piece.27-4
ディマーズの宿舎二階。
客室を追い出された僕は、ディマーズの相部屋へと移動になった。部屋の両端に二段ベッドがふたつ。つまり四人部屋ということになる。
「こっちの上が空いてるからそこ使って」
レキサさんに言われたベッドへ、自分の荷物を置くために登ってみた。
ベッドに梯子がかかってるってだけで、なんだかワクワクする。
登ると当たり前だけどとっても高い。天井がさわれる。なんかワクワクする。楽しい。
僕はベッドから顔を出して、下のベッドに腰掛けているレキサさんを見下ろした。
「すごいね。高いね。見晴らしいいね」
レキサさんが天井を指さしながら笑った。
「あはは。気に入ってもらえて良かったよ。朝起きるときに頭ぶつけないように気をつけてね」
レキサさんは歳が僕と一番近いのもあるけれど、話してても全然緊張しない。レキサさんと同室になれて、僕はちょっと嬉しかった。
「同室のメンバーが任務で他の町に行ってるから、僕一人でちょっと寂しかったんだ。……えーと……二代目が来てくれて嬉しいよ」
なんだかレキサさんに『二代目』って呼ばれると恥ずかしい。レキサさん自身も照れて言いづらそうにしてるから、そのせいもあるかもしれない。
なんとなく会話が途切れ、お互いに微妙な雰囲気になる。
どうしよう、なんか話題ないかな……。
先に沈黙を破ってくれたのはレキサさんだった。
「……あ……。そういえばクロムの首飾りは、セリ姉から着けろって言われたの?」
自分の胸元を指差しながら、そんなことを言ってきた。
「クロムの首飾り?」
しばらく考えて、前にセリちゃんから渡された首飾りのことを思い出す。
ずっとつけっぱなしにしていて、当たり前に身に着けていたものだから気にならなくなっていたせいだ。
お風呂に一緒に入ったときに、レキサさんがじっと見てるような気がしてたけど、首飾りのことを見てたみたいだ。
もともとこの首飾りはマイカの街でレキサさんがセリちゃんに渡したものだったから、僕じゃなくてセリちゃんにつけててほしかったのかもしれない。
「パワーアップの石のやつだよね? うん、そうだよ」
僕が答えると、レキサさんが不思議そうな顔をした。
「え? パワーアップの石?」
「え? 違うの? つけてる人の体の一部をパワーアップしてくれるんでしょ?」
「え……あ……うん……まあ……そういう力もあるね……。セリ姉はパワーアップしなくていいって言ってたのかな?」
「うん、もう大丈夫だからいいって。筋肉モリモリになりたければ着けてるといいって言われたんだ。まだ効き目はイマイチだけど……」
「はは、そっか。効果あるといいね……」
レキサさんが苦笑いしている。
きっと僕の筋肉が全然成長してないから、気を使わせてしまったのかもしれない。
――あ、そうだった。
パワーアップの石で思い出した。僕の筋肉のことなんかより、僕はレキサさんに聞きたいことがあったんだった。
僕は二段ベッドから降りると、近くの椅子に腰かけてレキサさんと向かい合った。
「そうだレキサさん、アルカナについて教えてよ。レキサさん、前にアルカナの謎が解けたってセリちゃんに言ってたよね? もしまたセリちゃんがピンチになったときに、すぐ助けられるように教えておいて欲しいんだ」
レキサさんは少し困った顔をした。
「ごめんね。僕は詳しく知ってるわけじゃないんだ。アルカナのことを知ってるのは僕の友人のクロムってやつで、彼はここからずっと行った北の山の近くにいるんだ。
セリ姉のこともあったから、僕も急いでクロムに連絡をとろうとしたんだけど、北の方は今ちょっと治安が悪くて……クロムと連絡を取るのが簡単にできなくてさ……」
治安が悪い?
そのクロムって人、大丈夫なのかな……。




