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ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第六章 運営からの直接依頼
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(5)浄化魔法

 全体イベントが終わって一週間がたった頃。

「出来たーっす!」

 本拠点の傍で作業していたルボルの声が辺りに響いた。

 流石に普段から拡声器なしでサポートキャラたちに指示を飛ばしているだけあって、その声は良く響く。

「そのようだな」

「どうっすか? 小さい建物とはいえ、手は抜いてないっすよ!」

「ああ。十分だろう。というより、手を掛け過ぎてないか?」

 目の前にある建物を見て満足気に頷いたハジメだったが、その外観を見て若干頬を引き攣らせた。

 大きさ的には、プレハブ小屋をみっつ並べたくらいの広さで、平屋になってる。

 ただ、その外観は色々な趣向が施されて飾り付けられていた。

 勿論その飾りはただの飾りではなく、付与魔法が施されているのだ。

「ハッハッハ! いやー、何やら造っていくうちに、作業が乗ってきてしまって、ついついやってしまったっす!」

 そう言ったルボルだったが、実際には彼だけではなく、サポートキャラたちが張り切った結果が目の前の建物になる。

 ただの四角いだけの箱を作っても面白くないという事が最初だったが、そのうちに小さい建物でどこまで出来るのか、というのが主眼に置かれて造られていた。

 結果として、見た目とは裏腹にかなり強固な防衛システムが組み込まれているのだ。

「それはいいんだが、かなり掛かっているだろう?」

 ハジメとて付与魔法は専門の分野になる。

 目の前の建物に使われている材料やら技術料を加味すれば、かなりの経費が掛かっていることは一目でわかる。

「その辺はうちのギルドの持ち分だから気にしなくていいっす!」

「いや、そういう問題じゃないんだがな」

 きっぱりと笑顔で言い切ったルボルに、ハジメはため息を吐いた。

 余りに経費をかけすぎると、販売するときに値段が高くなりすぎて売れなくなるのだ。

 それでは、折角の共同開発の意味が無くなってしまう。

「・・・・・・まあ、いいか。取りあえず、俺の方で最後の仕上げをするぞ?」

「任せたっす!」

 ハジメがそう確認すると、ルボルは自信満々に大きく頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ハジメとルボルがそれぞれのギルドのギルマスに完成したことを報告すると、翌日完成品をお披露目することになった。

 きちんと収納できることを証明するために、最初に建てた場所から確認することになり、ハジメの第一エリアにはプレイヤーとサポートキャラが集まっている。

 ただ、集まっているといっても、二つのギルドのギルマスとサブマスと彼らのサポートキャラだけだったが。

 それでも四十人以上は集まっているので、かなりの賑わいとなっている。

「おいルボル! 確かに好きに造っていいとは言ったが、これはないだろう?!」

「痛いっす!」

 建物を一目見るなり、ヤーコブがルボルの頭をバチンと叩いた。

 かなりいい音がしていたが、まだ拳骨ではなかっただけきちんと手加減はされている。

 その様子を苦笑しながら見ていたパティが、詳しく見分するように建物に鋭い視線を飛ばす。

「確かに、ずいぶんと派手やね。しかも実用的ときとるやん」

「勿論っす! いや、ギルマス、拳骨は本気でやばいからやめてっす!」

「まあまあ、その辺にしとき。取りあえず全部見てから判断しようや。もしかしたら、怪我の功名になるかも知れんし」

 ルボルを拳骨で殴ろうとしていたヤーコブは、パティの言葉にその動きを止めた。

「・・・・・・ほう?」

「そっちでも気付いているやつもおるみたいやけど、答え合わせは全部見てからや」

「そうだな」

 <無限創造>のサブマスターの一人は商人がメインの職になっている。

 ヤーコブは、そのサブマスターの反応を確認してから拳骨になっていた手を解いた。

 それを見て大きく安堵のため息を吐いたルボルに、周囲にいた者たちが笑みを浮かべていた。

 

