表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホームセンターごと呼び出された私の大迷宮リノベーション!  作者: 星崎崑
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/72

第50話 ドッピーもがんばってるね!

 私がダンジョン内部の改装をやったり、ジガ君と出会って彼のパーティーメンバーとの契約を進めている間、ドッペルゲンガーのドッピーには、地上の状態を確認してもらいまとめてもらっていた。


 探索者の街にするために、なにが必要で、どういう優先順位で作っていくか……ハッキリした情報がなければ、どう進めていけばいいのかもハッキリしないからだ。


 しかも作ればいいというものでもない。

 働く人間がいなければ意味がない。つまり、地元住人との折衝が欠かせないということだ。


 特に「現在もダンジョン近隣で店舗を経営している住民」の情報はかなり密に調べさせた。

 せっかく頑張って商売を続けているのに、私がホームセンターの品とかを持ち出して、タダ同然で配ったりしたら、せっかくの地元民が離れる原因になってしまう。

 だから、まず地元の状態をきっちりチェックする。彼らは私たちの仲間であり、言ってみれば運営最初期のキーメンバーみたいなものなのである。

 みんな今の状態が良いとは思っていないのは確かなはずだから、ちゃんと話せば協力してくれるだろう。


「で、ドッピー。進捗はどう? 必要な資材とかあればじゃんじゃん卸しちゃうからね」

「では、報告いたします。長くなりますよ」


 ドッペルと数日ぶりに合流して、地上部分の進捗を確認する。

 ドッピーは今、私の姿だ。私自身と対面して話をするという謎な状況だが、運営の話をするなら『私同士』であったほうが、話が早い。

 ドッピー自身も、オリジナルの状態は意外とアイデンティティがあやふやだそうで、なにかになっている状態のほうが落ち着くのだそうだ。妙な生態である。


「まず残っている店からですが、ダンジョン近くで営業しているのは鍛冶屋が一軒のみです。あとは魔石の買取所ですが、こちらはダーマ家の運営となっています」

「宿屋とか道具屋はない……ってこと?」

「すべて領都のほうへ移転してしまったようですね。探索者がいなければ稼ぎようがありませんから」

「それでも鍛冶屋は残っている……と。不思議だね。なんで移転しないんだろ。あ、鍛冶道具は設備がけっこう大掛かりだからか」

「それもありますが、農具や工具の手入れなどの仕事もあるようですね。もともと腕の良い職人だったようで」


 鍛冶屋が残ったというのはかなり運が良い。僥倖と言ってもいい。

 なぜなら、道具屋などの物販や、ベッドさえあればなんとかなる宿屋などは、ハッキリ言って、建物さえあれば、後はホームセンターを駆使すれば体裁を整えるのは容易い。

 だが、鍛冶屋みたいな職人と設備が必要なものは全然別。

 ホームセンターでは設備も整えることができないし、職人だって呼ぶのは楽じゃない。

 一番残ってほしいものが残ってたと言ってもいい。


「じゃあ、その職人さんは絶対死守だね。話はもうした?」

「しましたが、半信半疑でしたね。とりあえず、お酒を贈ったら喜んでもらえました」

「でかした。また私も話をしに行くよ。うちのお抱えにしてもいいかもね。まあ、なにを求めているかがわからないとどうにもならないかもだけど」

「お弟子さんもいらっしゃるので、練習用に鉄を贈ってもいいかもしれません」

「ふむ。あとは燃料とかか。木炭ならいくらでもあるけど、石炭はあったっけかな……」

「たしか木炭しかないですね。ただ、鍛冶では木炭を使っているようでしたよ」

「なら木炭でいいか。売るほどあるからね」


 なんたってブツはたくさんある。探索に鍛冶屋は必須だよ。うちで売っている武器なんて、斧とナイフ(とか包丁)くらいのものなんだから。

 とにかく、鍛冶屋は貢物をしまくってでも、うちに残ってもらうぞ!


