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ミクシードワールド ~神の作業帳~  作者: 早秋
第六章 運営からの直接依頼
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(2)運営からの直接依頼

 まさかの運営登場に、流石にハジメもとっさには反応できなかった。

 その隙をついて、(偽)改め運営が話を続ける。

「まあ、信じるか信じないかは任せるけれど。ああ、それから、必要なこと以外は質問できないようになっているから。いわゆる大人の事情ってやつさ。その辺は察してね」

 ハジメとイリスの驚愕を余所に、運営は少なくとも表面上は上機嫌な様子を見せていた。

 その様子を見ていたハジメは、いつまでも驚いていてもしかないと開き直ることにした。

「・・・・・・何をしに来た?」

「ん? ああ、そうだね。それを話さないとね」

 ポンと両手を合わせた運営は、懐に手を入れてごそごそと何かを探り始めた。

「あれ? 確かここに・・・・・・ああ、あった。はい、これ」

 そう言って一枚の紙を取り出して、ハジメの方へと差し出す。

 思わず流れに乗って受け取ったハジメは、三つに折られた紙を開いて中を見た。

「なんだ、これは?」

「なんだって・・・・・・見ての通り、依頼書だよ」

 運営がそう言った通り、その紙には見覚えのある形式で依頼が書かれていた。

「それは分かるが・・・・・・なぜ、こんな形で?」

 依頼をしたいのであれば端末を通していくらでも出来るはずだ。

 わざわざ姿を見せてまで依頼をしに来る理由が分からなかった。

 

 首を傾げているハジメに対して、運営は首を左右に振った。

「いやだなあ。端末で依頼を出したって、ハジメの場合、ちゃんと受けるかどうか分からないじゃないか。それに、折角だからその依頼だけは直接渡したかったんだよね」

 明らかにハジメの行動を理解しているうえでのその言葉に、ハジメは眉を顰めた。

 だが、それもすぐに解消した。

 相手の言う事を信じるなら、運営は正しく運営なのだ。

 ハジメが全ての依頼を受けているわけではないことくらい、とっくに分かっているだろう。

 さらに言うなら、最近のハジメはシステム上の依頼をまともにやっていない。

 下手をすれば依頼の画面すら見ない日もあるので、運営の言う事は完全に正しかった。

「それだけの事で・・・・・・いや、お前の言う通りだな。・・・・・・で? この依頼を完了すればいいのか?」

「ハハッ。話が早くて助かるよ。その通り! 結構難しいと思うけれど、ハジメならクリアしてくれると願っているよ。報酬も良い物を用意しておくからね」

 ハジメがもう一度依頼書に視線を落とすと、報酬の欄は空欄になっていた。

 ただし、何が貰えるかは分からないが、報酬に関してはハジメは心配していなかった。

 わざわざ直接依頼をしに来るくらいだ。

 少なくともこの依頼に関しては、かなり重要なものだということは分かる。

 それに、さらっと目を通した感じでは、ハジメにとってもメリットはありそうな依頼だった。

 主に、スキルのレベルアップの面で。

 

 依頼を受けることを決めたハジメは、依頼書を見ながら問いかけた。

「依頼を受ける場合は、どうすればいいんだ?」

 紙で貰っているので、普通のように端末で受領することが出来ない。

 どうすれば依頼を受けたことになるのかが分からないのだ。

「ああ、その場合は、出来た物と一緒に依頼書を納品箱に入れてくれればいいよ。あとはこっちで処理するから」

「なるほどな。分かった」

 頷くハジメに、運営が首を傾げた。

「他に聞きたいことはないの? もう少しだけ時間あるけど?」

 時間がある、という意味は分からなかったが、それに対してハジメも同じように首を傾げた。

「それはたくさんあるが、聞いていいのか?」

 この世界の事に関しては、聞きたいことが色々ある。

 だが、最初に質問できないと運営が言っていたはずだ。

「それはそうなんだけれどね。随分とあっさりしているね。まあ、いいか」

 そう言って頷いた運営だったが、ふと思い出したような表情になった。

「ああ、そうそう。これだけは言っておかないとね。僕は確かに運営だけれど、そのうちの一人・・だって事だけは言っておくよ」

「ああ、なるほど」

「本当に理解が早くて助かるよ。だから、僕に向けて、例えば掲示板とかで何か言ったとしても、それが必ず通るとは限らないから注意してね。他の運営が気に入れば通ることもあるけれど」

