(6)成功
全体イベントの報酬である鉱山地区は、プレイヤー・サポートキャラに関わらず自由に出入りすることが出来る。
第一エリアの第三段階のような制限もない。
鉱山地区という名前でわかる通り、各種鉱石物が埋蔵されている鉱山だった。
ただし、誰でも自由に掘ることが出来るというわけではなく、見つけることが出来る鉱石は<採掘>や<発見>のスキルレベルに依存している。
この辺りは、プレイヤーの持っているエリアと変わらない。
そのことに対してスキルを持っていない一部のプレイヤーから、報酬になっていないという文句も出ていた。
だが、鉱山でいい鉱石が見つかればその分いい装備が出来るので、間接的には役に立つということでそうした意見は一蹴されていた。
それよりも、鉱山地区には高ランクのモンスターが出現するので、<採掘>スキルを持つプレイヤーを現地まで連れていく護衛の仕事が発生することになった。
現在、護衛は、ギルドの中やギルド間、あるいは個人で繋がりのある者同士で、やり取りをしている。
掲示板上では、元締めになるようなギルドを作るような話も出たが、誰が仕切るのかという話になって、今のところは立ち消え状態になっていた。
結局、今ある形が一番いいということで落ち着くのではないのか、というのが今の主流なのだ。
いまはまだ開いたばかりという事で、奥まで潜ったという報告は出ていない。
取れている鉱石も今出回っている最高の物と若干下か同等の物だった。
だが、入口の辺りでこれだけの鉱石が取れるという事は、今後に期待できるということで、各所では俄かに盛り上がっているのであった。
そんな周囲の反応を余所に、ハジメは鉱山地区の出入りは後回しにしていた。
今は何よりイベントアイテムの作成が優先なので、職業及びスキルレベルを上げている。
それにハジメの場合、鉱石を大量に使って作る物があるわけではないので、<採掘>のスキルを上げて採取しに行くよりも、市場に出回っている物を購入したほうが手間がかからないのだ。
いずれ大量に必要になるときは、鉱山地区に入る必要があるのだろうが、さしあたって必要は無い。
それよりも、イベントアイテムの作成に注力をしているハジメなのであった。
全体イベントの最中にハジメの職業である上級作成師が、LV45に上がり<master!>となった。
次の上位職業は、特級作成師だった。
<特級>というのは他の職業でも出てきていたので特に驚きはなかった。
逆に掲示板でも言われていたが、安直すぎやしないか、と思ったくらいだ。
それはともかく、上級作成師が<master!>になったのが全体イベントの最中だったので、転職作業だけを行っていた。
全体イベントが終わって、落ち着きを取り戻してようやくイベントアイテムの作成に取り掛かったのだが、なかなか上手くいっていなかった工程があっさりとクリアしてしまった。
どうやら特級作成師への転職が、トリガーになっていたようだ。
ハジメは<宝石加工>のスキルが上位に上がることが条件だと考えていたのだが、どうやらそれは間違いだったようである。
何とも力の抜ける結果にガックリときたハジメだったが、今まで上げたスキルレベルが戻るわけではないと前向きに考えることにした。
上手くいっていなかった『絶零石』の加工が上手くいったので、あとは『破結石』へ加工するだけである。
これが上手くいかないとイベントアイテムは出来ないのだが、『絶零石』に限りがあるのでそう何度も失敗は出来ない。
と、そんなことを決意して『破結石』の作成に取り掛かったハジメだったが、あっさりと成功した。
『絶零石』に続いて、何とも肩すかしに終わってしまったが、とにかく必要なアイテムは作ることが出来た。
<鑑定>スキルで見る限りでは、間違いなく『破結石』と表示されている。
後はヒエロニムスの所へ持って行って判断してもらうしかない、という事になるのであった。
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ハジメは、完成した『破結石』を持ってヒエロニムスの元へと向かった。
ヒエロニムスがいる所には、簡易拠点が作ってある。
転移石で移動できるようにしてあるので、時間は全くかからなかった。
ここ最近はほとんど誰も利用していなかったので、突然全員で現れたハジメ達にヒエロニムスが驚いていた。
