第四十七話 四人目の仲間
「ではこちらがモンスターの魔石、四十一個と、解体費用を引いた素材の代金21000ゴールドです」
冬雅は買取カウンターで受取証を渡し、三日前に解体依頼したモンスター素材の代金と魔石を受け取った。ちなみに大地の洞窟で入手した使わない装備品は武器屋に売却済みだったが、宝石類は現金化せず、凛子が魔法のかばんで預かっていた。
「あと、冒険者ギルドカードをお願いします。ランクアップポイントを付与しますので」
冬雅達はBランクの冒険者ギルドカードを受付嬢に渡す。
「ほほう。人の生活というのは面倒なことが多いのう」
凛子の肩に乗っているコロポックルが、これまでの冬雅達のやりとりを見てそう思う。そのコロポックルを受付嬢がじっと見ている。
「……」
「ええと、どうかしましたか?」
「いえ。肩にフェアリーを乗せてたり、人の言葉を話す動物と一緒にいる冒険者なら聞いたことがあるんですが、さすがに小さいおじいさんと一緒にいる冒険者は初めて見ました」
「ほえ? わしのことかの」
「は、はい」
「このおじいちゃんはコロポックルっていう妖精だよ」
「妖精ですか」
「そう。私達の立派な仲間だよ」
「うれしいことを言ってくれるのう。お嬢ちゃん」
凛子に仲間だと言われ、コロポックルが喜んでいる。
「あっ、ポイントの付与、急いでやっちゃいますね」
受付嬢は冬雅達の冒険者ギルドカードに今回のランクアップポイントを付与して彼等に返す。そして今回入手したゴールドは三等分し、魔石は冬雅が回収して買取カウンターを後にする。
「Aランクの魔石が一個とBランクが四十一個、これだけあれば装備品合成がいくらでもできるわ」
「魔力回復の指輪と魔力の指輪を合成して、最強の魔法使い用の指輪作ってよ!」
「そうね。どれとどれを合成するかも色々考えないとね」
サキと凛子が冒険者ギルドの一階でそんな話をしてると、二階に続く階段からベール騎士団長のリーナが降りてきた。
「あっ、あの人は!」
「エルフの強い人!」
「ん? お前達はあの時の……」
リーナも冬雅達に気づき、近づいてくる。
「ああ、冒険者ならここにいるのは当然か。確かトウガだったか」
「はい。リーナさんはどうしてここに?」
「三日後のワイバーンの巣の討伐についてギルマスと話してたんだ」
「ワイバーンの巣討伐?」
「そうだ。掲示板に貼ってあるはずだぞ。ここから北にあるベリル山にワイバーンの巣が発見されてな。この前のレッドワイバーンもそこから来たようだ。だから我等騎士団とBランク以上の冒険者で討伐することになったんだ」
「なるほど。確かに町の近くにワイバーンの巣があったら、この町が危険ですね」
「そういうことだ。ん? そういえば、お前達はBランク以上か?」
「一応、Bランクですが」
「おお! ならお前達も参加しないか? お前達が来てくれるなら頼もしい」
「ええと……」
冬雅はサキと凛子のほうを見る。
「どうする?」
「私に聞かれても」
「ふむ。乗り気ではないか。なら私から報酬を出そう。それも今すぐにだ」
「報酬ですか?」
「うむ。参加すればギルドからも報酬がでるが、それとは別に私からも前払いで報酬を出すということだ。お前達、もっと強い武器や防具が欲しくないか?」
「それは欲しいですけど、武器屋にはこれ以上のは売ってないですし」
「私がベールにある知り合いの武器屋に連れて行ってやろう。私のもそこで買ったんだ」
そう言ってリーナは持っている腰の豪華で美しい剣「精霊の剣」を触る。
「なるほど、それはいいですね。二人はどう?」
「強い装備が手に入るならいいんじゃない」
「私はどっちでもいいよ」
「では俺達も参加します」
「おお! 参加してくれるか! なら今から武器屋に行くか?」
「はい。お願いします」
