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最強剣士、最底辺騎士団で奮戦中 ~オークを地の果てまで追い詰めて絶対に始末するだけの簡単?なお仕事です~  作者: 空戦型
第十六章 砂塵、巻き上げて

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284.新たなる癒しです

 カリナ遺跡にオークが侵入して人間は困っているが、逆にオークたちもカリナ遺跡に侵入して困っているだろう。なにせ大した数の人間はいないと踏んで一時の仮宿に泊まったら、翌日には武装した人間の群れに包囲されていたのだ。


 どうやらこれまで何度か遺跡の外に食糧確保に出てきたオークはいるようだが、前述の遺跡を壊せない&汚せない問題によってこちらは手を出せず、オークたちは発掘キャンプの食糧庫を漁ってしまっている。

 食料は、完全な飢餓状態にさせると逆に一斉に狂暴化するかもしれない為に敢えて残している。そこで餌が取れると学習すれば、たとえ餌の量が減っていっても自然と足を運んでしまう。オークと言うより動物の習性を利用して食料を減らし、だいぶ弱らせてはいるらしいが。


 騎士団は一刻も早くオークに出ていって欲しい。

 オークは一刻も早く騎士団に帰って欲しい。

 互いの思惑がすれ違うことで、誰も幸せにならない現場が出来上がってしまった。


 という訳で、オークたちをその苦悩から解放することで我々騎士団も解放されることにしよう。みんなで幸せになるために話し合いだ。


「ガス玉を用意するまではいいですが……問題はどうやって一撃で群れを全滅させるかですね」

「仕掛ける時間帯は朝と昼とどっちがいい? 夜は当然オーク側が有利だからナシだろ?」

「見張りオーク二匹をどう処理するかで話変わるよな」

「睡眠ガスを背後からガバっと!!」

「即効性ないから無理だけど何か?」

「縛り首はどうよ?」

「麻袋被せて動けなくすれば?」

「ヴィーラちゃんの水魔法パワーアップしたし、オークの肺の中に水分大量に送り込んで溺れ死なせるとか」

「えぇ……引くわ。常識的に考えて縛り首だろ」

「発想がサイコだわ。麻袋被せて身動き取れなくした方が殺し方選べるじゃん」

「アンタたちそこまで人の事言えないからね?」

「ヴィーラちゃんに頼ってどうするよ。ちゃんと騎士団員で解決する方法考えろ! という訳で公的に騎士団の存在として扱われるファミリヤの爪に毒塗ろう!」

「お前キャリバンに殺されるぞいい加減」


 うーん、いつもの日常が戻ってきた安心感が凄い。

 そうそう、こういうのが外対騎士団なんだよ。離れていたのは一週間少しの筈なのに、不思議とこの団欒の光景が懐かしく思えてくる。そんなことを考えているうちにも議論は進み、先輩方は現場見取図にいつものチェスチップを並べて熱心に説明している。


「……てな訳で、ここは実は貴重な発掘終了エリアなのよ。おあつらえ向きに深度もあるし、おびき寄せられればいつもの生き埋め戦法が出来るぜ!」

「上手く釣れるかね?」

「おびき寄せるまでならいけると思うぞ。どうやらくすねた餌が見張りオークにまで行き渡ってないないっぽくて段々やつれてるしな」

「でもよぉ、匂いで釣ったら遺跡内のオークまでおびき寄せちまわねえかな?」

「……見張りが釣られて移動したら即座にガス玉を投げ込む。中のオークは餌の匂いに気付いてもガスを警戒してやり過ごそうと中に籠る。で、眠くなって終了……」

「アリだな。第一候補はそれで行こう」


 ちなみに今の俺なら多分見張りオークを無血で沈黙させられるが、その辺は黙っている。この方法で解決したところで、次に俺がいないときに同じシチュエーションに出くわせば結局考えなければいけないことだ。