「なんだ、珍しいな。何かあったのか?」
ここしばらくは『破結石』の加工に忙しく、ハジメはここには来ていなかったのだ。
「いや。アイテムが出来たから持って来たんだが?」
「何!?」
ヒエロニムスが思わず、といった様子で聞き返して来た。
仕方なしにハジメは、同じ言葉を繰り返した。
「『破結石』が出来たから持って来たんだ」
「なんと・・・・・・!? もしや、と思っていたが、まさか本当に作り上げるとはな」
本当に驚いた様子で、ヒエロニムスが身を揺り動かした。
ヒエロニムスは巨体だけに少し動いただけでも若干の揺れを感じた。
肌でその揺れを感じながら、ハジメは作った『破結石』を取り出した。
「一応、もらった知識の中にあった通りに作ってみたが、もし使えないようだったら教えてほしい」
「どれ。あずかろう」
ヒエロニムスはそう言って、鼻先をわずかに動かした。
すると目の前に小さな光の球が現れて、それがハジメの持つ『破結石』を包み込んだ。
そして、『破結石』を包み込んだ光は、そのままフヨフヨと浮いた状態でヒエロニムスの鼻先まで再び戻って行った。
「フム・・・・・・問題なさそうだな。どれ?」
ヒエロニムスがそう呟くと、鼻先で浮いていた光の球がそのまま上空へと飛んで行った。
ある程度の高さまで光の球が止まると、ヒエロニムスが何事かを呟きはじめた。
何かの言葉のようにも聞こえたが、ハジメ達の誰にも何を言ったのかは理解できなかった。
そのヒエロニムスの言葉に合わせるように光の球が徐々に大きくなり、ついで様々な色の光を発するようになった。
グラデーションの変化を見ているように色が変化し、何度も点滅を繰り返している。
更に光の球の周囲には、文字のような複雑な文様がいくつも取り巻いている。
その文様もまた、ヒエロニムスの言葉に合わせるように、グルグルと回転していた。
やがて光の球は、ハジメが両手を広げても届かないくらいまで大きくなり、ついにその成長が止まった。
空中で静止している光の球を見ながら、ヒエロニムスが目を細めて言った。
「なるほど、見事なものだ。どうやら、成功のようだぞ?」
「そうなのか?」
呆気にとられてその様子を見ていたハジメが、かろうじてヒエロニムスにそう聞いた。
「うむ。失敗であれば、この時点で壊れておるからな」
「そうか」
「それで? このまま続けるのか?」
唐突なヒエロニムスの質問に、ハジメは首を傾げた。
「どういうことだ?」
「前に言ったろう? ここの結界を破れば、我も解き放つことになると」
そう念を押して来たヒエロニムスに、ハジメは肩を竦めた。
「構わないさ。 それで世界が破滅したとしてもそれはそれだしな」
「随分と冷淡だな」
「はっきり言えば、未だ見たことのない世界に対して、何も思う所が無いからな」
「ふむ。そういえば、そなたもここから先には行ったことが無いのであったか」
ハジメがヒエロニムスが存在する世界の住人ではないことは既に話してある。
ハジメが言葉にした通り、今いる場所は拠点からいける一つのエリアの延長でしかないのだ。
街どころか人影すら見たこともないのに、ヒエロニムスから世界を守る、なんていう大言壮語は吐くことはない。
とはいえ、そもそもそんなことを考える以前に、ハジメとしてはヒエロニムスが無差別に人を攻撃するような存在だとは考えていない。
そんなことをするのであれば、最初にハジメたちがあった時に問答無用で攻撃されているだろう。
そうした裏付けがあるからこそ、こんなことをのんびりと話しているのだ。
「そう言うわけだ。だからヒエロニムスの好きなタイミングでやってくれ」
「ふむ。そうだな。いつまでもこうしていても仕方あるまい。では、やるぞ・・・・・・・」
ヒエロニムスはそう言った後、その大きな両目を閉じた。
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先程と同じようにヒエロニムスが何事かを呟き始めた。
それに合わせて、光の球を取り巻いているいくつもの文様の帯が再び動き始める。
その速度は速かったり遅かったりで、一定ではない。
だが、どれもがヒエロニムスの言葉に合わせて動いているようだった。
相変わらずヒエロニムスが言っている言葉は全く分からないが、周囲を取り巻く結界を破るための物だという事は分かる。
次に、今度は光の球がさまざまな色に変化するようになった。
