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もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない  作者: バナナ男さん


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26/26

26 めでたしめでたし?

(アズマ)


ビリ……。


ビリリッ……。


見せつける様にゆっくり写真を破り捨て、空野さんは微笑む。

どこかで聞いた事のあるセリフに恐怖し、ガタガタと震えてしまったのは……俺だけではなかったらしい。

和恵も直ぐに気づいた様で青ざめているし、昨日の取り巻き達の発言を聞いていた社員たちも俺同様に震えていた。

もちろん蝶野さんも気づいた様で、顔色はどんどん悪くなっていく。


「わ……私……。」


「あ、そういえば、ご両親の会社、さっき潰れちゃったみたいだよ。随分酷い経営してたらしいから、恨みも沢山あったみたい。

借金も沢山残っちゃったね。

これから娘のアンタが頑張らないとだけど……ん~これだけ悪評が広がっていると同じ業種に再就職は難しいから、別の職業を探すしかないか。            

────あ、そっか~!ピッタリの職業があって良かったね。随分昔からやっていた()()()だし、これなら直ぐに借金返せそうじゃない?良かったね~!でも────……。」


空野さんは、悲しげに眉を下げ……困った様な表情のまま蝶野さんに顔を近づけた。


「『複数の男性に体を売るのはちょっと……。』『もっと自分を大事にした方がいいと思うけど。』

あ~後は、え~と……?『今回の事件をキッカケに、ちゃんと心から愛せる人を作って、その人だけを真摯に大事にできる人になって欲しいと思う』だっけ?

そんな人になれた?今。」


全く心の入っていない棒読みで語られる言葉は……やはりどっかで誰かから聞いたようなセリフであった。


「……~っ~っ……!!!」


蝶野さんは呆然としたままその場にへたり込んでしまい、血の気が引いた顔で項垂れる。

それを見て空野さんは吹き出して、アハハッ!と好きなだけ笑った後、俺の方へ視線を向けた。


ドキーン!!!

心臓が跳ねたのは恋の予感……では決してなく、ただ単に恐怖から。


汗はダラダラ。顔色は土色!

ヘビに睨まれた……いや、食われる寸前の様な俺に向かい、空野さんは話しかけてきた。


「こんにちは。いつも源がお世話になっているみたいだね。」


「ひっ……いえっ……こっ、こひらこそっ!」


圧倒的なキラキラオーラに圧されてしまい、思わず噛んでしまったが、空野さんは全く気にせず、ニッコリと笑う。


「源はほら……頑固だし?馬鹿みたいに真面目だから、きっと仕事はずっと続けると思うんだよね。

だから、これからも長い付き合いになると思うからよろしく。

ただ、俺って結構嫉妬深いからさ。適度な接触でお願いね?」


「……しょ、承知致しました。」


口元を引き攣らせ大量の汗を掻きながら答えると、蝶野さんがへたり込んだまま、アハハ~と乾いた笑いだした。


「お、終わりだ……私の人生……。か、輝かしい勝ち組人生がぁぁぁ~……。」


「勝ち組人生ねぇ?つまんなそっ。────あ、そうそう。パパさんって既婚者ばっかりだったから、これから特定されて慰謝料ヤバいんじゃない?ほら、ネットでも凄い反応だし。」


空野さんは『ね?』と言わんばかりに首を軽く傾げて、携帯の画面を見せる。

すると、そこに映っているのは、現在バズっているらしい蝶野さんと取り巻きたちの画像で、沢山のコメントで溢れていた。

それを見て蝶野さんは、サァ~……と青ざめた後、空野さんに向かって手を伸ばそうとする。


「そ、空野君、私何でも言うこと聞くから……。お願いだからお金を────……。」


「あ〜楽しかった!実は今日から源が電車で会社に行くっていうから、ちょっとイライラしちゃってさ。ちょっとしたストレス解消にはなったかな?

────あ、俺そろそろ仕事向かわなきゃ!あと五分で源が来ちゃうし。俺がいた事は内緒にしてね。」


るんるん♬

上機嫌に鼻歌を歌いながらその場を去っていく空野さんに、キラキラした目でお見送りする社長を見て汗を掻いた。

そして空野さんが去った後、社長は「今年のボーナス期待していてくれたまえ~!」と言ってスキップして去ってしまう。

そうしてその場に残されたのは、立ち尽くしたままの俺達社員とヘタリ込んでいる蝶野さんだけだった。


「……片付けるか。」


「そうね~……。」


なんだか恐ろしいモノを見た様な気がして……やっぱり最初に空野さんを見た時に感じた怖さは当たっていたと理解する。


ブルッ!と恐怖に震えながらも、もうすぐ仕事の始業時間だったので、全員が総出で片付けを始めたのだが────その直後、根本が駆け込んできた。

そのため、一旦全員が手を止めそちらへ視線を向けると、ちょうど

空野さんが去ってからきっかり五分だということに気づき背筋がゾッとする。


「…………。」


「…………。」


思わず和恵と顔を見合わせ沈黙していると、根本は荒い息をしながら、額を流れる汗を袖で乱暴に拭った。


「ぎ、ギリギリセーフだった~……!なんだか道で妙に困っている人に出会っちゃって、こんなギリギリになっちまったよ。流石に無視もできないからな……。

あれ?皆何してんだ??朝の掃除でも言われたのか?」


剥がした写真をゴミ袋に詰めている皆を見て、根本は仕事の清掃でも頼まれたと思ったのだろう。

直ぐに「手伝うよ。」と申し出てきたが、直ぐにへたり込んでいる蝶野さんに気づいた。


「??おいおい、今度は一体何してるんだ……全く……。座るなら、ちゃんと椅子に座った方がいいんじゃないか?お~い、蝶野さん……。」


「ぎゃああぁぁぁぁぁ────!!!」


根本が呆れながら蝶野さんを起こそうとして近づいたのだが、蝶野さんはものすごい悲鳴と共にそのままバタバタと走り去ってしまう。

それをぽかーん……としながら見送った根本は、怪訝そうな顔を俺に向けたが、俺はフルフルと首を横に振った。


「ほら、仕事仕事。とりあえず、蝶野さんと取り巻きの奴らは皆退職すると思うから、もう気にするの止めようぜ。」


「────へっ?そうなのか?流石に昨日は言い過ぎたか……。

なんだか悪い事をしちゃったな。再就職先が決まっていればいいんだが……。」


困った様に頭を掻く源に、俺はニッコリと笑う。

                         

「うん。大丈夫みたいだぞ。蝶野さんは天職みたいな()()()、取り巻きのアイツらは全員、なんかネットデビューしたみたいだから!」


「えっ!マジ~か。そりゃすげぇな。蝶野さんは確かに接客向いてそうだよな。

それに取り巻きの奴らも中々顔が良いし……。あ、よく知らないけど、ユーチューバーとかか?」


根本がホッとした様子で尋ねてきたので……俺も和恵も他の社員たちも、張り付けた笑顔で頷いておいた。



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