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異世界でゲームのシステムで最強を目指す  作者: 霧野夜星


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第三十五話 火を吐く飛竜

「あれは、ただのワイバーンじゃない! レッドワイバーンだ!」

「うわわわわわ!」

「逃げろーーーーー!」


 レッドワイバーンが出現したという兵士の言葉を聞いた町の人達が、町の中心部の方へ逃げ始める。


「レッドワイバーンって?」

「ちょっと待って。確か……」


 冬雅はアイテムボックスからモンスター図鑑を取り出して開く。


「ああ、これだ。レッドワイバーンは火を吐く赤い飛竜で、Aランクモンスターだって」


 冬雅が開いたページをサキと凛子も見る。レッドワイバーンはワイバーンの上位種で、体長が十五メートル以上あり、全身が赤色の硬い鱗で覆われていて、鋭い爪と牙を持ち両手が翼になっている飛竜である。ちなみに普通のワイバーンは緑色の鱗で、火を吐かないBランクモンスターだった。


「上泉君、私達も逃げる?」

「いや、将来、戦うかもしれないし、離れた場所で兵士達がどう戦うか見ておこう」

「一応、戦う準備もしておく?」

「うん。そうしよう」


 冬雅達はアイテムボックスや魔法のかばんから武具を取り出して装備しながら話す。


「もし私達がここで戦う時は、全力で戦ってもいいんだよね」

「うん。人前でも全力で大丈夫」

「まあ、サソリと戦った時も全力だったけどね」

「あれはもうメイル国が目前だったからセーフでしょ」

「撃てーーーっ!」


 戦いが始まり、辺境の町ベールの高い城壁の上にいる三十人くらいの弓兵達が、接近してきたレッドワイバーンを狙って弓矢で攻撃する。


「ブファアアアアアアア!」


 それに対しレッドワイバーンは口から火のブレスを吐き出し、放たれた矢を燃やして落下させる。さらに広範囲に放たれた火のブレスが、城壁の上の兵士達にも降り注ぐ。


「うわわわわわわ!」

「魔法障壁だ!」


 兵士達が自分達の前に壁状の魔法障壁を展開し、迫ってきた火のブレスをギリギリで防いだ。


「ギャオオオンンン!」


 レッドワイバーンは咆哮をあげながら、城壁の上空を飛び回る。


「魔法兵! 放てーーー!」

「サンダーボルト!」


 続いて十人いた魔法使いの兵士が一斉に雷系下級魔法を放ち、その雷魔法の半分程度が空を飛んでいるレッドワイバーンに命中する。


「ガアアアアアア!」


 その雷魔法によってレッドワイバーンは全身が感電し軽微なダメージを受けた。


「サイクロン!」


 そこへ城壁の上に登ってきたばかりの白色の美しい鎧を身に着けた金髪の女性が、風のやいばが乱れ舞う巨大な竜巻を放つ。その風系上級魔法がレッドワイバーンの全身を飲み込む。


「シャギャアアアアアアアアア!」


 その風魔法で翼が傷ついたレッドワイバーンは、空中でバランスを崩して落下していき、冬雅達がいる辺境の町ベールの西門前の広場に着地した。


「しまった! 町の中へ落ちてしまった!」


 その様子を見た風魔法を放った女性や周囲にいた兵士達が、急いで城壁の上から階段で降りていく。


「ギギャアアアアア!」


 広場に着地したレッドワイバーンは、周囲にいる者にプレッシャーを与える怒りの咆哮をあげる。


「か、上泉君!」

「俺達がやるしかない!」


 冬雅は魔鋼の剣を構え、サキはブラックメタルシールドを構える。今の彼女は時間がなかったので、ブラックメタルアーマーの胸部分だけを装備していた。


「加速!」

「堅牢!」

「魔力高揚!」


 冬雅達はまず能力強化スキルを発動する。


「さらに魔力チャー……」

「ちょっと待って!」


 いつものように凛子が魔力チャージを使おうとするのを冬雅が止める。


「ん? 何?」

「佐々木さんは、いつでも魔法障壁を展開できるように準備してて。それで奴が大きく息を吸ったら俺達の前に展開して欲しいんだ」

「ああ、あの火の対策か。わかった」


 魔力チャージ中は、次に発動する魔法以外の行動がすぐに取れないので、冬雅は魔法障壁を優先するように凛子に指示する。するとさっそく、レッドワイバーンが大きく息を吸い込む。


