piece.27-10
「え……? う、うん……わかったよ」
「よく考えて決めるのよ。ひとつを選んだら、選ばなかった方のもうひとつは、もう手には入らないの。永遠に失われてしまうんだから。
だから……後悔しないように、納得できるまで頭をちゃんと使うのよ、いいわね?」
「え? それ、どういう意味?」
「言葉通りの意味よ。二つの星のうち、手に入るのは一つだけ。肝に銘じておきなさいね。
私から言えることはもうないわ。そろそろ仕事に戻らなきゃ。……さっさと出てって」
そう言うとステラは硬い表情のまま、僕をテントの外に押し出した。
僕が言い返せるような隙すら与えずに、すぐに次の占いのお客さんを呼んでしまう。
こうなるともう、僕はステラとは何も話せない。
「もっと丁寧に説明してくれないと、また勘違いしちゃいそうだなあ……」
僕が思わずぼやくと、横にいたブライトさんが隣でうんうんとうなづいていた。
「星読にもできることとできないことがある。近い星の縁は読みやすいが、遠い星の縁は動きが読みづらい。遠い未来のことほど予測が難しい。
要は一日一日、その日のことを考えて備えるべしという教訓じゃな」
ブライトさんの言葉を、僕はもう一度自分の中で繰り返してみた。
その日のことを考える、か――。
その日って、一体どんな日なんだろう。
その日になったら僕は何かを決めなくちゃいけなくて、ひとつを選んだらもう一つは失われてしまう。
しっかり頭を使って考えなきゃいけなくて、急がなくても間に合うから、行動する前にちゃんと考えなきゃいけない。
そんな『その日』……。
その日は一体いつ来るんだろう。
僕は『その日』に、何を決めなきゃいけなくなるんだろう。
第27章 密雲の黒
MITUUN no KURO
~premonition~ END




