12話 パートナーの名前
俺が借りた部屋のバスルームは、さっきまでいた部屋と同じくらいの広さがある。浴槽も、旅館とかにある家族風呂並だ。
冷えてしまった体を温めるために、子供たちを湯船に浸からせる。生まれて初めてのお風呂に、子供たちは目をパチパチと瞬かせた。
え、かけ湯?
…………銀髪の子のくしゃみに慌てていて……し忘れました…。
ま、まぁ、ぬるま湯だし、お湯の温度に体慣らさなくて大丈夫だろ! それに内風呂だから、俺たち以外入らないしな!
…生まれて間もない子に、産湯はNG……?
えッ?! そうなの!? し、知らなかった…。
で、でもっ、この子たちの見た目は3、4歳くらいあるし、新生児ではあるけど、赤ん坊ってわけでもないから………、…大丈夫……だよ、な?
子供たちはお湯に浸かりながら、じっと俺を見詰めてくるだけで、特に何のリアクションもない。…と言うか、リアクションがなさすぎる。
「え、えーっとぉ……」
どうすればいいのか分からず、俺も子供たちを交互に眺めた。
さっきくしゃみをしていた子は、肩甲骨辺りまである銀色の髪に、形のいい柳眉、瞳の色は俺と同じ紫色で、やや垂れ目がちだ。鼻筋はスッと通っていて、可愛らしい口元は少し開いている。利発そうな顔立ちをしているが、目が垂れ目がちなせいか、庇護欲を掻き立てられる美しょ―――…美幼児だ。背中には一対の黒い翼があり、翼を閉じた状態での大きさは、耳の辺りからから腰の辺りまである。
もう1人は、程よく伸ばした金色の髪に、形のいい柳眉、瞳の色はルビーのように紅くて、ぱっちりとした大きな目をしている。スッと通った鼻筋に、可愛らしい口元は銀髪の子と同じように少し開いていて、活発そうな顔立ちをしている。こちらも当然、美幼児だ。背中には一対の白い翼があり、大きさは銀髪の子と同じくらいだ。
子供たちを交互に見ていて気が付いた。
――――似てる。
髪や瞳の色、目の形で気付きにくいけど、よくよく見れば2人はそっくりだ。
「……双子…?」
ポツリと呟くと同時に、パッとメッセージウィンドウが表示された。
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【お知らせ】
パートナーの情報が開示されました。
パートナーのステータスから見ることが可能です。
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ナイスタイミング! …と言うか、タイミングよすぎだろ。
俺、監視されてたりする?
…なんて、バカなことを考えながらパートナーのステータス画面を呼び出すと、パートナーに名前を付けるように指示された。
「え、名前?」
付いてなかったのか!
てっきり、最初から名前が付いてると思ってた。
大抵のゲームだと、ユニーク個体には最初から名前が付いてるから、この子たちにも既に名前があるんだと思っていたんだ。まぁ、β版ではユニーク個体は存在しなかったらしいし、ユニーク個体だからって、名前が付いてるとは限らないか。それとも、この子たちがユニーク個体じゃないってだけの話か?
…ま、それは置いといて。目下の問題は―――…
「名前。名前かぁー…」
うーん…。こういうのって、センスが問われるからなぁ……。
一度決めたら改名不可だろうし、おいそれとは付けられない。でもこのままでもいられない。
「う〜ん……」
…天使……双子………黒と、白…。
あー…そういえば、何かの漫画で読んだことあるなぁ……。確か…堕天使ルシファーと大天使ミカエルは、元々双子の兄弟だったっていう話。
あれが本当なのか、それともストーリー上の捏造なのかは分からないけど、名付けの参考にはなりそうだ。
うーん、ルシファー…、ルシフェル……ルシ…、ルシ……ルシル? んー…ルシ、ルシ………エル、ルシエル? …ルシエル! なかなかいい名前じゃないか?
あとはミカエルか……。うーん、ミエル……はないな。発音間違えたら『見える』だからなぁ…。んー、カミル。…カミルかぁ。……いいんだけど、何かしっくりこない。う〜ん……ルシエルの時と違って、文字数が4文字しかないからなぁ…。
あ、そういえばフランス語で、ミカエルはミシェルだったような……?
「――――よし、決めた。この子たちの名前は【ルシエル】と【ミシェル】だ」
銀髪の子が【ルシエル】で。
金髪の子が【ミシェル】だ。
2人の名前を決めると、今まで何のリアクションも見せなかった2人が、ぱあぁっと花が咲くように満面の笑みを浮かべた。
思わずスクショした。
なにこれかわいい。
今までのリアクションのなさが嘘のように、2人はニコニコと笑っている。
……これはどう考えても、俺のせいだな。名は個を表し、命を吹き込む、…って誰かが言ってたし。…あれ? 本の受け売りだったっけ? 映画? ドラマ? ま、まぁ、いいや。
とにかく、名前がなかったから、何のリアクションも見せてくれなかったんだな。
気付かなくてゴメン…!
え、くしゃみ?
あれはただの生理現象であって、能動的なリアクションではないので、カウントされません。
「まま」
…ん? まま?
今、ままって言った?
「ママ!」
また、まま??
何だ? ままって……、…え、ちょ…っ、まさか、ままって――――……『ママ』か?!
「ち、違…! 俺は男で……ッ!」
「まま」
「ママ!」
慌てて否定しようとしたが、ニコニコと嬉しそうに笑うルシエルとミシェルを前に、俺は言葉を詰まらせた。
名前がないことに気付けずにいた罪悪感もあって、強く言えない。そして何より、2人の顔が曇るのを見たくなかった。
「まま」
「ママ!」
「…………ハァ……」
結局俺は、2人の笑顔に絆されて、否定することを諦めた。
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