piece.18-2
自分の悲鳴で目が覚めた。
「うわっと! 派手にお目覚めだな!
もしかして痛かったか? いや、痛いよな。悪い悪い、寝てる間に終わらせちまおうと思ってたんだけど。
もうちょっと我慢しててくれ。あと少しで終わる」
軽い口調の男の人の声がした。
――ここは……? 誰かの家……?
僕はあわてて体を起こしかけ――強い痛みに耐えられずに倒れこんだ。
僕の体を、ベッドが優しく受け止めてくれる。
清潔なシーツのにおいがする。
少しだけ気持ちが落ち着いて、呼吸を整えることができた。
アスパードに刺されたところが、ドクドクと脈を打っていて、その周りを虫が這いずり回っている。
レネーマにつかまれたときと同じだ。
アスパードに刺された部分で、毒の虫が蠢いている。
きっと……アスパードの毒だ……。
また痛みが走り、僕は思わず呻いた。
誰かが僕の足の傷口をきつく締めあげている。その人の顔に、見覚えがあった。
……あ、そっか……バルさんと一緒にいた……オルメスさんだ。
「カイン、起きちまったとこ悪いけど、麻酔がねえんだ。もうちょっと寝てろよ、そのほうが痛くねえぞ」
バルさんがのんきな口調で、声をかけてきた。
隣のベッドで、セリちゃんが眠っているのが見えた。
セリちゃんの姿を見つけて、一気に体の力が抜けていく。僕の口から、長い長いため息が出ていった。
僕はいつの間に気を失っていたんだろう?
もしかしたらバルさんに会えたお陰で、緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。
ここはどうやら宿屋の一室のようだ。
「お前な……。そんな器用な技なんざ、お前しかできるわけねえだろ」
オルメスさんがぼやきながら、僕の太腿を強く縛りあげた。あまりの痛さに、僕の口から悲鳴がもれた。
「あー悪い悪い! ほら! もう終わった!
めちゃくちゃよく効く傷薬もたっぷりサービスしてやったし、明日まで安静にしてれば傷も塞がるはずだ。
だからってあんまり無理して動くなよ。……ま、若いから平気か」
そう言ってオルメスさんは包帯を巻いた僕の足をポンっと軽く叩いた。もちろん痛い。
「うっ! ……あ、ありがとうございます」
僕はオルメスさんにお礼を伝えた。
「……ん……」
隣のベッドで寝ているセリちゃんが、モゾモゾと寝返りをうった。




