敗北
この小説はフィクションです。実在する国家、団体、企業、個人、法律等とは一切関係ありません。
【大西洋アフリカ大陸西海岸沖】
海上自衛軍護衛艦『ひゅうが』の直通甲板上でバルカン砲を撃ち続けたPSの林軍曹はやっとバルカン砲を握りしめた右手を下ろす事が出来た。
「生き残った………」
林は心の底からそう思った。
特殊容器に収納されているとはいえ、林の身体である"苗木"の幹は、あの通信マストやレーダードームを容易く引き裂く刃の羽根には叶わないだろう。
右側を見ると、米空母『ロナルド・レーガン』の甲板上にあるF18攻撃機が激しい炎を噴き上げながら爆発して隣の攻撃機に燃え移っている。
甲板上で消火活動が始まっているが、焼け石に水な様子だ。
『ひゅうが』の左右を航行する艦艇はどの船も炎上するか、レーダーアンテナが途中から折れ曲がっているか、何かしらの損害を受けているようだった。
『ひゅうが』自体もレーダードームに大穴が空き、通信アンテナが半分の長さになっていた。
任務機動部隊がコナクリ沖50キロまで後退してようやく異形カモメは陸地に戻って行った。
コナクリ沖で再び集結した任務機動部隊だが、損害が大きかった。
原子力潜水艦1隻大破、ミサイル巡洋艦1隻轟沈、ミサイル駆逐艦3隻大破、そして旗艦空母ロナルド・レーガンは甲板上の爆装した攻撃機に異形カモメが突っ込んで大破爆発、隣の攻撃機に誘爆し中破炎上、かろうじて自力航行は可能な状態であった。
その他の艦艇は全てレーダーや通信アンテナ、センサー類が異形カモメに切り裂かれて使用不可能となっており、艦隊内での通信にも深刻な影響を及ぼしていた。
以上の状況からワット大佐は、任務遂行不可能と判断、インド洋ディエゴガルシア海軍基地に帰投する指示を出すしかなかった。
アフリカ大陸西海岸偵察上陸作戦は人類の敗北に終わった。
任務機動部隊が記録した戦闘場面はG8首脳や各国の軍関係者に深刻な衝撃をもたらした。
アフリカ大陸が植人発生以降、4年に渡って放置されてから大陸内部で何が起こっているのか主要国は関心を持っていなかっただけにショックは大きかった。
G8首脳は、現地政府に支援を行うと共に、本格的なアフリカ大陸西海岸への強襲偵察を試みる事で合意した。
しかし、アフリカ大陸西海岸の異変は急速に大陸全土へ拡がっていった。
大陸各地で内戦に明け暮れていた各国政府は異形の生物群に為す術もなく蹂躙され、音信不通の地域が日増しに増えていったのである。
ここまで読んで頂きありがとうございましたm(__)m
明日は午前9時に次話投下しますm(__)m