 随分と突っ込んだ回答に、ハジメは驚きで目を見開いた。

 掲示板では運営について、一人しかいないとか複数いるとか色々議論されているのだが、そのことを目の前の運営が知らないはずがない。

 ハジメが視線だけでそんなことを言って良いのかと問いかけると、運営は正しく受け止めたのか、肩を竦めて答えた。

「この程度はね、特に問題ないよ。掲示板だと質問が殺到するのが目に見えてるから答えないだけでね」

 思わずその状況を思い浮かべたハジメは、確かになあ、と内心で納得していた。

 人数が複数いたとしても、来ると予想される質問の全てに対応することなど不可能だろう。

 

 何か質問することはないか、と考えたハジメは、ある質問をすることにした。

 これも以前から掲示板で謎とされていて、プレイヤーたちの今後に関わる大きな疑問だった。

「『クリア』したらこの世界はどうなる?」

 そもそも『クリア』というのもがあるのかないのか、又、あったとしてもその後はどうなるのか、喧々諤々の議論がされている。

 ハジメがぼかした聞き方をしているのは、わざとだ。

 あえてそういう聞き方をすることにより、どんな答えでも引き出せるようにしている。

 その問いかけに一瞬だけ沈黙をした運営は、ニヤリと笑った。

「いやはや。これまた意地の悪い聞き方をしてくるねえ。その質問には、こう答えようか。|この世界≪ミクシードワールド≫を壊すことは考えていないよ、ってね」

「そうか」

 運営が返して来た答えもまた曖昧なものだったが、ハジメは納得して頷いた。

 これ以上詳しく突っ込んで聞いたとしても、答えられない可能性の方が大きいからだ。

 むしろ、曖昧なものでも答えを返してきてくれたことの方が意味がある。

 

 次は何を聞こうかと考えていたハジメだったが、その前に運営が首を振った。

「ああ、残念。そろそろ時間らしい。折角だからもう少し話したかったんだけれどね。それじゃあ、またね。次会えるときは、アイテムを作った後かな?」

 それだけを言って、運営はハジメとイリスの目の前で音もなく姿を消した。

 一応魔法的な動きが無いか、あるいは何か痕跡が残っていないかを調べたが、全く何も残っていなかった。

 今まで運営がいたところを念入りに調べていたハジメだったが、一つ大きくため息を吐いた。

 それを見て、今まで二人のやり取りを黙って見ていたイリスが近寄って来た。

「ハジメ様・・・・・・?」

「ああ、いや。大丈夫だ。別に落ち込んだとかそういうわけじゃない」

 先程のため息は、痕跡を欠片も残さなかった見事さに対する感嘆のものだ。

 運営が直接現れたことによる今後の騒ぎを考えて、面倒に思ったことも若干はあるのだが。

「心配するな」

 不安そうに見てくるイリスに、ハジメは小さく笑顔を浮かべて安心させるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 運営が来たことに関しては、掲示板に書くのはやめておいた。

 ことが事なので、まずはギルドメンバーに話をしておこうと考えたのだ。

 ギルドマスターであるパティと、サブマスターの二人が都合がつくのが翌日という事になったので、その日はいつものようにアイテム作成などを過ごした。

 明けて翌日。

 パティたちの話し合いまでは時間があったのでステータスを確認していると、エイヤの職業が<master!>になっていた。

 昨日見た時にはなっていなかったので、昨日のレベリングで<master!>になったのだ。

 エイヤの職業である魔導士の次の上位職は、大魔導士だけだった。

 エイヤにも確認したが、迷うことなく頷いたためすぐに大魔導士へと転職を行った。

 残念ながら大魔導士への転職で、職業スキルを覚えることは無かった。

 毎度のようにステータスは上昇しているが、はっきりと違いが分かるほど大きく変化するわけでもない。

 

