青黒い海原で
この小説はフィクションです。実在する国家、団体、企業、個人、法律等とは一切関係ありません。
アフリカ大陸西海岸の異変を調査する任務機動部隊は、旧ギニアの首都コナクリの港湾部を目指し、アフリカ独特の強い日差しが降り注ぐ大西洋南部の青黒い海上を北上していた。
【任務機動部隊 護衛艦『ひゅうが』】
直通甲板デッキで林三郎軍曹(植人苗木)は、ポッドに収まりながらPSを器用に操り、強襲用オスプレイの武装を点検していた。
アフリカの太陽と潮風を浴びながら葉緑素を活性化させ、気分の良い三郎だった。
「軍曹、調子良さそうだな。」
デッキに上がって来た天城大尉が穏やかな笑みで話しかけてきた。
「小隊長殿!はっ、格別な気分であります!」
大尉殿の笑顔が格別でありますっ!と心の中で三郎軍曹は呟く。
「これが任務で無ければ優雅なクルージングなのだがな。」
天城がぼやく。
「このご時世でクルージングする人なんてそうそういませんよ、大尉殿。」三郎が応じる。
「それもそうだな。間もなくギニア西海岸が見えてくるそうだ。小隊にPS装着の準備をさせておけ。」
天城が指示を出す。
「了解しました!この任務が終わればシンガポールか、オーストラリアの珊瑚礁でも見に行きますか?」
三郎が命令を受諾しつつ、天城の不満を解消するプランを提示する。
「うむ。いいな、それ。是非、行こう!"二人で"」天城は、何故か力強く三郎PSの腕を強く握りしめながら据わった目で快諾した。
やっべー、小隊長の結婚願望に火を付けたかも!?
三郎は激しく後悔しながらも、まんざらでもない不思議な気分になった。
その時、ひゅうがの館内放送が警報音を鳴らす。
「先行駆逐艦より、多数の未確認生物飛来との警告!」
「軍曹、デッキに完全装備小隊集合だ!」天城が鋭い口調で指示を出す。
ひゅうが甲板デッキはにわかに慌ただしくなった。
【任務機動部隊 先行駆逐艦 カナダ海軍「コートノール」CIC(戦闘指揮所)】
「艦長!未確認生物視認距離に入りました。」
「外部モニター最大望遠で出せ!」
モニターには、カモメとおぼしき鳥の群れがまっすぐに艦隊に向かって来ていた。
カモメが一直線に人間の船に殺到する等あまり記憶に無いな、と艦長がモニターを凝視する。
カモメとおぼしき鳥の様相がはっきりと見えた時にCICの全員が息を呑む。
その"鳥"は、羽根を広げれば2mは優に超える大きさの上に、鋭い銀色のくちばしと、同じく鋭い切り込みの入った鈍い銀色の翼を持ち、眼は真っ赤に染まっていた。地球上に存在する生物ではない。
「今すぐ見張りを艦内に待避!艦隊後続に警告!」
艦長が叫ぶ。
任務機動部隊は異形の群れに襲われようとしていた。
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