色の変化は一定ではなく、ランダムに変わっている。
文様の帯の動きに加えて球の色の変化が加わったことで、傍から見ている分には色とりどりで華やかな動きになっていた。
ハジメ達は、全員がその動きに見入るのであった。
やがてヒエロニムスが言葉を発するのを止めた。
それを待っていたかのように、それまで空中に静止していた光の球が一気に上空へと上がって行く。
ぐんぐんと上昇していった光の球は、ある高さのところで何かにぶつかり、砕け散るようにしてなくなった。
代わりに、光の球が当たった所を中心に、波紋が広がるように虹色の輪が次々に発生した。
虹色の輪の発生は十秒ほど続いたが、やがてそれもなくなるのであった。
「ふむ」
その光景を見ていたヒエロニムスが、満足そうにそう言った。
それを見たハジメも確信をもって聞いた。
「成功か?」
「ああ。失敗した様子はないな」
わずかに目を細めて上空を見たヒエロニムスがそう断言した。
「そうか。それはよかった」
ハジメとしても、作った『破結石』が失敗していたら、もう一度やり直しになるところだったのだ。
残りの『絶零石』のことを考えれば、一発で成功して欲しかったのが本音だった。
結果として、見事に成功したので安堵したというわけである。
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上空を見据えてたたんでいた翼を動かし始めたヒエロニムスを見て、ハジメは慌てて声をかけた。
「一つ頼みがあるんだが、いいか?」
「頼み? ふむ。そなたは我をこの場から解き放ってくれた恩人だ。出来る限りの事はしよう」
動かしていた翼を一度止めたヒエロニムスに、ハジメは肩を竦めて答える。
「いや、そんな大したことじゃない。俺達の拠点がある場所に入れるかどうか、確認してほしいんだ。連絡方法は任せる」
ハジメ達がある拠点は、ヒエロニムスが封じ込められていた結界のさらに内側にある。
ヒエロニムスが以前、その拠点がある場所を訪れた時は、また別の結界のようなものがあって入ることが出来なかったといっていた。
その結界が、今回の件で破られたのかどうかを確認してほしかったのだ。
今後、この結界の先に住んでいるであろう住人達が、ハジメ達の拠点まで足を伸ばすことがあるかは分からないが、念のため知っておきたい。
「なるほど。そういう事なら引き受けよう」
幸いにも、ヒエロニムスはそう快諾した。
「手間をかけさせて済まない」
「何、気にするな。我一人ではもとの結界を破ることはできなかった。このくらいの事はいくらでも協力するぞ」
「そうか。ありがとう」
ハジメがそう言って頭を下げると、ヒエロニムスは再び翼を動かし始めた。
「では、我はそろそろ行く。折角だから早く今の世界を見てみたいからな」
「ああ。あまり脅しかけたりするなよ?」
「分かっている。我も面倒はごめんだからな。では、我はそろそろ行く」
「ああ」
ハジメが頷くのを見てから、ヒエロニムスは上空へと舞い上がった。
一応翼を動かしてはいるが、その巨体を持ちあげるには翼の動きだけでは間に合わないだろう。
翼を動かしたことによる風がほとんど吹いていないのだ。
自分が知る鳥たちが飛ぶ法則とはまた違った方法で飛んでいるんだろうなと、どうでもいいことを考えるハジメなのであった。
ヒエロニムスが飛び立つのを見送ったハジメたちもその場に留まることはなく、すぐに拠点へと戻った。
拠点に戻ってすぐにヒエロニムスからの報告が届いたが、結局ハジメ達の拠点には近づくことが出来なかったとのことだった。
『破結石』を作るための特別体制になっていた状態も解除されて、いつもの日常へと戻ることになった。
念のため今回の結界を破るイベントについて、掲示板へと報告もしておいた。
他に黙っていたプレイヤーもいたのかもしれないが、生産組で第三段階を超えたという報告はハジメが初めてだったようだ。
戦闘なしに攻略が進んだことで、掲示板内ではプチお祭り状態になっていた。
戦闘して越えなければならないと思って二の足を踏んでいた生産者たちの第三段階の攻略もこれで進むかもしれない。
そんな騒ぎをよそに、ハジメは新たなアイテムの作成へと取り掛かるのであった。
名前:ハジメ(1)
種族:ヒューマン(人間)
職業:上級作成師LV45(master!)→特級作成師LV1(New!)
