婚約者(3**)
「コランディア!お前は私の婚約者であることをかさにきて、可愛らしい彼女に嫌がらせをし、あまつさえ殺そうと階段から突き落としまでした。
そのような醜悪な行いをする者と結婚などできない!婚約は破棄させてもらう!」
皆さん、ごきげんよう。最近よくいる転生悪役令嬢です。只今、婚約者の王子に婚約破棄を宣言されているところです。
「そうだ!いくら姉妹とはいえ、そのような悪行に加担する君との将来は考えられない。俺も婚約は破棄させてもらう!」
「僕もそんな最低なあなたを我が家に迎えたくはありません。同じく破棄させていただきましょう」
双子の妹たちと一緒に…。
えー、現在は卒業パーティの途中です。
で、私、とある侯爵家長女の婚約者の王子様と、次女(双子の姉)の婚約者の騎士団長の長男、三女(双子妹)の婚約者の宰相の息子が、こっちのエスコートほっぽり出して、とある男爵家の庶子を囲んで登場。
で、こっちに気付いた途端、詰め寄ってきて、上記のように、嫌がらせした殺そうとしたと婚約破棄三連発。
そう、とある乙女ゲームのストーリー通りに…。
で、ストーリー通りだと、ここで最低この3人を攻略して婚約破棄を起こすと、帝国ルートに入れます。というか、ゲームだとむしろここからが本番。
ちなみに3人以外の攻略者は、な・ぜ・か・用事で忙しくしていてヒロインとは接触が持ててないんだけど、我が家の長男と末っ子だったり…。
もちろん攻略されちゃった場合、ここで婚約破棄に混ざりますよー。養子とかはいなくて全員同じ父母なんだけど。 う~ん、カオス…。
なんでこんなストーリーかって?
さあ、裏事情が出るほどメジャーなモノじゃなかったから想像だけど、このゲームが発売されたころって王道展開のは出尽くしてたと思うんだよね。で、何かオリジナリティ出そうとして奇抜に行ったというか斜め上に行ったというか。ほら、キラキラネームとかDQNネームみたく。
一応、現在の王国ルートでもクリアは出来たんだよね。
でもなぁ、ゲームだと王国編はプロローグ的な扱いで難易度最低だし、チョロインならぬチョロ攻略者な分、どれか選んでも現実の生活がかかると、すっごく不安なシロモノです。
とりあえずご紹介しましょうか。
まずは、「婚約破棄だーっ」って言い切った後、頑張ってこっちを睨み続けている我が婚約者の第三王子、ラースィー殿下。
キラキラの金髪にサファイヤのような青い瞳。
頭のてっぺんには天使の輪が浮かび、ふんわりカールした髪型が彼の愛らしさを引き立てます。
つぶらな瞳は庇護欲を掻き立て、バラ色のぷくぷくした頬は、思わずつつきたくなるほど。
そう、王子様は、愛らしいヒロインに勝るとも劣らない愛玩小動物系…
(うん、これもきっとオリジナリティ追及のなれの果て…)。
<攻略方法は、どじっ子ぶりを見せて頼って褒めてあげるとチョロイです>
お次は騎士団長ご子息のルディー君。
褐色の髪。赤茶の瞳の精悍な青年。日夜鍛錬に励み、学生ながらすでに騎士団への入団は確実視されている実力の持ち主です。
<攻略方法は、努力する姿を目の前で見せるとチョロイです(ステータスは影響しません)>
最後に宰相息子のハティ君。
銀髪に水色の瞳の整った容姿の青年です。記憶力に優れ、国法の全て・ここ10年の主な判例は記憶済み。入学以来主席です。
<攻略方法は、正直に胸の内を話し、話してくれて大丈夫だと勧めるとチョロイです>
それでどのあたりが不安かって? まあこれだけでは分かりませんよね。
まず我が婚約者殿。小さいころよりその愛らしさで可愛がられていたせいか、頭の中身も可愛らしく…。
まあ、遠まわしに良く言うのならば、性善説の信奉者。
殿下…。とある聖職者から「費用が足りない、小さな子たちがつらい思いを~、あなたしか頼る方が~」とか言われてホイホイお金を出そうとしないで下さいな。必要なだけの資金は提供されておりましてよ。そう言ってきた方、華やかな女性の方々と衣装や宝飾店、劇場でよくお見かけされてましてよ。
とある商人に「良い儲け話です。貴方であれば大丈夫です。貴方様を見込んで特別にお教えします」とか言われて、本当に見込まれて好意で教えてもらってると思わないで下さいな。特別感を煽って付け込む常套句でしてよ…。
未成年でも仮にも王族ですしお願いですから余計な行動はしないで下さいな。大人しく愛でられてて下さいませ。
悪意は無い方ですし、ネット小説で同じようなことやらかしてる話の通じない根拠なし俺様傲岸王子ではなく、分かるように話せば理解はしますけど…。そのことに関してその場では。
大事なことだからもう一度言ってみましょうか。余計な行動はしないで下さいな。ヒーローも状況を弁えてなければただの道化ですわ。
さて騎士団長長男、貴方、努力を評価することは良い事でしてよ。でも努力だけを評価することは愚かですわ。
この世界、モンスターもいれば法の行き届かないところも多いですわ。努力してたとて実力の無い者にその場をまかせれば、守るべき者どころか当人の身すら危ういのですよ。
それに努力は陰でなさって表では余裕ありそうに見せる殿方、結構多いですけど、ホントに努力しないで出来てると判断しないで下さいませ。騎士団長子息のあなたの前でだけ頑張って見せるのにアッサリ引っかからないで下さいませ。
単なる兵士ではなく上に立つつもりなら、腕っぷしだけでなく判断力、認識力も鍛えてくださいな。現状では単なる節穴でしてよ。
そして宰相子息。確かに正直なことは美徳でしてよ。ですがそれも相手と場合によりますわ。何でも誰にでも全てを隠さず話すのは、単なる無神経、無礼ですわよ。
父を尊敬し跡を継ぐと言ってるのは自由でしてよ。でも宰相志望で腹の探り合いはしたくないとかなんなんですの?あと明らかに表情にいろいろ出るのでは向いてませんわよ。
噂話は下らない?交渉相手の情報を陰で集めるのは卑怯? いいえ、無知こそ愚かです。知ればこそ何を狙い、なぜそうしようとしているのかを推測し、落としどころも出せましょうに。確かにあまり意味の無い時もありますけど…。
理想を叫ぶのはご自由ですけど…、現実は貴方のためだけのものではありませんのよ?
現実の中に理想を見つけるのも結構ですけど…、それはあくまで貴方がそう思った理想。結局他人の心の内など分かりませんのよ。
まあ彼らも、生まれた場所や環境によっては問題なかったのでしょうけど… 結局ここで大々的にやっちゃいましたものねえ。殿下なんかドヤ顔で屠殺場にスキップしていく子豚ちゃんにしか見えませんわ…。けっこう似てますし。
いえ、太ってはいませんわよ。その前のほんの小さな子豚って可愛くありません? 肌とか清潔そうなピンク色ですし、瞳とかきゅるんとしてて。ついでに、攻撃力の無さとか先を思い煩わないところなども。
愛だの恋だのでは無くても一応好意的にはには思っておりましたのに、残念ですわ。仲良くできるうちは、こちらも喜んで可愛がりましたのに。