 サポートキャラたちを外に残して、プレイヤーだけが建物の中に入る。

 流石に一度に全員が入れるだけの広さはない。

 建物の中に入ったヤーコブは、感心した声を上げた。

「ほう」

「なるほどなあ。中はしっかりと実用的やん」

「勿論っす!」

 ヤーコブとパティの反応にみて、ルボルが胸を張った。

 入ってすぐのところにはきちんと玄関があって、扉で仕切られている。

 そこから中に入ると、リビングとして使用できる部屋があり、奥には台所も完備されていた。

 さらに台所の反対側にはもう一つの部屋も用意されていて、当然のようにトイレも備え付けられている。

 一人か二人で生活する分には十分なスペースになっていた。

 

 商人の顔で中をチェックしていたパティは途中まで満足げに見ていたが、台所とトイレに視線を向けてからハジメを見た。

「確かに良い感じやけれど、これ、汚水の処理はどうなっとんのや?」

 ある意味当たり前といえば当たり前の疑問に、ハジメは肩を竦めた。

「今のところ一か所にまとめておいて、後でどこかに捨てるようになっているな。汚水処理なんて便利な物はないんだ。そこは要課題だ」

「やっぱりなあ」

 ハジメの言葉に、予想していたパティがため息を吐いて頷いた。

 他の者たちも納得したような顔になっていたが、そんな中でただ一人、エミーリエが疑問の声を上げた。

「えっ!?」

「なんや、突然。驚かすな」

 エミーリエのすぐ横にいたパティが、思わずびくっとして彼女の方を見た。

「ごめんなさい。でも、なんで汚水の処理に魔法を使っていないのよ?」

「何をいっとるん。そんな便利な魔法・・・・・・」

「あるわよ?」

 あるわけないやん、と続けようとしたパティを遮って、エミーリエがそういった。

 そして、一瞬間が空いたのち、

「「「「「なんだとー!?」」」」」

 という一同の声が、室内に響くのであった。

 

 本来、エミーリエの種族である人魚の生活域は海の中である。

 そういった汚水に関しては、人魚にとっては特に死活問題だ。

 垂れ流しというのが許せない女性たちによって、そうした汚水を処理する魔法は標準装備(?)のものなのだ。

 人魚には当たり前すぎる魔法なので、当然他の種族もその魔法が使えると思っていた、というのがエミーリエの言葉だった。

 ついでに、外で待っていたサポートキャラの中に、同じく人魚がいたが、エミーリエと同じことを言っていた。

「拠点とか、交流の街で使われている設備も同じ魔法が使われていたから、当然建築士辺りは知っていると思っていたわ」

 エミーリエのその言葉に、ルボルを始めとした<建築>のスキルを持つ者たちはガクリと肩を落としていた。

 彼らが交流の街に建物を作るときは、単純に下水工事だけをして、処理に関しては全くのノータッチだったのである。

 まさかそんな単純な解決方法があるとは考えていなかったわけだ。

「あれ? じゃあ、交流の街に今建っている建物はどうなっとるの?」

「あそこは、きちんと下水があるっす。そこに流すようになっているので、魔法に関しては普通は分からないっす」

 ルボルの言葉に、他の<建築>スキル持ちが頷いていた。

 結局のところ、人魚が持つ汚水を処理する魔法は、本人たちにそのつもりはなく知る人ぞ知る魔法、ということになっていたというわけである。

 