「で、駄目だったときの最終手段はどうする?」


 誰が言ったか最終手段。ここで仕事をやっていると最悪の事態に際した最終手段を必ず考えなければいけない。もちろん失敗の許されない任務しかないのだが、失敗するにしてもいい終わりと悪い終わりがある。リカバリ不可能な終わり方は組織としてどうしようもないのでそのリスクは避けなければならない。


 で、大体この手の話は俺にお鉢が回ってくる。


「ヴァルナ、鞘でぶん殴って脳挫傷させろ!」

「ヴァルナ、タマエ料理長直伝の正拳突きでオークの心臓を破壊しろ!」

「ヴァルナ、なんか秘められし不思議な力を解放して倒せ!」


 ふわっとした解決法を求められた。

 鞘だと裂傷が入るかもしれないので素手で行くと言ったら引かれた。頼んだのあんたらだろうが。


「ステゴロ最強人類相手に素手で戦ったらそれぐらい出来るようになるんですよ! なお心臓の破壊の仕方はセバス=チャン執事に教わりました」

「また一歩人外に近づいたなお前。血の色は本当に赤いか今度確かめとけ」

「俺のことなんだと思ってんですか!!」

「人外」

「クリーチャー」

「効率的にオークを殺す機械」

「思春期男子が妄想する最強キャラが具現化した存在」


 このあと俺を悪く言った先輩全員氣の修業で泣かせた。

 最後の主張をした先輩は「腹に力が入ってねーぞオラァ!」って念入りに泣かせた。俺が強いのは俺が出会いに恵まれて努力もしたからだっつーの。


 ――それから時間が経過し、作戦当日。


 俺はノノカさんと道具作成班が開発した奇抜なマスクを装着して、睡眠ガスが投入されて三〇分経過した遺跡内を剣片手に進んだ。後ろには遊撃班の精鋭が同じマスクを装着してついてくる。


 このマスク、なんとも形容しがたい形状だ。

 顔の表面全体を覆う形状に、余り物らしいゴーグルを流用して作った目元。口元は漏斗じょうごを逆さまにしたようなパーツが装着されており、このパーツから息を吸い込んでいる。ぶっちゃけ喋りにくくてしょうがないので次に使うことがあったらもっとハンドサインを詳細に決めておこう。


(基礎設計はブッセ君らしいけど、つくづくあの人たちは頼りになる……)


 逆さの漏斗の中にガスの成分を吸着する素材を詰めることで、俺達は睡眠ガスを気にせず活動出来る。ただし構造上いつまでもガスを無効化できるわけではないので迅速に活動する必要はあるが……この原理と素材をぱっと思いついたノノカさん、それを基に手持ちの材料と組み合わせて一番安価で効率的な形状を考えたブッセ君、その設計をミスなく期限内にきっちり作り込んだ道具作成班はマジでこんな騎士団にいていい人材じゃない。

 でもあの人たち、恐ろしいことに全員外対騎士団の仕事が好きすぎるんだよなぁ。世界は意外と優秀な人材を拾い損ねている。そこに目を付けたのが王国でありひげジジイでもあるのだけれど。


 見張りオークのおびき出しは既に成功し、食欲に負けたオークたちはブギャブギャ聞き苦しい悲鳴を上げながら生き埋めにされた。なので内部のオークが全員眠っていれば話は早いが、果たして――。


「ブギュー……ブギュー……」

「スピピピ……ブシュー……」

「ブゴゴゴゴゴゴ……ブゴー……ブゴゴゴ、ゴゴッ…………………………ゴゴー……」


 一匹睡眠時無呼吸症候群だが、無事寝ているようだ。

 というかオークって無呼吸症候群になるのか。

 貴重な症例かもしれないのでノノカさんに報告しとこう。


 ここから先は生物愛護を唱える団体には見せられない作業である。


 オーク憎しと叫んでいる俺達だが、それは相手を憎むべき対象だと思うことで余計な迷いを抱かないようにするという側面がなくもない。完全無抵抗で眠りこけているオークたちを一匹一匹確実に処理する作業のなかではオークに敵意を抱きにくく、心なしかみんなテンションが低い。マスク越しのため息も聞こえる。


