作戦準備
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2023年3月30日【航空宇宙自衛軍 種子島宇宙基地 宇宙艦艇ドック 宇宙輸送艦(宇宙空母)『赤城』】
宇宙輸送艦『赤城』本体は大気圏再突入可能な恒久的宇宙艦艇として、特殊合金と炭素繊維を使って2020年に建造された。
普段は地球衛星軌道上のデブリを、搭載した工作艦「コウノトリ」で網を使って回収し、大気圏上層でデブリを網ごと放出して、摩擦熱で処分する宇宙掃海任務が多かったが、今回は宇宙空間で初の防衛出動である。
やがて、宇宙艦艇ドックに固定された船体の後部左右に装着された大型のH3Bロケットブースターが点火して、轟音と共にほぼ90°の角度で天空に昇った。
搭乗した特殊作戦群PS部隊と"訪問者"御池は激しいGに耐えた後、地球を一周して『月の番人』とG8スペースコロニーが浮かぶこの宙域にやって来た。
「浮遊山地」潜入破壊訓練を『月の番人』上で行う為である。
今回の作戦は再び集った"訪問者"達による全面支援のもと、ムーン・ベースとラグランジュ・ベースから出撃した地球連合宇宙艦隊が「浮遊山地」に攻撃を仕掛ける一方で、澤城達特殊作戦群の他に、米国のデルタフォース、ロシア連合のスペツナズ、英国のSASが潜入して内部からも「浮遊山地」を攻撃するという作戦だ。
人類の部隊が史上初めて、宇宙空間の小惑星と言える浮遊山地にどのような方法で接近し、上陸潜入するか、各国の指揮官は頭を悩ました。
米露日英の特殊部隊指揮官と"訪問者"「御池」が宇宙空母(対外的には輸送艦と呼称)赤城のブリーフィングルームに集まって検討を重ね、1つのプランを作定した。
空母赤城から手動コントロールに切り替えた「コウノトリ」型工作艦に米露英の部隊が合計9隻に分乗(日本のPSは各小隊毎に、コウノトリ艦外壁に掴まって護衛しながら、各国部隊を援護。)し、3つの別々の浮遊山地に上陸、潜入し、浮遊山地地中に中性子爆弾を埋め込んで脱出、安全圏まで離れたところで起爆させる。
いかにシールドや異能の力を持ってしても、物体を通過する中性子は防ぎ切れない。
問題は浮遊山地がどのような迎撃をしてくるか、サドベリー婆とイシク以外に"新たな訪問者"はいないのか?あまりにも不確定要素が多かった。
この不確定要素を事前に解消する為に、本隊の攻撃前に、強行偵察任務を受けた機動部隊が戦闘機部隊や強襲揚陸艦艇を伴って浮遊山地に正面から上陸作戦を決行すると見せ掛ける「囮作戦」で敵の防御態勢を探る事となった。
旗艦は『赤城』、艦隊防空用の米空母『ミッドウェイⅡ』、直衛護衛艦として『足柄』『利根』、艦隊巡洋艦として『ディスカバリー』『ピョートル大帝』空母兼巡洋艦の『エカテリーナ』『ジブラルタル』という多国籍連合機動部隊だった。
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