第四十八話 新たな装飾品合成
「えっ?」
「ん? どうしたの?」
冬雅がステータスボードに驚いているのを見て、リーナがそう質問する。
「い、いえ、何でもありません」
「そう。それならいいけど」
「そうだ。凛子が持ってる宝石を売れば、ほかの装備品も買えるんじゃない?」
冬雅が困っている様子を見て、サキが話題を振る。するとそれに凛子が反応する。
「えっ? 宝石、売っちゃうの?」
「凛子が持ってる宝石は、パーティの共有財産なんだから、必要なら売るでしょ」
「そ、そんな……せっかく集めたのに」
「い、いや。今は売らなくてもいいんじゃないかな。お金はまたダンジョンを攻略してためればいいし」
「そ、そうだよ」
冬雅の言葉に凛子は安心する。
「もう。凛子に甘いんだから」
「まあ、宝石集めがダンジョン攻略のモチベになるんならいいんじゃない。俺は宝石には興味ないし」
「私も宝石には興味がないから、いいんだけど」
「話はまとまったか?」
「は、はい。今日の買い物はこれで終わりにします」
「そうか。では三日後にまた会おう」
冬雅達は武器屋を出た後、リーナと分かれる。
「それでさっきはどうしたの?」
「コ、コロポックルが仲間になってたんだよ」
「いやいや、元々仲間じゃろ」
「う、うん。いやそうじゃなくて、ええと……」
冬雅はステータスボードの仲間欄に、コロポックルの名前があることを三人に説明する。
「ふむ。ということは、わしはお主達の四人目の仲間ということじゃな」
「そうみたいだ。レベル14って書いてあるから、これからレベルも上がると思う」
「なんと! わし、もっと強くなれるのか?」
「そうみたいだよ。よかったね」
「おおう。わし、がんばっちゃうぞ!」
凛子の肩の上のコロポックルはやる気になってる。
「そういえば、冒険者ギルドでコロポックルは私達の仲間だって、凛子が言ってたよね」
「なるほど。それでコロポックルがシステム的に仲間になったのか。あっ、ちょっと待って」
冬雅はステータスボードを表示して、仲間欄のコロポックルの妖精の職業をタッチしてみる。するとウィンドウが現れ、
「レベル30で上級職が解放されます」
と表示された。
「おお! 妖精は転職できないけど、レベル30を超えたら上級職になれるって」
「ほほう。上級職とな」
「妖精の上級職なら、精霊とか妖精王とか?」
「それはレベル30になった時のお楽しみかな」
「ほっほっほっ。わし、転職できるのか。これはわくわくがとまらんぞい!」
コロポックルは今までで一番喜んでいる。
「それでワイバーンの巣の討伐は三日後でしょ。それまでどうする?」
「魔石が手に入ったんだし、まず装飾品合成したいんだけど」
「じゃあ、宿屋に帰って装飾品合成しよう」
冬雅達は武器屋から宿屋に帰り、サキと凛子の二人部屋に四人が集合する。
「じゃあ、持ってる装飾品を全部並べてみて」
「魔石も出すよ」
冬雅達は所持している装飾品と、アイテムボックスにあるモンスターの魔石をテーブルの上に取り出す。
「並べてみると多いわね」
「指輪は、どれが何の指輪か、わかんなくなりそう」
テーブルの上にはAランクの魔石が一個、Bランクの魔石が四十個、魔力の指輪が三個、力の指輪が二個、速さの指輪が二個、毒無効の指輪、麻痺無効の指輪、睡眠無効の指輪、生命の指輪、魔力回復の指輪、力のベルト、魔力のネックレス、そして最初に装飾品合成した防護の指輪が並んでいる。
「合成する時はウィンドウに指輪の名前が表示されるから、間違えることはないでしょ。じゃあ、どれとどれを合成する?」
「その前に、装飾品合成って三つとか四つを合成できる?」
「じゃあ、試してみようか」
サキはとりあえず魔力の指輪三個と、Bランクの魔石を目の前に置いて両手をかざす。すると
魔力の指輪 魔+5
魔力の指輪 魔+5
ドラゴニュートの魔石
MP20
合成しますか?
はい いいえ
と表示された。
「ああ、指輪が二つしか表示されてない。三つ合成は無理みたい」
サキは、いいえを選択して装飾品合成ウィンドウを閉じる。
「じゃあ、前に言った魔力の指輪と魔力回復の指輪をお願い」
「わかった」
サキは凛子のために、それらの装飾品合成の準備をして発動する。
魔力の指輪 魔+5
魔力回復の指輪 MP自動回復
ドラゴニュートの魔石
MP20
合成しますか?
はい いいえ
サキは、はいを選択する。すると指輪と魔石が光り出してひとつになり、その光が消えるとひとつの指輪が現れた。
魔導士の指輪 MP自動回復 魔+5
「魔導士の指輪だって。はい」
「ありがと」
サキは凛子に魔導士の指輪を渡す。MP自動回復はMPが減ってる時、時間経過で徐々にMPが回復する効果だった。
「ほえー、新たな指輪を作り出すとは凄いのうー」
「でしょ。じゃあ、次は魔力の指輪二つでお願い」
「はいはい」
サキは同じように魔力の指輪二個を合成して、大魔力の指輪を作り出した。
大魔力の指輪 魔+10
「次は俺でいい?」
「いいよ」
「じゃあ、力の指輪二つと、速さの指輪二つでお願い」
サキは冬雅のリクエストどおりに合成し、怪力の指輪と疾風の指輪を作り出した。
怪力の指輪 力+10
疾風の指輪 速+10
「じゃあ、次は私ね」
サキは毒無効の指輪と麻痺無効の指輪を合成し、毒・麻痺無効の指輪を作り出した。
毒・麻痺無効の指輪 毒状態と麻痺状態を無効化
「そういえば力のベルトと魔力のイヤリングも合成できるの?」
「ちょっと待って」
サキは力のベルトと魔力のイヤリングの合成を試してみる。
「……駄目みたい。種類の違う装飾品は合成できないみたい」
「何でも合成できるわけじゃないのか。じゃあ、次は、今合成した魔導士の指輪と大魔力の指輪をお願い」
「わかった」
サキは大魔力の指輪と魔導士の指輪とBランクの魔石を目の前に置いて装飾品合成を発動する。すると、
「この合成には、Aランク以上の魔石がひとつ必要です」
とウィンドウに表示された。
「この合成にはAランクの魔石が必要みたい」
「ああ、合成済みの強い指輪の合成には、Aランクの魔石が必要なのか」
「Aランクの魔石はひとつしかないけど、やってみる?」
「やってみよう。Aランクの魔石はまた取ってくればいいし」
「わかった」
サキはBランクの魔石をどかしてAランクの魔石を置いて、また装飾品合成を発動する。すると、
大魔力の指輪 魔力+10
魔導士の指輪 MP自動回復 魔+5
オーガキングの魔石 攻+10%
MP40
合成しますか?
はい いいえ
と表示された。
「ん?」
次回 ワイバーンの巣 討伐作戦 に続く




