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異世界でゲームのシステムで最強を目指す  作者: 霧野夜星


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第九十四話 次の目的地

 シャルロッテとギルドマスターが、変異種について話している。


「アモンがアークデーモンの変異種なら、元の魔族の姿から全然違う姿に変化してたんですね」

「違う姿に変化する奴と、見た目があまり変化しない奴がいるみたいだな」


 アモンは人の姿のアークデーモンから、頭がフクロウで上半身が狼で下半身が蛇の姿に変化していた。一方、グレーターリッチは、姿はほとんど変わらず、体が少し大きくなったくらいの変化だった。


「変異種のことはまだよくわかってないから、これから解明されていくんだろう」

「ではとりあえず魔石とゴールドは私が預かっておきますね。後で分配しましょう」


 シャルロッテは、テーブルの上の三体の魔王の魔石と、白金貨の入った複数の袋をアイテムボックスに収納する。


「素材の代金だが、グレーターリッチとアモンの魔石以外の素材を合わせて2000000ゴールド(白金貨二千枚)だ。ああ、解体費用は引いてあるぞ。とは言っても、キリのいい数字におまけしといたから、解体費用はあってないようなものだ」

「それはありがとうございます」

「それでお前たちは王都に帰るのか?」


 Sランク冒険者パーティ、覇竜の牙は、メイル国の王都を拠点としていた。


「いえ、私達はラヴァ帝国に行こうと考えています」

「おお、もしかして迷宮都市か?」

「はい。ラヴァ帝国の大迷宮は、メイル国のものより広く難易度が高いらしいので、いつか挑戦しようと考えていたんですよ」


 メイル国にも迷宮都市があるが、ラヴァ帝国にも存在していた。シャルロッテ達はメイル国の大迷宮は攻略済みだったが、ラヴァ帝国の大迷宮はまだ行ったことがなかった。


「あっ、そうだ。私達はラヴァ帝国に行くので、ヴリトラの素材の代金はトウガ君達が預かっておいてもらえますか?」

「いいですよ」

「じゃあ、預かり証を持っててくれ」


 ランスロットはヴリトラの素材の預かり証を冬雅に渡す。


「お前達、トウガのことを信頼してるんだな。普通は大金をほかのパーティに預かってもらうなんてしないだろ」

「ふふふ。魔王と一緒に戦ったので、強い絆が生まれたんですよ」


 そう言いながらシャルロッテは冬雅を見ながらウィンクする。


「えっ。ええと、そういうことです」

「むむむ」


 その様子をサキは複雑そうな表情で見ている。


「それでは私達はこれで」

「おう。ラヴァ帝国の大迷宮の攻略、無理はするなよ」

「はい」


 冬雅達とシャルロッテ達は、応接室を出て一階に降りて冒険者ギルドを出て、昨日、冬雅が泊った宿屋の部屋にやってきた。冬雅達は国から多額のヒュドラ変異種の討伐報酬をもらっていたので、この三日間、今まで泊っていた宿ではなく、かなり豪華な宿に泊っていた。その豪華で広い部屋に、冬雅達とシャルロッテ達全員が集まる。


