表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流転するアルケウス ~inherited Meme~  作者: イトウ モリ
第14章 由縁の紫 ~pollution~
151/395

piece.14-11

一部猟奇的な描写があります。

苦手な方はご注意下さい。




 アスパードという男は、【皆殺し(ブラッド・バス)のセリ】という名前に興味を惹かれ、リリーパスにやってきたらしい。


 あまりにも強い毒を宿したアスパードに、ディマーズは警戒を強めていた。


 だけど、悲劇は突然だった。


「……ディマーズのギルドに、セリ姉宛に小包が届いたんだ。……中身は……」


 そこでレキサさんは、言葉を濁した。きっと口にするのに抵抗がある内容なんだと思う。


 僕は、ふいにステラからセリちゃんの昔話をされた時のことを思い出していた。


(袋の中身、なんだったか分かる……?)


 ステラの声。ステラの表情が頭によぎった。

 違っててほしい。僕の予想が外れててほしい。


 そう願いながら、僕はレキサさんに続きをうながした。


「……中身は、子供の手首……だったんだ。

 アスパードは、子供たちの体をバラバラにして、セリ姉宛てに送りつけてきたんだ。それも――セリ姉と仲の良かった子供たちばかりをさらって……見せしめみたいに……」


 セリちゃん……。


 そのときのセリちゃんがどんな気持ちだったのか、きっと僕がどんなに分かろうとしても、完全に分かってあげられることはないんだと思う。


 きっと自分の体がバラバラにされたみたいにつらかったはずだ。

 きっと……自分が殺されたみたいに痛くて、苦しんで……。


「そのときのセリ姉は、完全に毒に飲まれてたって言ってた。

 悲鳴をあげて、泣き叫んで、みんなが止めようとするのを……暴れて抵抗して飛び出ていったって。

 ……すごかったって。まるで狂ったようにアスパートの仲間たちを斬り殺してたって。

 でも結局、アスパード本人には逃げられてしまって……でもセリ姉はもう、そんなことも分からなくなるくらい周りが見えなくなってて……。

 そのときに、セリ姉を追いかけて、治療しようと止めに入ったレミケイドさんは……セリ姉に……」


 苦しそうにレキサさんが言葉を切った。


(レミケイドはもういない……っ!)


 アダリーさんの叫び声が頭をよぎった。


「殺された子供の人数は七人。だけど……その子供たちの首だけが、見つからなかったんだ。

 ……きっとアスパードのやつが、セリ姉に見せつけるためにどこかに並べてたんじゃないかって、一生懸命探したみたいなんだ。だけど……」


 僕はもう苦しくて息ができなかった。


 セリちゃん……。

 セリちゃんは、ずっとその子たちと一緒にさまよってたんだね。


 ずっと一人で。

 泣きながら。

 その子たちに謝り続けて。


 セリちゃん……。


 どうしたらセリちゃんを助けてあげられるんだろう。

 なんでセリちゃんばかり、こんな悲しい思いをしなくちゃいけないんだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