冬雅達とリーナは冒険者ギルドを出て大通りを歩き、そこから細い道に入ってしばらく歩いていくと、人通りが少ない場所に建っている小規模な武器屋に到着する。
「ここだ。店主のドワーフは気難しい奴だが、腕は確かだ。では入ろう」
リーナに続いて冬雅達が武器屋に入る。すると中に展示されている強そうな武器や防具が目に入る。
「こ、これは」
「どうだ? ここにあるのは強力な武器や防具ばかりだ。すべてに軽量化と自動修復能力がついてるんだ。その分、値は張るが」
冬雅達は展示されている武器や防具の値札を見て驚く。
「た、確かに高いですね。でもいいものなら、それくらいの価値はあるかもしれません」
「ほう。わかるか。こいつらの価値が」
「何だ? 客か?」
冬雅達が話していると、店の奥から店主のエドワードが現れた。
「ん? リーナか。そっちは……」
「今度、私と一緒にワイバーン討伐に行く冒険者だ」
「ふむ……」
エドワードは冬雅達を観察するようにじっと見る。
「なるほど、こいつら普通じゃないな」
「エドもそう思う?」
「そりゃあ、肩に小さい爺さんを乗せてるんだ。普通じゃないだろ」
「ほっほっほっ、ここでもわしは人気のようじゃ」
コロポックルは凛子の肩の上で満足そうな顔をしている。
「ふむ。リーナが連れてきたのならいいだろ。好きなのを売ってやる。もちろん代金はもらうぞ」
「では見させてもらいます」
冬雅は剣、サキは鎧、凛子は杖が展示されている場所へ行く。リーナは冬雅と一緒に剣を見ている。
「予算はどれくらいある?」
「10000ゴールドくらいならなんとか」
「なら……これあたりか」
リーナは展示されている緑の宝玉が柄の部分に付いている剣を指さす。
「風魔の剣……丁度、10000ゴールドですね」
「これは風魔法が付与されていて、魔法が使えない剣士でも風のやいばを発生させて遠距離攻撃ができるようになるんだ」
「なるほど。確かに強そうです」
「そうだろう。エドの魔法付与技術はこの国でもトップレベルだからな」
「では俺はこれにします」
冬雅は風魔の剣をエドワードがいるカウンターへ持っていき、代金を払って入手した。
風魔の剣 攻+65 風魔法付与
さらにサキは銀色の美しい鎧、ヴァルキリーの鎧とヴァルキリーの盾を10000ゴールドで買い、凛子は七色に光る宝玉が付いている精霊の杖を8000ゴールドで買った。
ヴァルキリーの鎧 防+50 攻+10
ヴァルキリーの盾 防+30 魔法耐性30%
精霊の杖 攻+30 魔+30 魔法強化20%
「精霊の杖があれば、火炎の杖と雷撃の杖はいらないよね」
「うん。完全に上位互換だからね」
「じゃあ、売っちゃおう」
「なら俺も……」
「うちは買取はしてないぞ。売るならほかの店にしとけ」
「は、はい」
冬雅は自分のミスリルの剣をアイテムボックスから取り出そうとしていたのを止める。
「私もブラックメタルシリーズ、売っちゃおうかな。でも私が名前をつけた鎧だから、愛着が……」
「鎧は重いから、二つも魔法のかばんに入る?」
「ぐぐっ、確かに……じゃあ、売るしかないか。上泉君。売るまで預かってくれる?」
「わかった」
サキは魔法のかばんからブラックメタルシリーズを取り出し、冬雅はそれらをアイテムボックスに収納する。そしてサキはヴァルキリーシリーズを自分の魔法のかばんに収納する。
「さて、装備はどうなったかな」
冬雅はステータスボードを表示して装備欄を見る。
風魔の剣 攻+65 風魔法付与
ミスリルの胸当て 防+35 魔法耐性20%
力のベルト 攻+7
力の指輪 攻+5
速さの指輪 速+5
「おお! さすがに高いだけあって強い……ん?」
冬雅はステータスボードの仲間欄が目に入る。
仲間
宮本サキ レベル32 姫騎士
佐々木凛子 レベル32 召喚士
コロポックル レベル14 妖精
次回 新たな装飾品合成 に続く