「佐々木さん!」

「魔法障壁!」


 凛子は、冬雅とサキの前に壁状の魔法障壁を展開する。


「ブファアアアアアアア!」


 そこへレッドワイバーンが、大きく開いた口から火のブレスを広範囲に吐き出した。それを凛子の魔法障壁が完全に防ぐ。


「よし! じゃあ、突撃!」

「わかった!」


 凛子は魔法障壁を解除し、その後すぐ、冬雅とサキがレッドワイバーンに向かって突撃する。冬雅はサキと連携するため、彼女と同じ速さで走っていく。


「グオオオオオオ!」


 するとレッドワイバーンは傷ついた翼を広げて少しだけ飛び上がり、体重を乗せた左足の鋭い爪を突き出して二人に襲い掛かる。


(これはヤバい気がする)

「癒しの盾!」


 冬雅の前に出たサキは、癒しの盾のスキルを発動してブラックメタルシールドでその攻撃を受け止める。


「ぐっっ!」


 その左足の爪攻撃によって、サキは全身に衝撃を受けてダメージを受けた。だが癒しの盾のスキルの効果で、そのダメージが瞬時に回復する。


「竜牙一閃!」


 その隙に冬雅は素早くレッドワイバーンの右側に移動し、赤いうろこで覆われた太い右足を狙って、白い破壊のオーラをまとわせた魔鋼の剣を振るう。


「ギギャアアア!」

「オーラブレード!」


 右足が赤いうろこごと斬られ、レッドワイバーンが痛みで叫び声をあげる。その隙にサキがレッドワイバーンの左側に移動し、太い左足を魔力をまとわせたブラックメタルソードで切りつける。


「ガアアアア!」


 両足を斬られたレッドワイバーンは、元々風魔法で翼にダメージを受けていて、さらに両足を斬られたので、その場で動けなくなった。


「いくよ!」


 それを見て凛子が雷撃の杖を掲げながらそう叫び、冬雅とサキは急いでレッドワイバーンから離れる。


「ライトニングレイン!×2」


 凛子はダブルマジックの効果で雷系中級魔法を二つ同時に発動し、今までの倍の数の魔法陣が上空に現れ、そこから電撃が放たれて、それらがすべてレッドワイバーンに命中する。


「ガガガガガガ!」


 魔力チャージは使ってなかったが、二倍の威力になったライトニングレインによってレッドワイバーンは大ダメージを受ける。だがそれはまだ倒せるほどのダメージではなかった。


「グオオオオオオオ!」

「まだ倒せないの!?」

「竜牙一閃!」


 冬雅は電撃を受けた直後のレッドワイバーンの首を狙って、破壊のオーラの斬撃を放つ。その高速、高威力の斬撃が、レッドワイバーンの首を斬り落とした。その後、力を失ったレッドワイバーンの巨体が地面に倒れる。そして冬雅達の頭の中にレベルアップ音が鳴り響く。


「た、倒せた」

「ふー、なんとかなった」

「あの火のブレスは凄かった」


 冬雅達がレッドワイバーンに勝利し、三人が合流する。そこへ、


「君達!」


 白色の美しい鎧を身に着けた若い金髪の女性が、冬雅達がいる場所に走ってきて声をかける。


「な、何でしょうか?」

(あっ、あのとがった耳は……)


 冬雅はその女性の耳が長いことに気づく。


(エルフだ! す、凄い美人……)

「君達の活躍は見ていたよ。君達のおかげで町の中の被害が最小限で済んだ。ありがとう」

「いえ。俺達は自分たちの身を守るために戦っただけです」

「私はこの町を守るベール騎士団の団長、リーナだ。君達は冒険者か?」



 次回 騎士団長リーナ に続く

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