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ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第六章 運営からの直接依頼
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(7)蘇生薬と時空間石

本編終了まであと3話(予定/本話含む)です。

 全体イベントが終わってから一カ月は、何事もなく日常を過ごしていた。

 その間も、パティの店に卸す定番商品を作ったり、<携帯拠点>の作成をしたりしている。

 ノームから依頼のあった<時空間石>は、まだ成功といえるところまでは行っていない。

 色々工夫を凝らしたりしているが、どうにも手ごたえがないため、もしかしたらスキルレベルか職業レベルが足りないのではと疑っている。

 そのためこの一カ月は、新しくアイテムを作ることよりもレベルを上げることに専念していた。

 その甲斐あってか、以前から作成を試みていたとあるアイテムの作成に成功した。

 そして、ハジメはそのアイテムを持ってパティの店を訪ねていた。

 

「なんや、ハジメ。随分とテンション高いなあ」

 顔を合わせるなりそんなことを言い出したパティに、ハジメは虚を突かれたような顔になり、思わず頬を右手で触れた。

「そうか? そんなつもりはなかったんだがな」

「いんや。大方、新しいアイテム作るのに成功したとかやろ? さっさと出そうな」

「分かったよ。・・・・・・全く」

 ハジメはそう言いながら、視線を一緒に付いてきていたイリスへと向けた。

 アイテム自体は、イリスに預けているのだ。

 ちなみに、この時イリスとシエラが意味ありげに視線を交わし合っていたが、パティとハジメの二人はそれに気が付いていない。

 それは、一目見るなりハジメのテンションを見抜いたパティの察しの良さに思わず確認を取ったものだが、イリスもシエラも気づいていなかった。

 なぜパティがハジメのテンションに気が付いたかは、本人のみぞ知ることである。

 

 ハジメが拠点の店を訪ねて来た時にはパティは、ちょうど倉庫で在庫整理をしていた。

 倉庫にいるのはギルドに所属している者たちだけなので、ハジメは周囲の視線を気にすることなく、<蘇生薬>をパティに渡した。

 パティは、それを確認するなりすぐさま顔色を変えた。

「ちょお! そ、蘇生薬って!?」

「そのままの名前の通りだな」

 パティの驚く声に、彼女と同じように在庫整理していたプレイヤーやサポートキャラが集まって来た。

「どしたの、ギルマス」

「うわっ! なにこれ?!」

「本物かよ、蘇生薬!?」

 倉庫整理をしている者たちは、全員が<鑑定>のスキルを持っている。

 そのため、パティが持っているアイテムが何であるか、すぐに気付いたようだった。

 口々に驚きの声を上げると同時に、ハジメへと視線を向けた。

 そして、ハジメの姿を見ると、全員が納得したような顔になった。

「なんだ、ハジメが元凶か」

「そういうことね」

「なっとくー」

 そう言って一斉に首を縦に振るのを見たハジメが、顔をしかめた。

「待てお前ら。その反応はなんだ?」

「「「だって、ハジメだし」」」

 声を揃えてそう言ったプレイヤーたちに、ハジメはわざとらしく腕を組んで睨み付けた。

「ほう、なるほど。ということは、蘇生薬は要らないってことだな?」

「「「すみません。いります」」」

 ハジメが顰めつらのままそういうと、集まった者たちは頭を下げて、視線をパティへと向けた。

 ここでハジメの気分を害して、<蘇生薬>を卸してもらえなくなっては、他の戦闘組から何をされるか分からない。

 

