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ホームセンターごと呼び出された私の大迷宮リノベーション!  作者: 星崎崑
第四章

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第61話 新規オープンだよ!

 ダーマ大迷宮のオープン日。

 突き抜けるような快晴で、初日にしては探索者も多く集まってくれた。


 新規の人が一番多いが、そこそこ経験がある人もいるし、他の迷宮街でやっていた人も少ないながらも来てくれた。そんな年齢も人種も様々な探索者志望者たちが、わいわい談笑しながら営業開始を待っている。


 とはいえ規模は学校の学園祭にも及ばない程度でしかなく、私としてはなんだか身内の集まりという感じすらしていたのだった。

 実際、迷宮に潜らない子どもや近所の人たちも多い。


「はーい。それでは入場はこちらからになりまーす。本日は全員がEランクですので、2層までが開かれています。順番を守り行儀よく探索を楽しんでくださいね」


 受付嬢に扮したドッピーが、よく通る声で探索者たちを案内する。

 最初期に活動する探索者は人格が大事……ということで、ドッピーによる経歴チェックにパスした人しか探索者証を渡していない。


 経歴チェックは探索者証を作るときに行われた。

 書類の記入時に、握手によりドッペルゲンガーの能力を発動。外見を変えずにその人間になることで、経歴を読み取るというチートである。ドッピーによると、さすがに無限に「変化できる人間」をストックできるわけではないそうだが、瞬間的にその人間になるのはいくらでも可能とのこと。

 おかげで、犯罪者や性格に難がある人などは弾くことができた。


「で、マホ的にはどうなの? 初日としては。こんなに集まるのは想定通り?」


 私といっしょに少し離れた場所で様子を見ていたフィオナからの、非常にざっくりとした質問。


「まあ大体想定通りかな。個人的にはもう少し若者が来ると思ってたけど」

「あー。それはしょうがないよ。このあたりの人は、前のメルクォディアを知ってるから家族も反対するだろうし」


 ダンジョンが発生した頃、このあたりの若者、それこそ100人以上がスライムやゴブリンの犠牲になっている。戦士の加護がある者ならともかく、加護も魔法契約もない者では、本来はダンジョン探索なんてできないのだが、迷宮管理局を入れていないが故に、無鉄砲な若者もノーチェックで出入りできてしまっていたのだ。


「もっと情報が出回れば、近くの若者なんかも来てくれるだろうけど、時間は必要かも」

「まー、プレオープンだし……これからってことだね。それより、私は事故が怖いかな。遅くとも1ヶ月くらいで上層階の問題点はあらかた洗い出したいところだね」

「マホでもわかんないことあるの?」

「そりゃあるよ。ここからはトライアンドエラーだね」


 アイネちゃんパーティーや、雷鳴の牙のみんなと協力しあって、優先順位の高い部分のケアはだいたいやったけど、それでも「まさか!」ってことは起こりえる。

 安全第一なんて言ったところで、みんな他人だ。困った事態に陥った時、助け合いだってできるんだかどうだか……。


 宝箱なんかは絶対取り合いになるのが確定しているわけだし、短絡的な人間がそれを強奪するなんて手段に出る可能性はすでに織り込んである。

 なんだかんだで、魔物なんかより人間同士で争い合うことになるのが、一番怖い。

 もちろん、探索者同士の喧嘩はご法度で、永遠追放もありえると伝えてはあるが、それでも起こるだろう。それが人間というものだから。

 腕時計の転売くらいなら許しても、それだけは私は許さない。

 最初にそれをやった者は、高い授業料を払わされることになるだろう……。


「マホ、どうしたの怖い顔して」

「犯罪行為は絶対に許さないぞという思いを強めていたのだよ」

「あれだけしつこく警告してれば大丈夫だと思うけどなぁ」

「フィオナは甘いよ。人間の欲望というのは限りないものなんだよ……」

「アイネさんは『もう甘いものは見たくないわ……』って言ってたけど」

「あれは頭オカシクなって、缶詰のアンコをスプーンですくってそのままいくつも食べた結果だから。あと、甘いは甘いでもその甘いではない」


 入口では、スタッフの腕章を着けた【雷鳴の牙】の面々がそろって探索者証――腕時計をチェックしている。

 腕時計はホームセンターの品で、この世界では絶対に複製はできない品だ。どうやら、みんななくさずにちゃんと腕に着けて来たみたいだ。

 転売する人も出てくるかと思ったけど、案外モラルが高くて嬉しいね。


「ポチタマカイザーのお披露目も大丈夫だったし、あとは事故やら喧嘩やらなく初日を終えられれば満点かな」

「探索者の生き死ににここまで敏感なのってマホくらいだし……。もうちょっと気楽に考えてもいいんだよ? これだけ人が集まっただけで、信じられないくらいなんだから」

「まーだそんなこと言ってるの。うちは寺院がないんだから『死なない』ってのは大前提っていうか、とにかく大事なことなんだよ。できる限りの準備をしたけれどもさ、起きてからじゃ遅いんだよ」


 私だって、事故は起こると考えている。


 魔物などというコントロールできないものが相手の商売だ。何もかも思い通りになんていくわけがない。だからこそ、その事故に対して、どうリカバリするのかが重要になるのだ。


 寺院による「蘇生」はその最たるものだろう。事後処理として最強格のもの。なにせ、死がなかったことになるのだ。これはズルい。神への冒涜。……いや、神が協力しているのだから、この世界では正当な行為ではあるのか。


 とにかく、うちにはそれがない時点で、常に他のダンジョンよりも一歩劣る。宝箱や魔石の買取額など、単純な儲けを出すことでプラスの演出をしているだけなのだ。

 ま、とはいえ今日は1層と2層しか行けないし(3層への階段は物理的に封鎖しているぞ!)、ゴブリンの仕切りがちゃんと機能していれば、怪我をする人なんて出ないんじゃないかな!


 私、けっこう自信があります!


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― 新着の感想 ―
[一言] 人って欲の強い生き物だからねえ 何かしらの抜け道とか見つけようって層は出てきそうだなあ
[良い点] ああ前話の受付嬢との握手はドッピーによる人体捜査だったのかw [気になる点] 一般人が入ってたのはなぁ… せめてチェックをする地元住民にしてそこだけはチェックできてれば。 [一言] 第三陣…
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