の姿に、思わずスクショした。
実に可愛らしい水兵さんだ。
「……あ、この残った卵の殻、どうしたらいいんだ?」
子供たちの装備品にならずに残った2つの殻。
何か使い道でもあるのか?
ちょっと《鑑定》でもしてみるか。
==================
天卵の殻・純黒
【種類】
素材
【レアリティ】
★10
【説明】
融合素材。
特別な天上族が孵化した時にしか入手できない幻の素材。
==================
…え、何この激レア素材……。