 彼らの様子を見てため息を吐いたパティは、ハジメを見て言った。

「それで? 効果はどんなもんや?」

「・・・・・・ああ。実はよくわかっていない」

 そのハジメの答えに、パティはずっこけた。

「なんや、それ!?」

「仕方ないだろう? いくら死に戻りがあるとはいえ、実際に効果を試すわけにはいかないんだから」

 当たり前といえば当たり前の答えに、パティも納得したような表情になる。

 幾らなんでもアイテムの効果を試すのに、わざわざモンスターに倒されに行くのはぞっとしない。

「それは・・・・・・確かにそうやねえ」

「なので、戦闘組に頑張ってもらおうかと思ってな」

「それはいいんやけれど、うちのメンバーも死に戻りは少ないと思うで?」

「それは仕方ないだろう?」

 アイテムの効果を確かめるためにわざわざやられてくれとは言えない。

 ハジメのその言葉に難しい顔になったパティだったが、なにかを振り切るように首を左右に振った。

「・・・・・・ハジメとしては不満やろうけど、効果の調査はせずに、このまま売りに出そうと思う」

「いや、別に不満というほどでもないんだけれどな。むしろいいのか?」

 店に出す商品の効果をきちんと確かめられてないのは、むしろパティの方に不満があるのではないかとハジメは聞き返した。

「この場合は仕方ないわ。物が物だけに、多少割高でも文句は来ないやろ」

 勿論パティとしてもむやみに高い値段を設定するつもりはない。

 ただ、実際に使ってみて思ってたのと違うという事は、往々にしてあり得る。

「実際に売りに出すのはパティだから、原価さえ割らなければ文句は言わないが、余り無茶な設定はするなよ?」

「当然や」

 ハジメの言葉に、商人としてのプライドをのぞかせて、パティは大きく頷くのであった。

 

 事前に効果が確認できないのは仕方ないとして、<蘇生薬>はすぐに店舗に並べられることになった。

 パティも<鑑定>のスキルはあるし、購入する側も同じだ。

 効果はともかく、偽物ではないことは分かる。

 店舗に出された<蘇生薬>は、すぐに売り切れる事態となった。

 すぐに必要となるわけではないが、あると便利なのは間違いない。

 いくら死に戻りがある世界とはいえ、仲間が倒れてしばらくすると消えるのを見送るのは、何とも言えない感情を持ってしまう。

 そんなわけで、<蘇生薬>を使ってその場で回復できるというのは、戦闘組にとってはありがたいアイテムなのである。

 そして、<蘇生薬>が売りに出されたことによって、主に掲示板でその効果も分かって来た。

 結局、効果に関しては、ハジメやパティが当初予想したものと大きく外れることは無く、値段も適正とされていた。

 掲示板でそれを見たハジメとパティは、ホッと胸を撫でおろすことになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 <蘇生薬>が登場してから初めての全体イベントでは、大いに活躍したようだった。

 おかげであっという間に在庫が無くなってしまい、裏ではパティが「命を大事にせなあかん!」といっていた。

 気持ちは分からなくはないハジメだったが、そもそも全体イベントでは一度倒されて拠点に戻ると、交流の街に入れなくなる。

 <蘇生薬>があれば、その分イベントに関われるので、戦闘組として使うのは当然の判断だ。

 ハジメにとっては、通常の回復薬は長期保存ができるようになったため、今までのように慌てて当日に大量に作る必要が無くなった分、<蘇生薬>の作成が増えたイベントになった。

 もっとも、今まで作っていた<回復薬>を作るよりも、<蘇生薬>を作っている方がスキルレベルが上がりやすく感じたため、そちらの方がハジメにとってはありがたかった。

 材料がある分だけ<蘇生薬>を作って、残りの時間はいつも通り消耗品を作って全体イベントを終えた。

 今回のイベントは、前回のイベントとほとんど内容は変わらなかった。

 レイドボスを倒せなかったのは相変わらずで、掲示板では実は倒せないのではないかという話も出ている。

 真偽のほどは分からないが、どちらにせよ今回のイベントも勝利で終わった。

 今回の報酬は、交流の街の西側の解放だった。

 西側のフィールドは、平地が広がっているフィールドになっており、また新しい素材が取れることが期待されている。

 こうして、プレイヤーたちの期待と共に西地区が解放されて、今回の全体イベントは終了となったのである。

 

 全体イベントが終わったあとは、ギルドの店に卸す商品の作成の合間を縫って、ノームから依頼のあったアイテムの作成を行う。

 新しい手順やより細かい手順があるために、中々上手くいかないが、それでも諦めずに研究を続けた。

 元になるアイテムの数が少ないため練習中は、別の素材を使って似たような工程作業を行うのだ。

 それで上手くいったかいかないかを判断して、上手くいった場合はさらに習熟度を上げていく。

 それを繰り返して、最後に本番のアイテムを作るということになる。

 人によっては面倒すぎてイライラしそうな作業だが、そもそもこうした繰り返し作業が出来なければ生産職で身を立てることなど不可能なのである。

 そういった地道な作業を繰り返しながら、ハジメは全体イベントから一カ月後にノーム依頼のアイテムを完成させることが出来たのであった。

 

