piece.21-11
「わ、カインすごい。お土産持って帰ってきてくれたの?」
「食材の消耗が防げた。礼を言う」
笑顔のセリちゃんと、無表情だけど優しい言葉のレミケイドさんに迎えてもらえて、僕はちょっと得意顔で戦利品を広げた。
収穫した食べ物の中から、セリちゃんが木の実に興味を示す。
「……あれ? この実って、すごく背の高い木になってるやつだよね? 木登りしたの?」
「ううん。石投げて落とした」
セリちゃんの顔つきが変わる。
「……もしかして、兄さまから習ったの?」
セリちゃんの言う通り、石投げはシロさんに教わった。
外せばもちろん罰ゲームだ。嫌でも上達するしかなかった。
「うん、そう。シロさんってすごいよね。
必ず一発で当てるんだもん。僕は調子がいい時でも2、3回は外しちゃうな」
セリちゃんがしょぼんと肩を落とす。
「……カインは私より上手なんだね……。私……外してばっかりで、よく罰ゲームを……」
セリちゃんの顔が青くなっている。
大変だ! セリちゃんのトラウマ記憶! 恐怖の罰ゲームを受けた忌まわしき過去が……!
きっと蹴られたり蹴られたり蹴られたりしたんだね? それとも関節バキボキの刑? それともマズい草召し上がれの刑?
あとはどんなのあったっけ? やっぱ思い出したくないから忘れとこ。
ああ可哀想なセリちゃん。
痛かったよね、苦かったよね、マズかったよね。
分かる、分かるよセリちゃん。シロさんのお仕置き、本当にひどいよね。
しかもなんでシロさんってあんなにひどいことしてるのに、めちゃくちゃ楽しそうに笑うんだろうね。人間性疑うよね。最低だよね。
セリちゃんが不意に顔を上げた。
「そういえば……カインが手につけてるやつって……兄さまのお仕置き七つ道具入れだよね?」
な、なんですと……?
セリちゃんの口からとんでもなく恐ろしいワードが飛び出した。
「七つ? なにそれ? 七つもなんか入ってないよ! ただの棒と小さいナイフが1本ずつだけだよ! そんな危険なものなんか入ってないよ!」
信じられない。
ほんのちょっと手首に巻くだけの布の中に七つも恐ろしい道具を格納してたなんて……なにそれシロさん、もうそれただの歩く凶器じゃん。怖すぎ。
「……ただの棒? あ! 分かった! カインの言ってる棒ってもしかして、これくらいの長さのやつで、先がえげつないくらいに尖ってて、むっちゃくちゃ刺さるやつでしょ?」
セリちゃんの顔がなぜかパァァっと輝いた。
……セリちゃん、おかしいよ。
なんでそんな怖い棒の話をそんなに嬉しそうに話すの?
しかもなんかその顔、ご機嫌で罰ゲーム始めるときのシロさんにちょっと似てるよ……。
「違う違う。何の変哲もないただの棒だよ。先も尖ってないし。そんな怖い棒、僕は持ってないから」
僕は手甲から棒を取り出してセリちゃんに見せた。
もちろん僕が歩く凶器ではないことを証明するためだ。




