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Trans Sexual Online~のんびりほのぼのTS生活~  作者: an℟anju
第一章 ログイン開始
22/79

020 衣装選び


「え、衣装?」


「はい。お店で着る制服みたいなのって、どこで買えますか?」


 持ってきたゼリーを食べ終えた頃、僕はミラさんに訊いた。

 ミラさんは顎に手を添え、眉間に皺を寄せて「うーん」と小さく唸るような声を出した。


 どうしたんだろ。

 何か問題でもあったのかな。

 それとも僕、何かいけないことでも言った?


「一応、このガイアに洋裁店があるのよ」


「本当ですか?」


「ええ。この街で服を買うなら、あそこしかないんだけど……まぁ、大丈夫かしらね。ハルちゃん、女の子だし」


「?」


 中身は男の子なんですけどね。

 まぁ、そんなことNPCである彼女に言っても意味がない。

 お店まで案内してくれるというミラさんの後に続き、僕らはその洋裁店へと足を運ぶことになった。




 

 ミラさんのお店から歩いて数分。

 『メリル洋裁店』と看板に書かれたお店の前に着いた。


 メリル洋裁店。

 ってことは、ここの店主の名前がメリルさんってことなのかな。

 それとも、メリルってこの世界の言葉だったりするのかな。

 

 どんな人なんだろう。

 この街の人と知り合うのは、四人目になる。

 シグさんもミラさんもレイくんも優しい人だったし、きっと大丈夫だろう。


 さっきからミラさんが嫌そうな顔してるのがちょっと気になるところなんですけど……。


「メリル、いるー?」


 ミラさんがドアを開け、店内に向かって声を掛けた。

 なんかドキドキしてきた……。

 僕、変なところないよね。大丈夫かな……。

 

 軽く身だしなみを整えていると、店の奥から誰かが顔を出した。


「あらあら、ミラじゃない。珍しいわね、何かあったの?」


「ええ、まぁね」


 み、みみみみ……耳?! 耳が尖ってる!

 何だっけ、何て言うんだっけ!?

 なんかの洋画でこんな耳してる人見たことある!


 この人がメリルさんなのか。

 可愛らしい人だ。

 その尖った耳に白を基調とした衣装。

 ミラさんと同じくらい、清楚なイメージを抱く人だな。


「メリル。この子、ハルちゃんって言うんだけど……今日はこの子の服を見てもらいたいのよ」


「あらまぁ、可愛い子ね。はじめまして」


「は、はじめまして。ハルです」


「メリルはこの店の店主で、見ての通りエルフ族よ」


 あ、そうだ。エルフだエルフ。

 ファンタジー系の映画やアニメによく出てくるキャラだ。

 すげぇ……。こういう異種族とかにも出会えちゃうんだ。


「それで、どんな衣装をご所望なのかしら」


「あ、あの。僕、今度自分のお店を開くんですけど、その制服を……」


「ふーん……。そうなの」


 え? 何……?

 なんか、メリルさんが僕のことジーッと見てくるんだけど。上から下まで隈なく。

 あれかな。僕に似合う服を考えてくれてるのかな。

 そんなにジロジロ見られるとドキドキするんですけど。


「貴女……女の子よね?」


「え、ええっと」


「なんだろう。仕草とか話し方、なのかな。男の子っぽいわね」


「そ、そうですか!?」


 スゴイ観察力だ。

 そりゃ中身が男だから、完璧な女の人から見たらどこか違和感があるのかもしれない。

 もっと女の子らしく振る舞うべきなのかな。

 でも、私とか言うのは恥ずかしい。

 だって中身は生まれたときから男だもん。


「まぁいいわ。そうね、どんな衣装がいいかしら」


 メリルさんはニコッと笑い、僕の衣装を選んでくれる。


 それにしても、色んな衣装があるんだな。

 これ、全部メリルさんの手作りなのかな。


「ねぇ、ミラ。今日レイくんは?」


「店番よ」


「あら。またいつでも遊びに来てねって言っておいてね」


「嫌よ。また弟をお人形さんにされたら困るもの」


 お、お人形……?

 一体何をされたんだ……?

 もしかして、魔法?

 この人、そういう魔法を使うのか?

 それでレイくん、人形にされちゃったとか!?


 この人、怖い人なんじゃ……?


「あら、いいじゃない。だってレイくん、綺麗な顔してるんですもの。ウィッグ被ってスカートとか着せたら女の子みたいじゃない?」


「あのねぇ……その変な癖やめなさいよ。ちょっと自分好みの子を見つけると直ぐに暴走するんだから」


「だってぇー、可愛い子には可愛い服を着せたいじゃない。あ、ミラにはこの服とかどう?」


「イヤよ、そんな胸元の開いた服!」


 ……。

 えっと、人形ってそういうことか。

 そうか、メリルさんはそういう人なのか。

 ちょっと安心した。

 ミラさんが嫌そうな顔したのは、それでだったんだな。


「ねぇ、ハルちゃん。このメイド服とかどう?」


「え、これ!? スカートの丈、短すぎませんか?」


「あらぁ、これくらいがいいんじゃない! ハルちゃんみたいに小さくて可愛い子によく似合うと思うわ! ね、こっちも着てみせて!」


「え、ちょっ!?」


 あれやこれやとメリルさんは色んな服を選んでは僕に着せようとしてくる。

 なんか店の制服とは関係ないものまで着せようとしてるのは僕の気のせいなのかな!?


「ハルちゃんって、なんだか男の娘みたいね! なんだか楽しくなってきたわ」


 え?

 まぁ、確かに僕は男の子ですけど?


 

 ――それから何時間が経っただろうか。


 

 一着の服を選ぶのにこんなに時間が掛かるなんて、思いもしなかった……。


















USER NAME/片岡春臣かたおかはるおみ

LOGIN NAME/ハル

SEX/女?

LOGIN TIME/0030:42:48

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