 それまで黙って話を聞いてたハジメが、エミーリエに問いかけた。

「その魔法は、そこまで難しいものではないんだな?」

「それはそうよ。私たちにしてみれば、子供の頃に覚えるような基本的な魔法だもの」

 エミーリエの答えに、ハジメは頷いた。

「となると、魔道具にすることもできるのか?」

「さあ、どうかしら? 私は前の世界で見たことはあるけれど、こっちに来てからは一度も見てないわね」

 エミーリエもプレイヤーの一人の為、前に生きていた世界があり、そこでは見たことがあった。

 だが、流石に職人ではないエミーリエに、その道具が作れるかどうかは分からない。

「なるほどな。今度、その魔法を教えてもらってもいいか?」

「勿論よ」

「あ~。いいっすねえ。おいらにも教えてほしいっす」

 ハジメの要求には即答したエミーリエだったが、ルボルには困ったような表情になった。

「それは・・・・・・どうかしら? そちらにも私と同じ種族はいるのでしょう?」

 エミーリエがちらりとヤーコブへちらりと視線を向けた。

「ああ、いるな。・・・・・・わかった。まずはそちらに確認をしてみよう」

 ルボルの視線に耐えかねてか、もともとそのつもりだったのか、どちらかは不明だったがヤーコブが頷いた。

 そして、それを見たエミーリエが安堵のため息を吐いていた。

 そもそも彼女にとってはごく当たり前の魔法という感覚だったため、この世界でどの程度の価値があるのか、まったくわかっていなかったのだ。

 そのため、交渉しようにも基準が分からないまま進めなければならないところだった。

 少なくとも、今の会話で時間は稼げたと思うことにしたエミーリエであった。

 

 結局、汚水の浄化魔法に関しては、エミーリエ以外の人魚たちもごく普通に使っている魔法であることが判明し、一般的に知られるようになった。

 その浄化魔法が遠征をおこなう戦闘組、特に女性たちに重宝がられたのは、ある意味当然のことだった。

 ちなみに、鉱山地区が出来て以来、戦闘組も他のパーティと組むことが多くなっているにもかかわらず、人魚が使う魔法にこれまで何故気づかなかったのかと頭を抱えている者たちもいた。

 汚い話になるが、フィールド攻略中に自分が出した物は、きちんと穴を掘って処理をするという習慣、というか常識があったために、人魚たちも気付けなかった。

 人魚たちは、そもそもそんなことをする必要がないために、そうした常識が出回っていることは気づいていなかったというわけである。

 これを契機に、種族による常識が他の種族には知られていない常識ではないか、改めて検証されることになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 汚水浄化の魔法が見つかったため、<携帯拠点>の完成はもう少しだけ先送りされることになった。

 幸いにして、浄化魔法を付与した魔道具の作成はさほど難しくないということがわかったため、きちんと汚水処理をする設備を組み込むことにしたのだ。

 ただし、その魔道具の作成に関しては、ハジメは関わらないことになっていた。

 というのも、パティが禁止を申し付けたのだ。

 その言い分としては、「他のプレイヤーに出来る仕事を奪うのは駄目や」というものだった。

 まあ、言い方としてはあれだが、これ以上ハジメの負担を増やしたくないというパティの思いがあったのは間違いないだろう。

 そんなわけで、ハジメとしてはしばらく待ちの状態になったというわけだである。

 

 浄化魔法が発見されて二週間ほどがたち、ついにルフの職業レベルが六十になり上限に達した。

 早速端末で次の職業に何があるのか確認をしたが、<魔狼>の上位に当たる職業は無かった。

 他にあるのは、<狼>の先の職業に当たる<大狼>だけだった。

 しかも、グレーアウトしていて選択することが出来なくなっている。

 掲示板では少しずつ情報が流れていたので、ハジメとしてはついに、という思いが先にきた。

 掲示板では職業レベルが上限に達してそれ以上の転職が出来なくなることを《職業の壁》と呼んでいる。

「せめて基本職が今のステータスのまま選べればいいのに」

 実際にそう言葉を発したのはエイヤだったが、他の二人も同じ意見なのか何度も頷いている。

 《職業の壁》に達すると、それ以前の基本職に就くことはできるが、それを選択すると全てのステータスが軽減されるという警告画面が出てくるそうだ。

 流石にそれ以上を進む勇者は今のところ出ていないので、実際にどの程度までステータスが減らされるかは分からない。

 そういうハジメもルフで実験しようとは思わない。

 いくらなんでも冒険するには、デメリットが大きすぎるのだ。

「まあ、それは言っても仕方ないな。そういうもんだと割り切るしかないだろう」

「そうね」

 ハジメの言葉にバネッサが頷いた。

 基本職からやり直してさらにステータスアップが図れるのが一番いいのだが、流石にそうは問屋が卸さないというわけだ。

 こればかりは、どうにもできないことなので諦めるしかない。

 それに、《職業の壁》に達した場合も、これ以上の成長が望めないというわけではないのだ。

 スキルの存在がある上に、既に全体イベントの報酬として<職業レベル上限突破>があるのが分かっている。

 それを使えれば、さらにレベルを上げることも可能になるだろう。

 今のところは全体イベントの報酬としてしか出ていないが、例えば通常のクエスト報酬として出てくる可能性もないわけではない。

 結局、ルフの職業に関しては、なにか進展があるまでは今の状態で待っておく、ということになるのであった。

 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:特級作成師LV39(2up)

