piece.34-7
レネーマたちが僕らの防寒着の製作を着々と進める中、セリちゃんも持久力アップのトレーニングを開始し、着実に体力を回復させていった。
ディマーズの敷地の中には専用の訓練場もある。
セリちゃんは時間を見つけると、毎日誰かしら手の空いてる相手を捕まえては、戦闘訓練をするようになった。
戦闘訓練と聞かされて身構えてしまったが、訓練の内容は僕の予想していたイメージとは少し違う。
最初のころに聞いた噂で、ディマーズは悪い人を問答無用で殺してしまうような怖い人たちだと聞かされていたせいで、訓練ではシロさんの技並みに怖いことを練習するのかと思っていた。
でも実際には、ディマーズの人たちの訓練のメインは非殺傷の捕獲術が中心だった。
無力化が目的で、問答無用で致命傷を負わせるような技は何もなかった。
そんな訓練の中で、セリちゃんはディマーズから暴れて逃げようとする悪者役になることが多かった。
まあ実際、数年間ディマーズから逃げ回っていた実績があるわけだから、適任と言えば適任なんだけれども。
訓練を見ていて思うのは、やっぱりセリちゃんとシロさんは似ている、ということだった。
数人がかりでディマーズのメンバーが周りを囲んでも、なかなかセリちゃんを捕まえることができない。
前にシロさんが酔っ払いとケンカをしていたときの光景を見ているようだった。
踊るように。
舞うように。
まるで舞台の劇を見ているように。
セリちゃんは、華麗にディマーズの人たちの手から逃れていく。
その動きは、思わず見とれてしまうほどだ。
けれど反対に、悪者を捕まえる役はというと、あんまり成績は良くなかった。
そっちの方はディマーズのみんなに、いろいろ言われてふてくされていたけれど。
見学しているうちに、僕も一緒に訓練に混ぜてもらえるようになった。
「初代が暴れたら二代目が責任もって取り押さえるんだぞ」
なんてふざけてみんなは言っていたけれど、半分冗談で、でも半分は本気なんだと気づいていた。
もしもセリちゃんが自分の中にいる毒に負けて、誰かを傷つけそうになったら、その時は僕が止めるしかない。
だから僕は真剣に取り組んだ。
セリちゃんが誰かを傷つけてしまわないように。
誰かを傷つけてしまったことで、セリちゃんの心が傷ついてしまわないように。
僕が強くなることで、セリちゃんの傷が一つでも減らせるのなら――僕は何がなんでも強くなる。
絶対に強くなってやる。
そういう覚悟で訓練に臨んでいた。