 転職を終えてたあと、魔法の試し打ちをしに行っていたエイヤが戻って来た。

「どうだった?」

 作業の手を止めて確認して来たハジメに、エイヤは首を左右に振った。

「特に目立った変化はない。少しだけ魔法が打ちやすくなった気がする?」

 感覚としては非常に微妙なものなので、エイヤも最後の言葉には首を傾げながら言っていた。

 ハジメとしても劇的な変化があるとは期待してはいなかったので、淡々と頷いた。

「そうか。それで? スキルはどうするんだ?」

 今のところ合成魔法を新たに二つ覚えられる枠は空いている。

 その分を埋めようかと確認したハジメだったが、それに対してエイヤは首を振った。

「いい。今覚えている二つが成長してないし、合成魔法は使いどころが難しい」

 合成魔法は威力が強力な分、発動するタイミングも長いため使いどころが難しいというのが評判だった。

 発動のスピードを上げるためのスキルが何かあるのではないかと考えられてはいるが、未だに明確な解答は見つかっていない。

 合成魔法を覚えるために、枠を多く使うのもそうした検証が進んでいない原因の一つとなっている。

 

 首を振ってこたえたエイヤに、ハジメは頷いた。

「そうか。まあ、その方が良いかもな」

 戦闘時にどの魔法を使って相手を倒すかというのは、当然ながらその場その場でエイヤが判断することになる。

 その本人が今のままでいいというのであれば、無理に増やす必要はない。

 ついでに、枠を開けておけばいつでも追加することが出来るので、慌てて増やす必要もない。

「他に欲しいスキルは?」

 ハジメは最後にそう確認したが、エイヤは首を左右に振った。

 ときどきスキル一覧を見たりはしているが、エイヤがほしいスキルもない。

 結局、今回は職業を転職するだけで終わったのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 バネッサたちが第三エリアに向かったのを見送ってからしばらくは、いつものようにアイテム作りに精を出した。

 そして、昼食を終えたあとにイリスと一緒にギルドへと向かった。

 パティたちに運営についての話をするためである。

 ハジメたちが着いたときには、既にパティとサブマス二人は揃っていた。

「待たせたか?」

「いいや。集まるついでに他の事を話していたんや」

「そうか」

 パティの答えに、ハジメは頷きながら席に着いた。

 今いる場所は、ギルド拠点の打ち合わせが出来る小さな部屋だ。

 こういった部屋を使うのは、ギルドの幹部たちだけではなく、鉱山攻略などの打ち合わせをしたりすることが出来る。

 

 席に着いたハジメは、前置きをすることなく昨日あったことを三人に話した。

 ハジメの話を聞いていた三人は、最初は何事かという表情で、次いで驚愕の表情になり、最後には言葉を失っていた。

「・・・・・・なんちゅう話を持ってくるんや」

 ようやくと言った感じで、最初にパティが声を絞り出した。

 他の二人はまだ衝撃から立ち上がっていない。

 それほどまでに、ハジメが持ってきた話はありえないことだった。

「そんなことが、あるのか」

「いえ、最近の動きを見ていれば、あり得ない話ではないでしょうけれど・・・・・・やっぱり信じられないわね」

 衝撃から立ち直ったイーネスとエミーリエが、それぞれ小さく言った。

 ハジメ本人を前にしているからこそまだ信じることが出来ているが、これが掲示板での情報であったなら間違いなく信じていなかっただろう。

 それはハジメも分かっているので、三人が落ち着くまで待つことにしていた。

 そもそもハジメ自身がこの情報を掲示板で見た場合は、眉唾物として信じていなかったに違いない。

 

 一つため息を吐いてから視線をハジメに向けたパティが言った。

「うちらにこの話をしたのは、ギルドの信頼度を利用しようと思っての事やな?」

「ああ」

 ハジメは隠すことなくはっきりと頷いた。

 そもそも個人で掲示板で情報を流したとしても、匿名性が高い掲示板では信用されない。

 さらにハジメ個人の名前で流したとしても、それを逆に利用して今までの知名度を落とされるかもしれない。

 知名度が落とされるのはハジメ個人としては別に構わないのだが、ハジメの商品を多量に扱っているギルドとしてはいただけないだろう。

 それならば、ギルドを利用して発信したほうがいいというのがハジメの考えだった。

 最初からこんなことを考えていたのではなく、一晩たってゆっくり考えた結果、こうするのが一番いい落としどころだと結論づけたのである。

 

 

 

 パティたちを交えて話し合った結果、ギルドの公式見解として発表することになった。

 ギルドが認めることによって話に真実味を持たせるのと同時に、他にも同じようなことが起きていないかを情報として出すように促すためだ。

 ついでに、ギルドのメンバーが積極的に発信してくることも期待している。

 もっとも、今回の件はあくまでも運営が動くことが前提となっているため、どういう事になるかは未知数だ。

 このままハジメだけにアプローチ(?)をかけるという事も考えられる。

 もしそうなったらハジメの虚言だと疑われる可能性もあるが、それはそれで構わないという事になった。

 というのも、運営の情報自体をギルドで独占できるという事になるためだ。

 運営から直接依頼された場合の報酬もまだわかっていない。

 十分にギルドの利益になるということで、今回の決断となったのであった。

 今回は前話から一晩しかたっていないため、微増です。

 

