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異世界白刃録 ~転生先で至高の斬撃を目指す~  作者: U字
第十章 Bランク昇格試験
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第四話 ~路地裏会議~

 マトイ・ヤクサに連れられて街中を歩いていると、すぐに異変に気付いた。


「人の気配が、このあたりだけ急に消えたな。これが、帝都を一時的にも沈黙させた天剣とやらの力か?」

「ノーコメントで」


 マトイがにこやかに答えると同時に足を止め、正面を見れば、路地裏に一人たたずむ少女の姿。


「サラ、ご苦労様です」

「はい、ありがとうございます」


 サラと呼ばれた少女は、マトイの言葉にこたえつつも、表情一つ動かさずに僕をにらみ続けている。

 その小柄な体には似合わぬ紫色の淡い光を発する大剣を持つ少女は、記憶違いがなければ、帝都襲撃の夜にデリグに抱えられて現れ、帝都を沈黙させた主犯の天剣使いだとして追われていた少女だ。


「それじゃあ状況も切羽詰まっていますし、話を進めましょうか」


 マトイの言葉に、無言で続きを促す。

 言っていることは、正論だ。何より、突っ込んだくらいでボロを出すとも思えないし。


「じゃあまずは、『神の奇跡の残骸』についてですね。『世界を滅ぼす災厄』『最悪最強の兵器』もしくは『救いをもたらす希望』。歴史や伝説の中で、そのようにさまざまに語られているようです。考古学者や歴史学者の一部には、よく知られたおとぎ話ですね」

「随分と詳しいんだな。考古学か歴史学でもかじってるのか?」

「まさか。国がこそこそと研究者たちを動員して最優先で調べさせているらしいと聞きましてね。そこのサラと観光がてら『神の奇跡の残骸』の封印とやらの現物を見に来てみれば、この町から出るに出られなくなったんですよ。何かの足しになるかも、くらいの軽い気持ちでふらふらしても、ろくなことにはなりませんねぇ」


 さらっと言ってるが、こそこそなんてかわいらしいものではなく、『神の奇跡の残骸』についての研究・対策は極秘にやってるはずだ。

 暴力的にやりあう気満々の反体制派のマトイがそんな情報もぶっこ抜けるとなると、本格的にこの国は危ないんじゃなかろうか……。

 まあ、僕が直接どうこうすることでもないし、お偉いさんたちに頑張ってもらうしかないんだけどな。


 それより、ここではっきりさせとかないと怖いことがある。


「出ていけないってのは、魔物が大量に沸いてるからか? だったら、そっちのサラってのが持ってる天剣を使えよ。帝都中を種族問わずに短時間とはいえ沈黙させられたなら、今回もそれで退路くらいは作れるだろ」


 僕の疑問に、答えはない。

 すると笑顔のまま固まっていたマトイは、僕ではなくサラに向かって話しかける。


「良いですか?」

「良いも何も、マトイ様が必要だと思われたなら、それに従うだけです」


 その答えに少し疲れが混じったようなため息を一つ入れ、マトイは今度こそ僕へと話しかけてきた。


「ここらの魔物は、どいつもこいつもおかしいんですよ。何かに強烈な支配をすでに受けていて、外からの干渉を受け入れない。だから、普通に倒していくしかないんですけどね。数が多すぎてどうにも。少数での突破をするなら、あなたのところの魔女のド派手な一撃を乱射できるなら希望があるかも、ってところだと思いますよ」


 ルーテリッツさんの精霊砲については新聞にも載ったくらいだし、知られていても今更だ。

 ここでの問題は、本当に天剣とやらは使えないのか。


 マトイの話に、心当たりはある。

 ルーテリッツさんの初陣の際、ルーテリッツさんは魔物たちと感応し、異常な殺意に飲まれて動けなくなったのだ。

 その不自然な現象も『神の奇跡の残骸』による何らかの洗脳だと考えれば、つじつまが合う。

 しかし、天剣とやらはヤバいらしい以外のことを知らないし、本当に使えないとしてもここ一番で背中を斬られるとか、向こうの目的のために使いつぶされるとか、考えられる可能性は色々とある。

 だが――


「……分かった。つまりは一時的にこっちと手を組んでくれるんだろう? 信じるよ」

「ありがたい! こっちは、正規の身分証明のできるものを持ってないですからね。旅の武芸者って名乗るので、有名人なあなたが身分を保証して私たちを冒険者たち中心の戦線にうまく組み込んでください」


 信じたというのは正確ではない。

 生き残りたければ信じるしかない――それが、僕のここまでの体験から導き出した現時点での現状認識だった。





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