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流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第9章 誘起の紫 ~induction~
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piece.9-7



 結局、夜ごはんを食べながら、僕はシロさんに知っていることを全部話してしまった。


 セリちゃんが、人を殺したくないのに殺してしまうのは、憎しみの呪いのせいだということ。

 その呪いのせいで、セリちゃんは毒持ちだと言われてディマーズに追われていること。

 ナナクサに会えば、毒を消せるかもしれないと言ってたこと。

 でも、その呪いを消すのは女の人じゃなくて、男の人だということ。


 もう少し慎重に話さなくちゃって思ってたはずなのに、気がついたらシロさんに聞かれるまま、僕はペラペラと知っていることをしゃべっていた。


「……それで? その星読女(ほしよみおんな)の言うことを聞いて、お前は俺が、お前のセリちゃんの王子様だと思ったわけだ」


 シロさんはずっとにやにやしている。


「……うん」


「それでノコノコ俺についてきたわけだ」


「……う、……うん」


「ばーか!」


 シロさんはご機嫌に笑った。何がそんなに面白いんだろう。


「あー、楽しいなあ。やっぱお前で正解だったなあ。そうこなくっちゃなあ」


「……なに言ってんの?」


「ん? こっちの話」


 シロさんは意地悪そうに笑った。


 大丈夫かな。僕、もしかしてまた、だまされてる……?


 不安になった僕の心を読んだんじゃないかってタイミングで、シロさんは言った。


「お前の目の付けどころは間違ってねえよ? お前の言ってる呪いとか毒ってやつには心当たりがある」


「え! 本当に!?」


「それはな……キャラバンに代々伝わる……『ナナクサの(たた)り』ってやつだ……」


 シロさんは不気味な笑みを浮かべながら、低い声で言った。


「な……『ナナクサの祟り』……?」


「クズを見ると殺したくてしょうがなくなる。言ってみりゃあ病気みたいなもんさ。

 (くせ)になっちまって、やめられなくなる。殺せば殺すほど、楽しくなってくる。今度は殺したくてたまらなくて、自分からクズのいるところへ突っ込んでいく。で、また殺す。団長様に気に入られたやつは、大概そうなる」


「もしかして……セリちゃんも……それに……?」


 シロさんが笑みを深めた。おそらく、そういうことなのだろう。


 でもセリちゃんは、泣いてた。楽しんでなんかいなかった。


 教会の時も、ナナクサを殺してしまったと言っていた夜も――。


 セリちゃんは人殺しを楽しんだりなんか、絶対にしてない。


 そんな祟りとか呪いなんか、セリちゃんにこれ以上近づけさせるもんか!


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