「じゃあ、今回の報酬の分配をしましょう」


 シャルロッテはアイテムボックスに収納してあった三体の魔王の魔石と、魔王の素材の代金の入った袋を取り出してテーブルの上に置く。


「約束どおり、トウガ君達には魔王の魔石と、素材の代金の半分を受け取ってもらいます」

「よし。白金貨を分けるか。数が多いから手伝ってくれ」


 ランスロットが袋に入った二千枚の白金貨をテーブルの上に取り出し、皆で枚数を数えながら半分に分けていく。


「それにしても素材の代金の半分を私達がもらっていいんですか? 特にグレーターリッチは、トウガ君のスキルだけで倒したのに」

「いいんですよ。魔石をすべてもらいましたし、シャルロッテさんの演技があったから、俺のスキルを使えたので」

「お前達、欲がないな。まあ、そのおかげで俺達も大金を手にしたわけだが」

「こんな大金もらっても実感がないですよ」

「ヴリトラの素材の代金は、もっともらえると思うぞ。ドラゴンの素材は高値で取引されるうえにあの巨体だ。うろこと肉だけでも、かなりの額になるだろう」

「いやいや。いちばん高く売れるのはドラゴンの心臓でしょ。しかもヴリトラの心臓となれば、いったいいくらになることか」


 エミリは白金貨を並べながらそう話す。


「そんなに高く売れるんですか? それを俺が預かっててもいいんですか?」

「はい。本来なら三体の魔王はトウガ君達が倒したのも同然ですから、全部トウガ君がもらってもいいくらいです」

「いや、みなさんと一緒に戦ったので、それは心苦しいですよ」

「お前は真面目だな。よし、これで半分にしたのを四等分だ。俺の分はもらうぞ」

「私も!」

「僕ももらいます」

「こっちも三等分できたわ。といっても、余りがでるけど、それは上泉君が持ってて」

「わかった」


 冬雅、サキ、凛子は、金貨千枚を三等分にしてそれを手に取る。冬雅は前にコロポックルにも分配しようと提案したのだが、本人がお金の使い道がないので無用と言ったので三等分にしていた。


「それじゃあ、私達はラヴァ帝国へ出発する準備があるので、これで失礼します」

「じゃあ、また会おう」

「じゃあね」

「失礼します」

「トウガ君。私達、大迷宮でもっと強くなって戻ってくるので、また会いましょう」

「はい。お気をつけて」


 シャルロッテ、ランスロット、エミリ、カイトがこの部屋を出ていく。


「さて、俺達もこれからどうするか決めよう」

「私、色々考えたんだけど……」


 まず凛子が話し始める。


「もう魔王を倒せるくらい強くなったし、しばらく遊んで暮らせる大金も手に入ったし、もう危ないことしないで、だらだらしててもよくない?」

「ちょっと凛子!」

「あっ、やっぱ駄目?」

「ううん。だらだらっていうのは駄目だけど、もう危ないことしないっていうのは私も考えてた。たぶん最後の魔王は浅井君達が倒すでしょ。私達はそれを、帰る方法を探しながら待ってればいいんじゃないかと。上泉君はどう思う?」

「えっ、ええと……」


 冬雅は、二人とは違う自分の考えを話していいか迷う。


「もしかして迷宮都市に行きたいの?」

「あっ……う、うん」

「やっぱりねー」

「レベルも装備品もまだ強くなる余地があるから、もっと強くなりたいと思ったんだ。だから迷宮都市に行きたいんだけど」

(もっと強くなりたいと思うのは俺のわがままか。それに二人を巻き込むわけにはいかない)


 冬雅は少し考えてから二人に話す。


「じゃあ、俺は迷宮都市に行って、二人は王都の図書館で帰る方法を探すっていうのは……」

「それは駄目」

「うんうん」

「えっ?」


 サキと凛子は、冬雅の案を即座に否定する。


「今まで三人一緒にやってきたんだから、二手に分かれるのは、なし!」

「だいたい、私達二人で王都に行ったら、絶対トラブルに巻き込まれる自信があるよ」

「そうそう。今まで上泉君が色々考えてくれたから何事もなくここまで来たんだし」

「そ、そうかな」

「だから今回は上泉君の案でいいよ。さっきは浅井君達が魔王を倒すって言ったけど、もし倒せなかった場合、私達がもっと強くなっておけば安心だし」

「あっ、そういえば私、アールマティにもっと強くなるって約束してたっけ」

「わかった。二人ともありがとう! そうだ!」


 冬雅はアイテムボックスから、前に買っていたメイル国の地図を取り出す。それにはメイル国内のおおざっぱな町や街道などが書かれていた。


「このベールから東の街道をまっすぐ進むと王都ガントレットがあって、王都から南の街道を南下してくと迷宮都市ヘルムがあるんだ」



 次回 王都ガントレットへ に続く

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