 ハジメは完成したアイテムを持って、エイヤと一緒にノームの里を訪ねた。

 ノームとの交渉は、相変わらずエイヤを挟んで行わなければならないが、こればかりはどうしようもない。

 そもそも精霊族と会話するには特殊な能力が必要で、さらにエイヤが与えられた秘薬はエルフ族でないと効かないものだ。

 以前に秘薬を改良できないかと作り方を教えてもらったが、話を聞いた段階で諦めていた。

 その秘薬を作る過程で、精霊だからこそできる技というのが使われているのだ。

 故にハジメは、秘薬の作成を諦めた、というわけだった。

 

 ハジメの作ったアイテムを見たノームの長は、最初に大きな驚きを示して、更に非常に感謝された。

 ハジメからアイテムを貰った長は、大急ぎで何人かのノームを集めて、彼らと共にとある場所へとハジメを案内した。

 その場所についたハジメとエイヤは、思わず感嘆の声を上げた。

「これは・・・・・・凄いな」

「そうね」

 ちょっとした広めの空間に、色とりどりの小さな光が飛び交っている。

 それはたくさんの蛍が飛び回っているような光景だったが、多くの色がある分こちらの方がさらに神秘的に見えた。

「ん? あれは何だ?」

 色とりどりの光に気を取られていたハジメだったが、すぐに他とは違った一角を見つけた。

 自由に飛び回っている光と違って、そこにある光は少し大きめで規則正しく並んでいる。

 さらに目を凝らしてみると、その光の中に小さな小人のようなものが入っているのが見えた。

 その大きさは目の前で忙しそうに作業をしている長たちと比べてもさらに小さい。

 ハジメは、それが何であるのか気付くと同時に、この場所が何のためにあるのかを理解した。

「ノームの揺り籠、か」

「随分と詩的」

 エイヤの鋭い突込みに、ハジメは不覚にも(?)二の句がつげなかった。

 

 ハジメとエイヤが予想した通り、ここはノームたちが生まれるための場所である。

 規則正しく並んでいる光の列から次の新しいノームが生まれてくることになる。

 中には、まさに今、光の中から出てこようとする小人もいる。

 二人がその場所の光景に目を奪われている中、ノームたちはハジメの作ったアイテムを使って何やら作業を行っていた。

 最初はハジメもその作業を見ていたのだが、途中途中にノーム特有の魔法が使われていたので、自分が同じ作業を行うことは不可能だと判断した。

 やがて、作業を終えたのか、長がアイテムを持って別の物と交換するのが分かった。

 それを見ていたハジメが、納得したように呟いた。

「なるほど。俺が作ったのは、精霊たちをより分けるのに使われるための物か」

「そうなの?」

「ああ、恐らくだがな。ノームたちが行っていた作業は、精霊をノームに成長させるためのものだろう」

 この場所に浮かんでいる様々な光は精霊たちのもので、ハジメが作ったアイテムはその中から地属性の精霊を選別して特殊な空間に分けるための物だった。

 ノームたちはそこからさらに、その空間内で精霊たちをノームへと変化させるための機能を加えたのだ。

 

 古い物と新しい物を交換した長は、満足げな表情でハジメに感謝を示していた。

「私たちが考えた通り、ここはやっぱりノームたちが生まれるための場所だって。ハジメに作ってもらったアイテムは、ノームたちにはどうしても必要な物でとても助かった、って言っている」

 ノームたちのような精霊族は、自然発生でも生まれてくる。

 ただし、その速度は非常に緩やかで、ここのノームたちのように里を作れるほどの数は生まれない。

 それを解消するのが、ハジメが「ノームの揺り籠」と称したこの場所で、作為的にノームの誕生を早めるのだ。

 だが、それをするためには、どうしてもハジメの作ったアイテムが必須になる。

 ノームたちだけではそのアイテムが作れないために、望みをかけてハジメにアイテムの作成を依頼したというのが事の顛末だった。

「それから、古くなった物はくれるって」

「いいのか?」

 ハジメの問いに、エイヤはもう一度長に確認したが、彼は大きく頷いていた。

「ノームたちには必要ない物だからって。ハジメなら何かに役立てることができるだろうって言っている」

「そうか」

 頷いたハジメは、遠慮なくそのアイテムを受け取ることにした。

 そして受け取るなりアイテムの鑑定をしたハジメは、思わず「イベントアイテムか」と呟いていた。

 それは、まさしく運営から依頼のあったアイテムを作るために必要な素材アイテムだったのである。

 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:特級作成師LV54(6up)