 なお、俺はというと「冬眠中のオーク皆殺しにして皮なめしたクーレタリアの道通しってどんなメンタルでそれやったんだろう」と密かに気になり始めていた。これから無抵抗のオークを殺す際の心構えの参考になるかもしれない。


 ともかく任務は滞りなく終了したのだが――任務とは全く別に、俺達の前に予想外の存在が眠りこけているという新たな問題が発生した。


「くー……すぴー……」


 それは、オークが集めたらしい残り少ない食料の近くにロープで縛られた状態でつるされており、すぴすぴと可愛らしい寝息を立てるオークならざる小さなもの。それでいて、オークと遠からじと言えなくもない存在。


 とりあえず第一発見者ということで遺跡からそれを運び出した俺は、遊撃班と共にそれを取り囲んで難しい顔をした。


「なんだこれ?」

「可愛いねぇ……女の子かな?」

「まぁ人間の女の子ならそれはそれで大事でしたが、こりゃ……どう判断したものかね?」


 俺たちの視線の先にいるそれは、赤褐色の肌に朱色の髪を伸ばし、耳はギザギザで鋭角的に突き出て、顔やシルエットは比較的人間の少女に近い形をしている。目を閉じて小さな寝息を立てる様は愛らしく、それを見つめる騎士団員の中には頬が緩んでいる者もいる。

 が、この少女は王国初接触の特殊な姿をした原住民ではない。

 理由は単純で――彼女の下半身が、どう見ても鱗に覆われたような蛇の尾だったからだ。


「外来種だけど……危険種と呼ぶかは微妙だなぁ」

「知ってんのか、ヴァルナ?」

「特徴からしてまず間違いないと思うけど……ナーガです、これ」


 ナーガ。

 それは人里離れた砂漠地方などに生息する珍しい亜人タイプの魔物だ。ナーガは下半身が大蛇、上半身は人型で人語を解し、魔物としては殊更珍しく文化と呼べるものを持ち、そして人間と接触したがらない存在でもある。砂漠という過酷な環境で生きてるだけありその戦闘力は中級魔物以上だが、人からちょっかいを出さない限り襲ってくることはないので大陸冒険者はナーガを相互不干渉魔物として指定している。


 というか、昔ヴィーラみたいに見世物にしようとした馬鹿な貴族が冒険者雇って遠征し、そりゃもう悲惨なまでの返り討ちに遭ったらしい。その後もいらんことしいがちょっかいを出す度に痛手をこうむり、遭難者、行方不明者が多発。そもそもナーガの住む土地は人間が住むメリットない環境なんだから襲ってこないなら討伐しなくていいのでは? というもっと早く気付けと思う結論に達したと図鑑にはあった。


 幼体のナーガとか正直聞いたこともないし、サイズもみゅんみゅんに近い。

 俺は即座にこの魔物の扱いを決定した。


「殺すのは可哀そうだしキャリバンに押し付けるか」


 全会一致で可決された総意と名も知らぬナーガの子どもを抱え、俺は浄化場へ向かった。果たして彼女は何らかの大冒険で大陸からやってきたのか、将又まさかの王国在来魔物二種目発見なのか。


(起きた途端暴れないといいけどなぁ。オークに捕まってたから警戒されそうだ)

「クー……んみゅ、すぴー……」


 ……それにしても、俺の腕の中で眠りこけるナーガの子どもが可愛くて癒される。大会終わったら何か癒されるものが欲しいなとは思ってたが、これは癒し度高いぞ。俺はひょっとして今、物凄く貴重な体験をしているのではないだろうか。久しぶりに騎士団に入って得した気分だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新たに少女を攫って育てる光源氏属性も付与され、向かう所敵無しなヴァルナ君 男女の妄想全て詰め込まれて具現化
[一言] ナーガ、ラミア、エキドナ...半身蛇というとパッとこのあたり浮かぶ...しかし、将来的にはヴィーラとちがって人と同じ大きさまでになりそうだし、キャリバンの将来の女性関係図に一抹の不安が...…
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