「あとは、廃墟というか使われなくなった建物ですね。こちらも、もともとは道具屋や宿屋が存在していたので、そのまま再活用できるよう整備を開始しています」

「具体的には?」

「清掃と補修。これは地元の職人を雇いました。こっちには印籠がありますから、かなりやりやすいですよ」


 印籠……つまり、ダーマ領主代行の証である。

 私とフィオナも持っているが、ドッピーにも持たせてあるのだ。

 ちなみにドッピーは一人で行動しているが、そのへんのチンピラなど問題にならないほど強いので、治安が多少怪しくても全然問題ない。というか、ドッペルゲンガーは変身前の状態が普通に『最下層にいる魔物』の強さなのだ。

 それを格下扱いしているセーレがちょっと異常なだけなのである。


「街から人を呼ぶことはできそう?」

「そちらも動いていますが、まだ腰が重いですね。実際に人が増えるまでは、仮店舗という形で運営していくしかないかもしれません」

「一回失敗してるわけだからねぇ。やり直すなんて言われても、信用されないか」


 究極、物販はどうにでもなる。商人は売れるとわかればすぐに来るだろうから。

 物を運ぶのも、それほど時間は掛からない。まして、領都からなら1時間程度のものだ。出張販売所ならまたたく間に整備できてしまうだろう。

 問題はある程度の専門性が必要な店。具体的には「酒場」と「宿屋」だ。


「実は酒場に関してはちょっとツテがあるかもなんだ。メリージェンで獣人向けのお店があってね。もしかしたら、うちに出張で店出してもらえるかもしれない。こっちで、店舗は作る必要あるだろうけど、人だけでも来てもらえたらって。まだ交渉は全然まだだけど」

「それは良いですね。ではそちらの交渉はおまかせします。宿のほうは、もう少し街であたってみます。あとは、アレですね」

「アレか。ま、一番大事なとこだからね」


 アレとは、つまり探索者ギルドのことである。

 安全第一を掲げてダンジョン経営をするにあたって、ここまでに話した酒場やら宿屋やらは、付随設備に過ぎない。

 探索者ギルドは本丸だ。


 メリージェンやメイザーズは、迷宮管理局のルールでもって運用されているが、フィオナに聞いたところによると、大したルールはなさそうだ。唯一厳密に定められているのは、「魔石」は必ず買取所に収めること。これは、国外持ち出し禁止のルールに則ったもので、ルール違反はかなり厳しく処罰される。もちろん、ただ持っているだけで処罰されるわけではないが、個人が持っていてもほとんど使い道などないものだ。


「魔石買取所の買取相場関係はそのままで良さそうだけど、職員さんは何人いるんだっけ?」

「2名ですね。すでにある程度の話はしていますが、どこまで話すかはマスターの指示を仰ごうと思っていました」

「街でもう数人雇っておきたいね。ギルドの受付嬢で求人出しといて」

「男性も含めて募集しておきます。10名ほど欲しいですね」


 ギルド運営には、人手が必要だ。

 うちではかなり探索者ファーストな施策をするつもりでいる。

 迷宮内部の地図を無償で配るのは当然として、ダンジョン内部の魔物の情報も教えるし、そもそも免許制にする。ペーパーテストに合格した者でなければ、探索者証は与えない。


 あとは探索者ランク。

 よそでも、上級とか中級みたいなフワッとしたランクがあるようだが、うちでは由緒正しくABCランクを採用する。最初はEランクスタートだ。

 最下層まで至ったらSランクをあげてもいいな。


 話し合いは進む。

 ある程度軌道に乗ったらやりたいことなんかも、案出しだけして、ひとまずの情報共有は完了した。

 ドッピーはかなり優秀だ。この短期間の成果としては十分だろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

― 新着の感想 ―
[一言] 木炭使い放題だし木炭のために森を切り開いたりが必要ないのは結構ありがたい話ですね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