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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第二章 出られないけどほのぼの生活
29/79

027 フレンド登録

「うっし! ここでウジウジしてても仕方が無いね! とりあえず私の住んでいる家を紹介するから行こう、ハル君!」


「あ……はい!」


 少し暗い雰囲気になってしまった私達は気分を変える為に外に出る準備をする。

 お腹いっぱいご飯もご馳走になったし、色々とお話も出来たし。

 きっと、どうにかなるだろう。


「……あれ? マナさん。なんだか外が騒がしくないですか?」


「え? あー、ホントだ。人の声が……」


 恐る恐る扉を開ける私達。

 そこには先程までフリーズしていたNPC達が――。


「……なんか、フリーズ解けたっぽいね……」


「はい……。でもどうしてでしょうね……。相変わらずログアウトボタンは消失したままですけど……」


 ウインドウを開き確認するハル君。

 確かにログアウトボタンは元々あった場所から消失している。

 うーん。

 一部だけ不具合が解消されたんかな……。


『ああああ! いやがった! おいこらオカマ野郎! てめぇどこに行ってやがった!!』


 街の奥から猛スピードで走って来るヅラのおっさんが見える。

 否、ヅライムが見える。

 ていうか速く走れるんかい。

 足、無いのに。


「マナさん……あれって……」


「……うん。あれが例の……」


 あまりハル君に紹介したくないけど、しない訳にはいかない。

 だって一応、私のパートナーだから。

 このヅラ。


 猛スピードで走ってきたヅラっちは私達の目前で急ブレーキをして立ち止まる。

 なんて器用なヅラなんだろう。

 見世物小屋とかで高く買い取って貰えないだろうか。


『ぜえ、ぜえ、ぜえ……! おめぇ急に居なくなんなよ! 俺ぁてっきり隠れんぼかなんかが始まったのかと思ってきゃっきゃうふふしながら物置に隠れちまったじゃねぇかよ!』


 顔を真っ赤させながら怒鳴るヅラっち。

 確かにそれは恥ずかしい。


『そしたらよ! しばらくしたら玄関の方から人の気配がしたからよ! 寂しくなってきちゃった俺はお前を驚かそうと勢い良く物置から飛び出した訳さ! そしたら何だよ! おめぇじゃなくてイケメンの兄ちゃんじゃねぇかよ!』


 尚もヅラっちの長い説明は続く。

 それはきっとクロアだな。

 もしかしたら異変に気付いて私の家に訪ねてきたのかも知れない。

 後でちょっくらクロアのお屋敷にも顔を出してみようか。


『そしたらよ! その兄ちゃん、何を思ったかいきなり刀を抜きやがってよ! 『しゃきーん!』じゃねぇよ! 危うく真っ二つになるとこだったよ! だが俺は素敵ステップで華麗にその攻撃をかわしてだな!』