 体力 :6911(+120)

 魔力 :11328(+204)

 力  :1103(+20)

 素早さ:1071(+23)

 器用 :2276(+49)

 知力 :1342(+28)

 精神力:1665(+35)

 運  :20

 スキル:上級調合LV18、上級魔力付与LV18(1up)、魔付調合LV17、宝石加工LV20(master!)、上級宝石加工LV7(1up)、装飾作成LV20(master!)、上級装飾作成LV5(1up)、

     上級錬金術LV5(2up)、鑑定LV20(master!)、収納LV20(master!)、俊敏LV16、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV3(2up)、気配察知LV11(1up)、短剣術LV12、

     槍術LV5、風魔法LV20(master!)、地魔法LV20(master!)、水魔法LV19、火魔法LV19、光魔法LV20(master!)、闇魔法LV20(1up→master!)、空き×1

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:魔狼LV60(2up→master!)

 体力 :13846(+263)

 魔力 :6170(+140)

 力  :1796(+42)

 素早さ:1045(+25)

 器用 :529(+12)

 知力 :587(+15)

 精神力:624(+15)

 運  :10

 スキル:牙撃LV20(master!)、激爪LV20(master!)、威圧LV20(master!)、体当たりLV20(master!)、俊敏LV20(master!)、気配察知LV20(master!)、収納LV20(master!)、報酬LV20(master!)、

     魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV3(2up)、遠距離走法LV19(1up)、隠密LV18、発見LV16(1up)、火魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、土魔法LV20(master!)、空き×5(1up)

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(達人)LV45(2up)

 体力 :11631(+262)

 魔力 :6701(+162)

 力  :1135(+29)

 素早さ:571(+16)

 器用 :1041(+29)

 知力 :740(+23)

 精神力:946(+30)

 運  :10

 スキル:上級栽培LV20(master!)、採取LV20(master!)、大収集LV11(1up)、成長促進LV20(master!)、料理LV20(master!)、収穫LV20(master!)、採掘LV9、交渉LV17(1up)、棍棒術LV14、

     怪力LV20(master!)、収納LV20(master!)、鑑定LV15(1up)、体術LV12、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV3(2up)、水魔法LV20(master!)、地魔法LV20(master!)、空き×4(1up)

 職業スキル:種子作成、農地管理

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦姫LV26(4up)

 体力 :11288(+283)

 魔力 :7536(+181)

 力  :1375(+34)

 素早さ:1125(+31)

 器用 :842(+20)

 知力 :1055(+30)

 精神力:833(+23)

 運  :10

 スキル:上級剣術LV12(1up)、上級槍術LV8(1up)、上級弓術LV9(1up)、体術LV20(master!)、火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、水魔法LV18、地魔法LV18、

     魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV3(2up)、収納LV20(master!)、解体LV19、鷹の眼LV19、俊敏LV19、踊りLV11(1up)、鑑定LV14(1up)、採掘LV11、空き×4(1up)

 職業スキル:戦舞

     

 名前:エイヤ

 種族:ダークエルフ

 職業:大魔導士LV24(5up)

 体力 :5407(+402)

 魔力 :12588(+756)

 力  :674(+40)

 素早さ:805(+51)

 器用 :1160(+72)

 知力 :1361(+85)

 精神力:1000(+62)

 運  :10

 スキル:火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、土魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、精霊術LV20(master!)、火炎魔法LV12(1up)、烈風魔法LV12(1up)、

     弓術LV19、鷹の目LV20(master!)、魔力操作LV20(master!)、上級魔力操作LV3(2up)、料理LV19、精霊魔具作成LV16(1up)、交渉LV11(1up)、空き×4(1up)

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