宇宙上陸訓練
この小説はフィクションです。実在する国家、団体、企業、個人、法律等とは一切関係ありません。
4月1日【NORAD 北米航空宇宙防衛司令部】
「浮遊山地の高度700km、12時間に1度地球を回る衛星軌道に位置。 」
「各種有害放射線は50kmの範囲で観測されています。観測衛星が次々と機能不全に陥っています。」
「浮遊山地から60kmの範囲を通過する衛星は軌道変更するようにNASAから警報を出させよう。」シャープ司令官が言った。
「ラグランジュ・ベースから無人偵察機を出して浮遊山地の追尾にあたらせよう。」
NORADの指令でラグランジュ・ベースに配備されていた宇宙空母「ミッドウェイⅡ」から無人偵察機"スペース・ホーク"が2機発進して浮遊山地の追尾軌道に乗った。
【ラグランジュ・ベース】
「訓練小惑星『番人』まで距離55、コウノトリ発進準備。PS第一小隊コウノトリに搭乗せよ。」
日本宇宙空母『赤城』と護衛巡洋艦『足柄』が小惑星の50km圏ギリギリで減速する。
「こちらコウノトリ。発進準備完了。」天城大尉がCICにいる澤城大佐に報告した。
「コウノトリ微速発進。」
「コウノトリ微速発進します。林、操縦任せる」
「了解、大尉殿。」
林がコウノトリの噴射装置を操作して甲板からゆっくりと発進していく。
「大尉殿、赤城から発進。小惑星に向かいます。速度50に設定。」
「それでいい。目標まで20に接近したら減速する。第一分隊は減速したらコウノトリ船外に出て船体警護にあたれ。」
「各員装備の点検だ。バックパックと左腕のレーザーガンの接続を入念にチェックしろ!」
天城が指示する。
PS大隊の装備は真空での活動と、有害な放射線から搭乗者を防護する為に特殊な宇宙服でPS全体をカバーしている。この宇宙服の中身は特殊なゲル状物質であり、伸縮性が良好でありながら衝撃にも強く、鋼鉄並の強度を誇る。
円筒形の船体は有害な放射線を防ぐ特別シートで覆われている。船内の人員と機器は充分に防護されている。
「距離20、速度20に減速します。」林が小惑星への接近を告げる。
コウノトリは船首中心部から逆噴射ガスを出しながら減速していく。
後部ハッチから4名がコウノトリ外壁に掴まって四方を警戒する。
「距離10を切りました。速度20維持。」
「距離3速度10に減速。」
「距離1速度5に減速。メイン噴射停止。補助噴射に切換。」
「大尉殿間もなく着陸します。表面まで200m。」
「小隊出ろ!」天城が上陸を命令する。
着陸寸前のコウノトリから白い宇宙スーツを装着したPSが次々と出てきてコウノトリの周囲で分隊毎に固まった。
着地寸前にPSは間接部から圧縮ガスが噴射されて減速と姿勢制御を行う。
やがてコウノトリとPS小隊は同時に小惑星に着地した。
「着地完了。周囲展開!」コウノトリを中心にPS小隊が円陣を形成した。
「こんなものだろう。」コウノトリの後方からスペースホークで上陸演習をモニターしていた澤城が言った。
「よし、第二小隊、第三小隊も上陸せよ!」
竹見副官が指示する。
更に2基のコウノトリが空母から発進して小惑星に向かっていく。
「後は囮作戦で試せるかどうかだな。」澤城大佐が言った。
囮作戦での惨劇を誰も予測していなかった。
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