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異世界でゲームのシステムで最強を目指す  作者: 霧野夜星


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第五十〇話 ベリル山へ

「リーナさん」


 冬雅達がいる場所に、精霊の剣と精霊の鎧を身に着けたエルフの騎士団長リーナがやってくる。


「今日はよろしく頼むぞ」

「はい」


 冬雅達とリーナが話しているのを見た周囲にいる冒険者達がざわつき始める。


「あいつら、騎士団長とも知り合いなのか」

「ギルマスも注目してたし、只者じゃないかもしれない」

「俺、あいつらのCランク試験を見てた奴に聞いたんだけど、試験官が命乞いしてたらしいぞ」

「は? Cランク試験なら、試験官はBランクの冒険者だろ」

「ああ、それがあいつらに手も足もでなかったらしい。それを見てギルマスが奴等をBランクにしたそうだ」

「それはやばいな。あいつらとは、もめないようにしたほうがいい」


 冒険者達がそんな話をしていると、冬雅達は自分達が周囲の注目を集めていることに気づく。


「何か注目されてるような……」

「リーナさんのことを見てるんじゃない? これだけの美人だし」

「あら、あなた。なかなか見どころがありそうね」


 凛子の言葉を聞いて、いつも男っぽい言葉で話すリーナが、少しだけ女性らしくなる。


「そういえば、ベールにSランクの冒険者っているんですか? Aランクの人は参加してるみたいですけど」

「今、ベールにSランクはいないぞ。前はいたけど、冒険者を辞めて騎士団の団長になったからな」

「えっ? それって」

「そう。私は元Sランクの冒険者だ」

「そうなんですか」

「ああ、その腕を買われて騎士団長になったんだ」


 辺境の町ベールの騎士団長のリーナは、元々Sランクの冒険者だったが、八年前に領主にスカウトされて騎士団に入ったという経緯があった。


「それなら今回の作戦も楽勝ですね。今回の敵で一番強いのがAランクのレッドワイバーンですし」

「そうだといいんだが、こういう作戦の時は、いつも予期せぬことが起きるんだよ。Sランクモンスターが現れたりな」

「それは……ありそうで怖いですね」

「ははは。冗談だ。今回は事前に偵察部隊が入念な下調べをしている。注意するのはレッドワイバーン三体で間違いない」

「リーナ団長!」


 冬雅達とリーナが話していると、騎士団の若い男が彼女を呼ぶ。


「おお、ちょっと待ってろ。じゃあ、後でな」


 そう言ってリーナは騎士団が集まってる場所に走っていく。


「リーナさんってSランクだったのか」

「エルフってことだけで凄いのにね」

「リーナさんもいるしAランクの冒険者もいるし、今回はおとなしくBランクの普通のワイバーンを狙おう」

「レッドワイバーンのAランクの魔石は欲しいんだけど」

「Aランクのダンジョンに行けばいくらでも手に入るから、今は焦ることはないよ」

「それもそうか」


 そんな話をしているうちに出発の時間になった。騎士団や冒険者達が馬や馬車に乗り込み、出発の準備は整っていた。


「時間だな。ではベリル山へ出発!」


 リーナの合図で討伐隊が辺境の町ベールの北門をくぐり、街道を馬車と馬で進んでいく。冬雅達はもちろん影馬とアンヴァルに乗って馬車隊の速さにあわせて進んでいく。


「そういえば、影馬一時間の召喚にMPを消費するのよね」

「うん」

「じゃあ、コロポックルおじいちゃんはずっと召喚されたままだけど、MPは消費され続けてるの?」


 暇つぶしにサキは思っていたことを話す。


「ん? 私、MPを使ってる感じはないよ」

「当然じゃ。わしは元々この世界の住人じゃ。じゃから呼ばれた時に転移するためのMPは必要じゃが、存在にはMPは不要じゃ」

「そうなの」

