詩を書く気持ちを思い出してみる
ここのところ私は、「ストーリーを書かなきゃ」という強迫観念(?)に取り憑かれていたかもしれません。
さくさくとテンポよく進むお話。そういうweb小説らしさみたいなものを、取り入れてみたほうがいいのかなあって。
でも、自宅の窓辺でふと、春めいてきた午後の光を見ていたら、こんなシーンが書きたくなってきました。
内容としては、前頁に載せた「すべては最愛の女王陛下のために」の冒頭(書き出しの別バージョン的な)。例によって続きはなしの、ちょっとしたワンカットです。
このお話(企画原稿)を書いているときに私が思っていたことって実は、「ポーランドの春はライラックだよなあ」とかなんですよね。でも、それより前面に「読者様にストーリーをわかりやすく読んでもらえるように書かなきゃ」とかが出てきて、自分の「好き」部分は存分に書けていなかったのかも。
(あ、お話の舞台は架空世界なので、現実世界や史実とは違うのですが。一応、この「女王陛下」のモデルには、「ポーランド女王ヤドヴィガ」がいます。
ライラックはポーランドの庭木としてよく植えられていて、現地のかたが使う伝統的な呼び名は bez「ベズ」だそうです。豆知識?コーナーでした。)
元々、派手な展開とかストーリーの内容より、何も起こらない一瞬の風景などを映し取ることが好きです。
なろうに来る前、小説はほとんど書いたことがなかったけど、ときどきふっと浮かんだ詩のようなものをメモに残していました。たぶんそれが、私の創作の原点。
そんな気持ちを思い出せたワンカット、ざざっと書いてそのまま出しですが、置いておきますー。
* * *
薄紫色のライラックが咲きこぼれていた。やわらかな晩春の、午後の光を纏って。
「今……、なんと仰いました?」
王宮庭園の奥に位置するあずまやは、私の主ヤドヴィカ様のお気に入り。白亜の支柱が八角形に並び、屋根は青銅色の円蓋。周囲の枝木がしなだれかかる様は、まるで何千年も密かに守られてきた、小さな古代神殿のよう。
女王ヤドヴィカ様の、憩いの場所。ここでのヤドヴィカ様は、ひととき王というお立場から放たれ、ひとりの女性に戻ったように見える。この場に唯一同行を許された侍女の私にとっても幸せな時間だ。そう、いつもどおり幸せな午後だったのに。
「もう一度言うわね、エルフリーデ。――私の命は、あと数年なの」
ライラックの花は枝先に寄り集まって咲き、大きな円錐形を成す。穂状にぎっしり詰まったそれは、ふと向きを変えた微風へ、あっさりと身を委ねた。房からもがれる葡萄の粒のように、ひとつ、ふたつ、ぽろぽろこぼれる薄紫色。
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お読みいただきありがとうございました。
感想欄は開けたままにしておきますが、少々体調崩し気味なのでお返事遅くなるかもしれません(あ、定期的にある貧血気味なだけなのでご心配なく!)。もちろんサイレントでこっそりのぞいてくださっても大丈夫です、こんな書き散らかし頁までいつもありがとうございます……!
また、最近「ノアの憂鬱」の続短編を書きはじめました。Xのほうでぽそっと呟いたら、待ってたよの反応や、おそらくそれで知ってくれたご新規さんが読みに来てくださったりしました。
自分のやる気を出すためのポスト(書くって言って書かざるを得ない状況をつくるため笑)だったのですが、嬉しい誤算というかとてもありがたいです。
体調落ち着いたら続きを書きますね。
元の作品はこちら→ 「ノアの憂鬱」https://book1.adouzi.eu.org/n9068jh/
それでは、お付き合いくださりありがとうございました。