 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:特級作成師LV25(0up)

 体力 :6065(+1)

 魔力 :9905(+2)

 力  :961(+0)

 素早さ:913(+0)

 器用 :1934(+1)

 知力 :1137(+0)

 精神力:1415(+0)

 運  :20

 スキル:上級調合LV16、上級魔力付与LV16、魔付調合LV15、宝石加工LV20(master!)、装飾作成LV20(master!)、錬金術LV19、鑑定LV20(master!)、

     収納LV20(master!)、俊敏LV15、魔力操作LV20(master!)、気配察知LV5(1up)、短剣術LV11、槍術LV5、風魔法LV19、地魔法LV19、水魔法LV18、

     火魔法LV18、光魔法LV18、闇魔法LV18、空き×10

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:魔狼LV45(0up)

 体力 :11871(+3)

 魔力 :5113(+0)

 力  :1478(+1)

 素早さ:853(+1)

 器用 :435(+0)

 知力 :474(+0)

 精神力:511(+0)

 運  :10

 スキル:牙撃LV20(master!)、激爪LV20(master!)、威圧LV20(master!)、体当たりLV19、俊敏LV20(master!)、気配察知LV20(master!)、収納LV20(master!)、報酬LV19、

     魔力操作LV20(master!)、遠距離走法LV16、隠密LV16、発見LV11(1up)、火魔法LV19、水魔法LV19、風魔法LV19、土魔法LV19、空き×7

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(達人)LV32(0up)

 体力 :9923(+1)

 魔力 :5645(+1)

 力  :841(+0)

 素早さ:461(+0)

 器用 :855(+0)

 知力 :588(+0)

 精神力:792(+1)

 運  :10

 スキル:上級栽培LV18、採取LV20(master!)、大収集LV6(1up)、成長促進LV20(master!)、料理LV20(master!)、収穫LV20(master!)、採掘LV9、交渉LV14、棍棒術LV13、

     怪力LV20(master!)、収納LV20(master!)、鑑定LV12、体術LV10、魔力操作LV18、水魔法LV20(master!)、地魔法LV20(master!)、空き×6

 職業スキル:種子作成、農地管理

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦姫LV5(0up)

 体力 :9872(+1)

 魔力 :5817(+0)

 力  :1060(+1)

 素早さ:833(+1)

 器用 :647(+0)

 知力 :782(+0)

 精神力:615(+0)

 運  :10

 スキル:上級剣術LV8、上級槍術LV3、上級弓術LV4、体術LV20(master!)、火魔法LV19、風魔法LV18、水魔法LV16、地魔法LV16、

     魔力操作LV20(master!)、収納LV19、解体LV18、鷹の眼LV18、俊敏LV17、踊りLV5(1up)、鑑定LV10(1up)、採掘LV10、空き×5

 職業スキル:戦舞

 

 名前:エイヤ(1)

 種族:ダークエルフ

 職業:魔導士LV45(master!)→大魔導士LV1(new!)

 体力 :3554(+80)

 魔力 :9106(+150)

 力  :485(+8)

 素早さ:565(+10)

 器用 :823(+14)

 知力 :965(+16)

 精神力:708(+12)

 運  :10

 スキル:火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、土魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、精霊術LV20(master!)、火炎魔法LV7、烈風魔法LV7、

     弓術LV17、鷹の目LV19、魔力操作LV20(master!)、料理LV18、精霊魔具作成LV14、交渉LV7、空き×5

     

 名前:エイヤ(2)

 種族:ダークエルフ

 職業:大魔導士LV2(1up)

 体力 :3634(+80)

 魔力 :9258(+152)

 力  :493(+8)

 素早さ:575(+10)

 器用 :837(+14)

 知力 :982(+17)

 精神力:720(+12)

 運  :10

 スキル:火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、土魔法LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、精霊術LV20(master!)、火炎魔法LV7、烈風魔法LV7、

     弓術LV17、鷹の目LV19、魔力操作LV20(master!)、料理LV18、精霊魔具作成LV14、交渉LV7、空き×5

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