piece.15-1
マイカの街――。
ディマーズを警戒しながら人混みに紛れ、僕たちは街の中心を目指して歩いていた。
「カイン、提案がある」
シロさんが真面目な顔で僕を見た。
思わず僕の背筋が伸びる。
僕は黙って、シロさんの言葉を待った。
「今日は街の中心に建ってる、高級な宿に泊まろうぜ。
んでさ、ついでに女とかも呼んじゃうわけ。
……ダメ?」
……いったい何の話なんだ?
提案というか、最後のはお願い?
……え? なに? なんなの? 意味わかんない。
『ダメ?』って首をかしげてこっちを見つめるシロさんが、変すぎて怖……。
シロさんが首をかしげて上目遣いってなんなの? 目がウルウルしてて気持ち悪いし怖い。
なんの罠なんだ? 怖いんだけど……。
すでにかなり動揺してきたけれど、僕は努めて平静を装いながら、シロさんへまっとうな返事をしてあげた。
「ディマーズにオレのことバレちゃったから、早くこの街出た方が良いと思うけど」
レキサさんがうまくごまかしてくれると思うけど、いつまでもここにいたら、またアダリーさんに見つかってしまうかもしれない。
しかしシロさんはニヤリと余裕の笑みを浮かべた。
「甘いな。お前が捕まりそうになった場所は、裏通りの方だ。
あそこはカネがないゴロツキたちの屯するゾーンだろ? もしお前を探すんならそういうところを探すさ。
その裏をかいて、その辺の旅人じゃあなかなか手が出ないような高い宿に泊まる。名案だろ?
ほらお前、ぱっと見、いかにもカネ持ってなさそうな感じだし」
余計なお世話だよ……という心の声は口に出さないでおく。
「……で? 女の人を呼ぶっていうのは?」
「んー? 俺がしたいから」
当然だと言わんばかりの返答だ。
……結局自分の都合じゃんか。
と、いう心の声も口にしないでおく代わりに、僕は軽蔑の眼差しでシロさんを睨んだ。
本当にシロさんはどんなときでもマイペースすぎる。




