piece.28-2
息を切らせて戻ってきて、なんで僕は言われるがままにパシらされてるんだろうって、到着してから気がついた。
こうやって考えなしに反応しちゃうからいけないんだ。
今ので僕の体力とお小遣いの大半が失われてしまった。
今度はもっとちゃんと考えてから行動しよう。別にシロさんなんかお腹すかせて待たせとけばいいんだから。
僕は早速ステラから言われたばかりの助言を思い出し、再び心に刻み込んだ。
走って買ってきてあげたにもかかわらず、シロさんは「ん」と一言だけ言うと、買ってきてもらって当然のような態度で肉を受け取りかぶりつく。
……ねえ、シロさん?
何か言うのを忘れてないかい? せめてさ、お礼はさ、言ってもバチは当たんないと思うんだよね。だってさ、その肉、僕のお金で買ってあげたんだよ? まあ、正確には僕じゃなくてゼルヤさんのお金だけどさ。
……考えるだけ無駄か。
僕は大きくため息をつくと、頭の中のモヤモヤしてたものを一旦全部あきらめることにした。
腹ペコのシロさんを待たせて機嫌が悪くなったら嫌だなと思いながら、大急ぎで屋台を見比べ、食べ応えのありそうな串焼き(特大サイズ)を2本買ってみた。
シロさんが黙々と食べているので、きっとおいしいのだろう。僕のチョイスは当たりだったようだ。しかしシロさんからのお礼はない。
ついでに自分の分も買ったので、シロさんに強奪される前に食べることにする。
味が表面にしっかりとまぶしてあって、周りがカリカリでおいしかった。
肉汁もあふれてすごくおいしい。
まだお金に余裕もあるし、帰りにもう1本買っていこうかな。
「は? それ俺のじゃねえのかよ?」
やっぱりシロさんは僕の串も狙っていたらしい。
「残念でしたー。これは僕ので……っいったぁ!」
まさかのシロさんのデコピンだ。
「はーい、『僕』言ったやつは罰ゲームで串没収〜」
シロさんが僕の串を取り上げようとしてきた。ほら、やっぱり思った通り。
シロさんが串を狙ってることなんかすでにお見通しだった僕は、シロさんに取られる前に、急いで肉を口の中へ避難させた。
「はんへんはっはへひほはん」
「何言ってんのか分かんねえよ」
くそ、デコピンの追加が来た。でも肉は守ったからよし!
僕はおでこをさすりながら口の中の肉を味わってゆっくりと飲み込んだ。
おいしかった。
シロさんに取られなかったということが、より一層おいしさを引き立てている気もする。
あとで買い直したら今度はシロさんに邪魔されない場所でゆっくり味わうことにしよう。
「ところでシロさん、こんなところで昼寝してて大丈夫なの?」
「んー? 泊まるとこならいつもどおり適当な女のとこで寝てっから心配ねえよ。
あ、お前が宿代出してくれるんならもらってやってもいいけど」
当然のように手を出して、僕から当たり前のようにお金を取ろうとする。
「そうじゃなくて。シロさん前にディマーズの人を拷問してたじゃん。もしかして街を歩いてるときにディマーズの人から声かけられたりしてない?」
この前のレミケイドさんの感じだと、シロさんのことも見つけ次第なにかありそうな気がしてたんだけど。
今のところ、こんなに堂々と街中で昼寝をしていても、シロさんに対してディマーズが何かをしてくる様子はなさそうだ。
「べーつーにー。ここじゃまだ何もしてねえし、なんで俺がそいつらに声かけられなきゃなんねえの?」
ディマーズの人を拷問しちゃったって言ったでしょうが!
話が分かんない人だなあ。きっとそんなこともう忘れたとか言いそうだけど。
僕は大きくため息をついた。




