邪悪な胎動
この小説はフィクションです。実在する国家、団体、企業、個人、法律等とは一切関係ありません。
【地球衛星軌道 赤道上空400キロ】
サドベリー婆はあれから数ヶ月、軌道を漂いながら地上の動きを、人類の営みをつぶさに観察していた。
「つまらぬ」老婆が言い捨てる。
「皆前向きで、明日への希望に満ちておる。」
「それでは進化の道筋が決まっておるからつまらぬ。」
サドベリー婆は眼下のアフリカ大陸を見下ろす。
「ここには破壊と混沌、暴虐と圧政、不条理と悲劇、あらゆる負の要素が詰まっておるなぁ。」
「真っ暗な泥沼からの進化も見物じゃろうて。」
サドベリー婆は眼を瞑り念じる、
ー我と共に試練の進化を共に人類にもたらそうぞ!ー
ユーラシア大陸中央部から同調する白光の強い輝きが立ち上っていった。
【ロシア連合共和国 キルギス自治区 カラコル】
カラコルの北西、中央アジア、天山山脈中央部の山上に「イシク・クル」と呼ばれる湖がある。
一説によると、太古の昔に天から降った石で出来たと云われており、衛星写真からもその可能性が指摘されている。
カラコル市民は郊外の湖から眩いばかりの純白の巨大な光の柱が立ち上っているのを見て、太古の神々が降臨する様を想像して祈りを捧げた。
次の瞬間、光の柱がカラコル市全体も呑み込んで人々の意識は断絶した。
全ての光が収まった後、キルギス自治区に巨大なクレーターが誕生した。
カラコル市民70000人はクレーターを作った爆発に巻き込まれたものとロシア連合政府は判断した。
クレーターからは何も発見出来なかった。
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