「うむ。そっちの影馬はこの世界の馬ではなく、幻獣界から来とるから、実体化の維持にMPか必要なんじゃ」

「へー。幻獣界なんてあるのか」

「じゃあ、私のアンヴァルも制限がないから、この世界の馬なの?」

「ヒヒーーーン!」


 アンヴァルは凛子の言葉を肯定するように鳴く。


「そんなんだ。じゃあ人参とか食べる?」

「ブルブルブル」

「食べないみたいね」

「なら、何食べるんだろ」

「食べ物は必要ないじゃろ。わしと同じようにの」

「そうなんだ」


 凛子の肩に乗っているコロポックルも、彼女達が食事をしてる時、何も食べなかった。


「じゃあ、どうやって生きてるんだろ?」

「魔力とかかな」

「さあのう。今まで気にしたことないから、わしにもわからん」


 そんな話をしながら討伐隊はベリル山を目指して進んでいく。そして約一時間後、冬雅の影馬の召喚限界時間がやってきた。


「ヒヒーーン!」

「ん? ああ、一時間たったのか」

「ヒヒーーーーン!」


 影馬はそうだと言ってるように鳴く。


「じゃあ、いったん降りて……」

「ブルブルブル……」


 影馬はそうじゃないと言ってるような態度をとる。


「降りなくていいのか?」

「ヒヒーーーン!」

「少年よ。その馬に魔力を与えてみるんじゃ」

「魔力を与える?」

「そうじゃ。手を当てて魔力を送ればいい」

「ヒヒーーーーーン!」


 影馬はその通りと言ってるように鳴く。


「なるほど、やってみよう」


 冬雅は影馬に乗りながら背中に右手を当てて魔力を流す。


「これでいいのか?」

「ヒヒーーーーーーーーーーーン!」


 影馬は肯定するように元気に鳴く。そして冬雅は影馬の実体化に必要なMP30を消費した。


「なるほど、体の維持に必要な魔力を与えればいいのか」

「いちいち降りてまた召喚しなくてもいいのね」

「じゃあ、また魔力が必要になったら教えてくれ」

「ヒヒーーーーーン!」


 そんなやり取りをしながら冬雅達はさらにベリル山へ向かって進んでいく。そして辺境の町ベールを出発してから約二時間後、ベリル山のふもと近くまでやってきた。


「聞くのを忘れてたんだけど、ワイバーンの巣って山にあるんだよね」

「うん」

「もしかして山に登るの?」

「たぶん……」

「馬に乗ったままじゃ登れないよね」

「山道にもよるけど、みんな、歩いて行くんじゃないの」

「まじか! 山登りって結構大変じゃん! 私、サキみたいな体力おばけじゃないし」

「おいおい」

「レベルが上がってるし、体力も上がってるはずだけど、魔法使い系は体力が低いままかもしれない」

「うわー、私、無理かも!」

「ヒヒーーーン!」


 凛子達の会話を聞いていたアンヴァルが力強く鳴く。


「ほほう。山道も俺にまかせろ! って言ってるようじゃの」

「まじか! いい子、いい子」

「ヒヒーーーーン」


 凛子に背中をなでられ、アンヴァルは喜んでいるようだ。


「いや、山には登らなくてくてもいいかもしれない」

「えっ? どういうこと?」

「ワイバーンが来た!」


 冬雅が見てる方向をサキと凛子とコロポックルも見る。すると空からワイバーンの群れがベリル山の方向から飛んでくるのが見えた。


「て、敵襲! ワイバーンが来たぞ!」

「馬車から降りろ! 戦闘準備だ!」


 周りの騎士や冒険者達もワイバーンの群れの接近に気づき、馬車隊が止まって騎士や冒険者達が戦闘態勢をとる。


「レッドワイバーンもいるぞ! 魔法障壁の準備だ!」


 リーナはレッドワイバーンの火のブレスを警戒して、騎士団にそう指示する。


「私達も戦おう」

「うん」

「私も魔法障壁の準備をしとくよ」


 冬雅は影馬から降り、サキと凛子はアンヴァルから降りる。


「怪力! 加速!」

「戦乙女の誓い!」

「魔力高揚!」



 次回 予期せぬこと に続く

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