 長い。

 いつまで続くんだ、この話……。

 ていうか物置からモンスター飛び出してきたら斬るだろう、普通。

 私だってそうすると思う。


『そしたらよ! その兄ちゃんの顔が豹変してよ! なんか嬉しそうに『ニヤリ……』とかなってよ! これはヤベェと思って急いで逃げて来たんだよ! ←今ここ』


「あー。だからそんなに必死で走って来たんだー。おつかれー」


『もっと俺に愛情を持って!! コメント少な過ぎる!!』


 ヅラをブンブンと回しながら未だに興奮が覚めやらない様子のヅラっち。

 そんなもの振り回すんじゃない。


「あの……」


「あ、ごめんねハル君。紹介したくないけど紹介するね。このヅラはヅラっち」


『そっちが本体じゃねぇよ! ていうかヅラって言うんじゃねぇ! 誰がヅラだよ!』


 振り回していたヅラを定位置に戻したヅラっち。

 もうどっちがどっちでも良いと思うんだけど。


「は、初めまして……。ハルと言います……」


 おずおずと恥ずかしそうに自己紹介をするハル君。

 今すぐ抱きしめても良いでしょうか。


『……』


 今まで散々騒いでいたヅラっちがハル君を見た途端、急に静かになる。

 というか、私の後ろに隠れていたから、今まで全く目視していなかったんだろうけど。


「あ、あの……」


 何も答えないヅラっちに戸惑いを隠せないハル君。

 おい、そこのヅラ。

 何か言いなさいよ。

 ハル君、困っているでしょうが。


『……結婚、しよう……』


「へ?」


『俺と、将来を誓い合う仲になってくいでででで!』


 いきなりハル君に告白をかましたヅラっち。

 私は無言で奴のヅラを思いっきり引っ張る。


『あにすんだよオカマ! ゴムが伸びるからやめろっつってんだろ! 痛い! 首が苦しい!』


「いきなり初対面で告白するアホが悪いんでしょう。ごめんね、ハル君。こいつ、馬鹿だから許してね」


「は、はぁ……」


『馬鹿とはなんだ馬鹿とは! こんなゴスロリ美少女に出逢っちまったら告白しない方が罪だろうが! 俺は悪くない! だからやめて! ゴム伸びるから! ヅラ返して!』


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながらヅラを奪い返そうとするズラっち。

 同じタイミングでジャンプをして取られまいとする私。

 その姿を見て遂に笑い出してしまうハル君。


「……可愛い……」

『……可愛い……』


 ヅラっちと声が重なってしまう。


「真似すんじゃないわよ!」

『真似すんじゃねぇよ!』


 またもや重なってしまう。

 すごく、嫌だ……。

 これ以上恥ずかしいことは無い……。


「と、とりあえず、どうしましょうか……。皆のフリーズが解けたのだったら、ボクもミラさんとルーイさんの無事を確認して来たいのですけど……」


 おずおずと片手を挙げそう言うハル君。

 確かにそうだ。

 今はまず、それぞれ知り合った友人が無事なのかを確かめなきゃ。


「うん。私も一旦家に帰って、クロアのお屋敷と……あとは先生の所とゼガルおじさんの所にも行ってみる。そしたらハル君に連絡するね。メアド教えてくれる?」


 私はウインドウを開きアドレス帳を起動する。

 離れたログインユーザーに連絡するにはメールを使わないと面倒だ。


「あ、はい。ボクのアドレスは……」


 お互いにメアドを交換する。

 これですぐにハル君と連絡がつく。

 私の初めてのログインプレイヤーのメールアドレス。

 それと、肝心なことをもう1つ。


「ねえ、ハル君。私と『フレンド』になってくれない?」


「『フレンド』……?」


 私は頷き、別のウインドウを出現させる。

 そこには【フレンド 0人】という表記が。


「うん。フレンド登録をしておけば、アイテムや武器のトレードが無料で出来るし、共有のアイテム倉庫も使えるようになるんだよ。それに、やっぱ『友達』って嬉しいじゃん」


「友達……」


 ハル君の目が少しだけ輝いた気がする。

 そして彼も私と同じく【フレンド】の項目をウインドウから出現させる。


「あとはお互いに右手を突き出して、手のひらを合わせて……」


「こ、こうですか……?」


 私の手とハル君の手が重なり合う。

 そして空いた手でお互いに【フレンド登録】のボタンをタップする。


 私達を淡い光が包み込む。

 これで【フレンド】は完了。

 私のウインドウに出現されている文字も【フレンド 1人】と変化した。


「これでフレンド登録は終了ね。これからも宜しく、ハル君」


「は、はい!」


 お互いに満面の笑みを浮かべ、私はヅラっちを連れ一旦家に戻ることにした。


 今日は色々あったけど、ハル君と出逢えたんだし悪いことばかりではない。

 1年間もログアウトができないかもしれないのは確かに不安だけれど。

 それでも私は、この世界を楽しみたい――。


 

 この《TSO》の世界を、私は――。


















USER NAME/佐塚真奈美さづかまなみ

LOGIN NAME/マナ

SEX/男?

PARTNER/ヅラっち(凍結解除)

LOGIN TIME/0044:54:04

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