体力 :4488(+50)→4548(+60)
魔力 :7262(+80)→7362(+100)
力 :513(+8)→523(+10)
素早さ:642(+10)→653(+11)
器用 :1313(+20)→1336(+23)
知力 :764(+13)→778(+14)
精神力:963(+15)→980(+17)
運 :20
スキル:上級調合LV10、上級魔力付与LV11(1up)、魔付調合LV11、鑑定LV20(master!)、俊敏LV14、短剣術LV11、槍術LV4、風魔法LV14(1up)、地魔法LV14(1up)、水魔法LV14(1up)、
火魔法LV14(1up)、収納LV19、宝石加工LV20(master!)、装飾作成LV15(1up)、光魔法LV14(1up)、闇魔法LV14(1up)、錬金術LV15(2up)、気配察知LV4、魔力操作LV14(2up)、空き×4(1up)
職業スキル:短縮作成
名前:ハジメ(2)
種族:ヒューマン(人間)
職業:特級作成師LV5(4up)
体力 :4791(+243)
魔力 :7767(+405)
力 :564(+41)
素早さ:698(+45)
器用 :1431(+95)
知力 :834(+56)
精神力:1050(+70)
運 :20
スキル:上級調合LV12(2up)、上級魔力付与LV12(1up)、魔付調合LV12(1up)、鑑定LVMAX(master!)、俊敏LV14、短剣術LV11、槍術LV4、風魔法LV15(1up)、地魔法LV15(1up)、水魔法LV15(1up)、
火魔法LV15(1up)、収納LV19、宝石加工LV20(master!)、装飾作成LV16(1up)、光魔法LV15(1up)、闇魔法LV15(1up)、錬金術LV16(1up)、気配察知LV4、魔力操作LV15(1up)、空き×5(1up)
職業スキル:短縮作成
名前:ルフ
種族:フェンリル
職業:魔狼LV26(3up)
体力 :9367(+395)
魔力 :3774(+211)
力 :1074(+62)
素早さ:616(+36)
器用 :319(+19)
知力 :334(+22)
精神力:369(+21)
運 :10
スキル:牙撃LV19(1up)、激爪LV16(1up)、威圧LV18、俊敏LV18(1up)、気配察知LV19(1up)、収納LV17、火魔法LV16、魔力操作LV18(1up)、報酬LV17、
体当たりLV16(1up)、水魔法LV16、風魔法LV13(3up)、土魔法LV13(3up)、遠距離走法LV10(2up)、隠密LV12(3up)、空き×4(1up)
職業スキル:遠吠え
固有スキル:鋭敏な鼻
名前:イリス
種族:牛獣人
職業:農婦(達人)LV11(4up)
体力 :6774(+522)
魔力 :3951(+322)
力 :535(+57)
素早さ:259(+34)
器用 :580(+52)
知力 :354(+45)
精神力:490(+57)
運 :10
スキル:上級栽培LV12(2up)、料理LV19、棍棒術LV12、怪力LV18、採取LV20(master!)、成長促進LV20(master!)、水魔法LV20(master!)、採掘LV9、
地魔法LV19(1up)、収納LV17(1up)、収穫LV17(2up)、体術LV6、魔力操作LV12(2up)、交渉LV8(2up)、鑑定LV6(1up)、空き×5(1up)
職業スキル:種子作成、農地管理
固有スキル:緑の手
名前:バネッサ
種族:アマゾネス
職業:戦乙女LV29(3up)
体力 :7229(+362)
魔力 :4078(+240)
力 :718(+46)
素早さ:543(+40)
器用 :428(+31)
知力 :515(+36)
精神力:391(+30)
運 :10
スキル:上級剣術LV2(2up)、槍術LV18、弓術LV17(1up)、体術LV20(master!)、火魔法LV17(1up)、風魔法LV17(1up)、水魔法LV10(1up)、地魔法LV10(2up)、
魔力操作LV19(1up)、収納LV16(1up)、解体LV14(1up)、鷹の眼LV15(1up)、俊敏LV11(1up)、空き×3
名前:エイヤ
種族:ダークエルフ
職業:魔導士LV19(3up)
体力 :1902(+182)
魔力 :5282(+424)
力 :287(+21)
素早さ:338(+24)
器用 :486(+37)
知力 :588(+41)
精神力:415(+31)
運 :10
スキル:火魔法LV20(master!)、風魔法LV20(master!)、土魔法LV16(3up)、水魔法LV16(3up)、精霊術LV20(master!)、弓術LV12(2up)、鷹の目LV13(3up)、魔力操作LV20(master!)、
料理LV14(1up)、精霊魔具作成LV8(1up)、交渉LV3、空き×4




