太古の訪問者
この小説はフィクションです。実在する国家、団体、企業、個人、法律等とは一切関係ありません。
2022年12月30日、午後11時50分
【地球と月の中間地点 通称 ラグランジュポイント】
『月の番人』は地球から発せられた、遥か昔に大災厄をもたらした『あの』思念波をキャッチした。
そして、北米大陸北部辺りから急激に禍々しい思念が膨れあがり、地球の一角が白光に包まれたのを視るとケルトにその情報を伝えるのであった。
12月31日、午前0時15分
【カナダ ケベック州 サドベリー市跡】
クレーター中心部から、黒いローブをはためかせた一人の老婆がシュッと空中高く飛び上がった。
「どうやらうたた寝が過ぎたようじゃな。」
「だいぶ賑やかな惑星になりおったが、どの生命もたるんでおるのう~。」
サドベリー婆はぶつぶつと、ひとりごちながら上空のオーロラを超音速で突き抜けてサドベリー市跡から飛び去った。
【カナダ 首都オタワ 首相府】
カナダ首相トレドーは人類滅亡の危機を乗り切った功績で2期目の政権でカナダの復興に尽力していた。
そんな矢先の悲報に衝撃を受けたが状況の特殊性に鑑み、密かに米英日に連絡を取り、対応を協議していた。
「貴国の悲劇に心からお悔やみ貰しあげます。」
英国のリンドバーグ首相が弔意を伝えた。リンドバーグの背後には首相補佐官兼地球外文明担当のケルトが居る。
「サドベリー市のクレーターからは何も発見出来なかったのですか?」ケルトが訊く。
「ええ、現地には広大なクレーターと荒涼とした土地しかありません。生物の痕跡はまるでありません。」トレドー首相が疲れた声で答える。
「貴国に未だ見ぬ太古の''訪問者''が目覚めた可能性はありませんか?」
日本の日向首相がトレドーやケルトに訊く。
「我々の同朋で有れば、目覚めた感覚が地球上何処に居ようとわかるのですが、今回は私には感じられませんでした。」ケルトが言う。
「考古学や天文学者に記録を調べさせたところ、太古の記録が1件だけありました。」トレドーがやや上ずった声で答える。
「首相、どれくらい前の者かね?」ペンス米国大統領が訊く。
「推定18億5000万年前です。」震える声でトレドーが答えた。
「先程『月の番人』からも報告があり、……私を遥かに上回る能力を持つ存在であることは確実です。」
英国のケルトが息を呑んで答えた。
「………………」各国の首脳は沈黙した。
しかし、G8首脳を震撼させた出来事から数ヶ月経っても何も起こらず、太古の訪問者は何処にも姿を現さなかった。
ここまで詠んで頂きありがとうございましたm(__)m




