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幼馴染みは色気がだだ漏れらしいのですが、私にはわかりません。  作者: 燈華


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親友不在の昼食

「アナ、ごめんなさい。明日は家の用事で学園を休むから一緒にお昼を食べられないわ」


ヴィクトリアが申し訳なさそうな顔で告げる。


「うん、わかった。気にしないで」


アナスタシアは微笑(わら)って頷いた。




次の日。

午前中の授業を終え、教科書やノートを片づけていると、マティスに訊かれた。


「アナ、今日はどこでヴィクトリア嬢と待ち合わせ?」


基本的にアナスタシアは昼食はヴィクトリアと取っている。


「今日はヴィーはお(うち)の予定でお休みなんですって。だからカフェで……」

「一人で?」


マティスに遮られて訊かれた。

アナスタシアはきょとんとする。


「え、もちろんよ。私、他に友達いないし……」

言っていて落ち込む。


ヴィクトリアがいなければアナスタシアはぼっち飯だ。


マティスとロンバルトは学園に用意されている特別室で昼食を取っている。

これはマティスと他の学生たち、双方への配慮だ。

マティスの避難用の部屋である特別室は緊急時以外はマティスとロンバルトしか入れない。

だからアナスタシアはいつも昼食はヴィクトリアと食べているのだ。


ちなみに、特別な理由があれば学園に申請して許可が出れば特別室を用意してもらえる。

マティスのように特別な事情を抱えている者の他に、病弱で具合が悪くなった時に休むための部屋がほしいという場合でも申請できる。


「エリアスは……いや、急に言われても無理か。急に混ぜてもらうのもどんな人間がいるかわからないし」


マティスがぶつぶつと言うのにアナスタシアは反論する。


「私、一人で大丈夫よ?」

「却下だな。ったくそういうことは早く言え」


ロンバルトにすげなく却下される。

別に一人でも食べられるのに。


「今日は三人で食べよう。アナ、お昼は持ってきた?」

「え、カフェで食べるつもりだったから持ってきてないわ」

「俺たちのを分けてやる」

「え、それは悪いわ」

「気にしないで。とにかく一人は駄目だよ」


これはもう三人で食べるのは決定だろう。

何故そこまで一人は駄目だと言うのかアナスタシアには理解できない。


カフェでなら人目もあるし、一人で食べていても大丈夫だと思うのだが。

アナスタシアだって考えているのだ。

だが許してもらえそうにない。


「ならカフェで買ってくるわ。持ち帰りもできるから」

「わかった」

「ならすぐ行くぞ」


ロンバルトがさっと立ち上がった。

マティスが続く。


「ほら急げ」


()かされてアナスタシアは慌てて立ち上がる。

そして急かされるままに教室を後にした。





カフェで無事に昼食を手に入れて外に出ると待っていたマティスにさっと昼食の入った紙袋を取られた。


「マティス」

「いいから、行こう」

「え、ええ」

「少し急ぐぞ」

「そうだね。アナ、転ばないようにね」

「え、ええ」


小柄なアナスタシアを気遣いつつもいつもより早足になる二人に、アナスタシアも小走りにならないぎりぎりの速度でついていった。




人の少ないところを探しているうちに校舎から離れてしまい、戻る時間を考えればあまりのんびりするわけにはいかなくなった。


カフェで食べればのんびりできたのに、と思いはしたが口にはしなかった。

それはそれで、周りが仲良しの友人や婚約者同士ばかりとなって(みじ)めに、そうちょっぴりだけ惨めな思いをしたかもしれない。

だからこれで正解だったのだろう。


急ぎ気味ではあったが、それなりに和気藹々(あいあい)と楽しく食事もできた。

三人で食べたから寂しくもなかった。


一人でならもしかして誰かが声をかけてくれて仲良くなれたかも……などという下心もなくはなかったが、きっとこれでよかったのだろう。

誰にも声をかけられずに一人で食事するのはきっと……寂しかっただろうから。


とはいえ、次があれば今度こそ一人でカフェで食べよう。

なんならアナスタシアから同席してもいいか声をかけてもいいだろう。

うん、と小さく頷いて決意した。


それをマティスとロンバルトに見られていたことには気づかなかった。





結果。

ヴィクトリアが休みの時は必ず申告すること、とアナスタシアは約束させられた。

()せぬ。


読んでいただき、ありがとうございました。

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