piece.21-6
「えー? ずっる! じゃあオレも死にかけってことにするわー。
えーっと、さっきナンパで失敗した心の痛みで瀕死ってことに……」
案の定、冗談だと思って乗っかってきたゼルヤさんを止めたのはレキサさんだ。
「ゼルヤさん、僕も同行しますから。
これ以上ふざけてると、レミケイドさんから本当に瀕死にさせられますよ。今は冗談を言ってる場合じゃないんです。
……セリ姉は、本当に危ないんです。過治療の末期症状が出てるんです……」
レキサさんに言われて、ゼルヤさんの表情が硬くなる。
さっきまでのふざけた雰囲気が消え、苦々しそうな顔で頭を掻いた。
「……あーもう、なにしてんの。何年も逃げまわるからそうなるんだって。
一番治療ヘタクソなくせにさ……、あのヤバいのを自分に食らわせてたってわけ? はあ……もう……なに考えてんだよ。ますますブラッド・バスになるだろ? 笑えない冗談は勘弁してくれよ」
「あはは、ゼルヤにまで説教されることになるなんて思わなかったな」
セリちゃんが困ったように微笑んだ。
「そういうことならさっさと出発しなって。その代わり、オレが帰ったらあの人がどれだけキレまくって大変だったかって報告するから、黙って聞いてくれよなー。
――あ、そういえば新しくなったリリーパスは初めてだっけ? すげー変わっててビビるぜ、きっと。
じゃあレキサ、ご一行の案内済んだら合流な。頼むから早く来てくれよ?」
そう言ってゼルヤさんは、優しくセリちゃんの肩を叩いて去っていく。
「うん、アダリーによろしく言っといて」
セリちゃんも穏やかな顔でゼルヤさんを見送る。
後ろ背に手を振るゼルヤさんの後ろ姿を見送っていると、僕は不思議な感覚を覚えた。
僕の内側の部分が、よく分からないけど……何かあったかいもので満たされていくような……そんな感じ。
……そっか。そうなんだ……。
ようやく僕は理解した。
ディマーズはセリちゃんの敵なんかじゃなかったんだ。
この人たちも、セリちゃんの仲間なんだ……。
セリちゃんを追いかけてたのも、助けたかったからだったんだ。
良かった……。
あんなに怖いって思っていたディマーズの人たちのことが、僕はもう怖くなくなっていた。
アダリーさんももしかしたら、ちゃんと話してみたら怖い人じゃないのかもしれない。
でも……まだやっぱりちょっと怖いから、直接話をするような機会は……ちょっとまだ遠慮したいかな……。