 体力 :7822(+365)

 魔力 :12849(+609)

 力  :1259(+62)

 素早さ:1242(+67)

 器用 :2646(+148)

 知力 :1565(+90)

 精神力:1938(+110)

 運  :20

 スキル:上級調合LV20(master!)、上級魔力付与LV20(1up→master!)、魔付調合LV20(1up→master!)、宝石加工LV20(master!)、上級宝石加工LV12(2up)、装飾作成LV20(master!)、

     上級装飾作成LV10(2up)、上級錬金術LV10(2up)、鑑定LV20(master!)、収納LV20(master!)、俊敏LV17(1up)、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV11(3up)、気配察知LV13(1up)、

     短剣術LV12、槍術LV5、風魔法LV20(master!)、地魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、火魔法LV20(master!)、光魔法LV20(master!)、闇魔法LV20(master!)、空き×4(1up)

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:魔狼LV60(master!)

 体力 :13876(+14)

 魔力 :6181(+5)

 力  :1817(+11)

 素早さ:1062(+8)

 器用 :541(+6)

 知力 :598(+6)

 精神力:635(+6)

 運  :10

 スキル:牙撃LV20(master!)、激爪LV20(master!)、威圧LV20(master!)、体当たりLV20(master!)、俊敏LV20(master!)、気配察知LV20(master!)、収納LV20(master!)、報酬LV20(master!)、

     魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV11(3up)、遠距離走法LV20(master!)、隠密LV20(master!)、発見LV19(1up)、火魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、

     風魔法LV20(master!)、土魔法LV20(master!)、空き×5

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(達人)LV58(5up)

 体力 :13341(+658)

 魔力 :7653(+405)

 力  :1331(+74)

 素早さ:681(+42)

 器用 :1228(+73)

 知力 :892(+59)

 精神力:1146(+76)

 運  :10

 スキル:上級栽培LV20(master!)、採取LV20(master!)、大収集LV14(1up)、成長促進LV20(master!)、料理LV20(master!)、収穫LV20(master!)、採掘LV10、交渉LV20(1up→master!)、棍棒術LV14、

     怪力LV20(master!)、収納LV20(master!)、鑑定LV18(1up)、体術LV12、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV12(4up)、水魔法LV20(master!)、地魔法LV20(master!)、空き×6(1up)

 職業スキル:種子作成、農地管理

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦姫LV43(7up)

 体力 :13695(+991)

 魔力 :9079(+636)

 力  :1670(+122)

 素早さ:1398(+113)

 器用 :1022(+75)

 知力 :1307(+105)

 精神力:1032(+83)

 運  :10

 スキル:上級剣術LV15(1up)、上級槍術LV11(1up)、上級弓術LV11(1up)、体術LV20(master!)、火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、水魔法LV20(1up→master!)、

     地魔法LV20(1up→master!)、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV12(4up)、収納LV20(master!)、解体LV20(master!)、鷹の眼LV20(master!)、俊敏LV20(master!)、

     踊りLV15(2up)、鑑定LV17(1up)、採掘LV13(1up)、空き×7(1up)

 職業スキル:戦舞

     

 名前:エイヤ

 種族:ダークエルフ

 職業:大魔導士LV40(6up)

 体力 :6695(+484)

 魔力 :15018(+912)

 力  :808(+50)

 素早さ:979(+68)

 器用 :1400(+92)

 知力 :1637(+106)

 精神力:11283(+78)

 運  :10

 スキル:火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、土魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、精霊術LV20(master!)、火炎魔法LV16(2up)、烈風魔法LV16(2up)、

     弓術LV20(1up→master!)、鷹の目LV20(master!)、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV13(5up)、料理LV20(master!)、精霊魔具作成LV18(1up)、交渉LV14(1up)、空き×8(2up)

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