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(5)新たな職業スキルと勝利

 ハジメが『破結石』の作成に必死になっている時と同じくして、イリスの職業が<master!>になった。

 次に出てきていた上級職業は、<農婦ファーマー(達人)>だったので、そのまま選んだ。

 イリスの転職も既に二回目となったのだが、更に上級職業があるのかどうかはよくわからない。

 掲示板でも四次職に関しては情報が出ていなかった。

 ただし、基本職とされている戦士などの<master!>がLV30だったために、それよりも低いレベルで<master!>となった職を一次職にするかどうかは、意見が分かれている。

 それはともかくとして、<農婦ファーマー(達人)>に転職したところで、新たな職業スキルを覚えた。

 それは<農地管理>と言うスキルで、農地を俯瞰して管理することが出来るというものだ。

 言葉にすると分かりづらいが、要するにそれこそゲームのマップ画面のように指定した範囲の農地を管理できるという優れもののスキルだ。

 既にイリスが持っている<上級栽培>や<収穫>と組み合わせて使うと、今までに比べるとチートに近いスキルとなる。

 ただし、ちゃんと使ってみないことには、どの程度「使える」スキルなのかは分からないというのが、一度試しに使ってみたイリスの弁だった。

 とはいえ、そもそも<農婦>や<農夫>はイリス専用スキルというわけではないので、<作成師>の職業スキルほどチート感は出ないだろうとハジメは考えている。

 付け加えると、最初はチート感がある専用職業も転職を繰り返してた基本職から始めたプレイヤーと、ほとんど変わらないのではないかと言われている。

 それは、上位職になるほど似たようなスキルが出てくるだろうと考えられているためだが、実際のところはまだよくわかっていないのが実態だった。

 だがそれも、何れ時が解決するだろうと言われている。

 何しろ基本職で始めているプレイヤーは、数が多い上に着実に実力を伸ばしてきているからだ。

 どういう結論になるかはともかく、答えが出るのはそう遠くない話だろう。

 

 ハジメが作業兼研究部屋から出てくると丁度イリスと出くわした。

「あ、ハジメ様。作業はよろしいのですか?」

「ああ。丁度区切りがいいから一旦休みだ。そう言えば、新しいスキルはどうだ?」

 新しいスキルというのは、勿論<農地管理>のスキルの事だ。

「そうですね。使い方次第では、高品質の生産品が大量生産できそうです」

「へえ。それはいいな。それで、使い方というのは?」

「<農地管理>で一度にまとめて種を植えたり収穫したりできるのですが、普通の農作業と違って品質が一定にならないようなのです」

 イリスが言った言葉で、ハジメは彼女が何を言いたいのか理解できた。

「ああ、なるほど。無駄が発生するという事か」

「はい。高品質の収穫物を増やすには農地を広げればいいのですが、その分品質が低い収穫物も増えます」

「なるほどなあ」

 もし品質を一定にすることが出来るのであれば、それこそ高品質の収穫物を大量に生産することも出来たのだが、そう甘くはなかったらしい。

 多少残念そうな表情を浮かべるハジメに、イリスが付け加えて言った。

「どうにかして高品質の割合が増やせないか、色々試してみます。まだこのスキル自体がよくわかっていないこともありますから」

「そうだな。まあ、あまり無理はしないようにな」

「はい。ありがとうございます」

 ハジメの気遣いに、イリスは嬉しそうな表情で頭を下げた。

 

 そんな会話をしたあと、イリスは食事の準備に取り掛かりはじめた。

 もうすぐ夕飯の時間だ。

 討伐に向かっているバネッサたちもそろそろ戻ってくるだろう。

 彼女たちは、既にノームたちの拠点からさらに奥に行った場所を攻略している。

 第三エリアについては、当初第一エリアの拡大版と思われていたのだが、最近ではどうも様子が違うと言われている。

 第一エリアの第三段階のように行き先が途切れている場所が無いのだ。

 これは、第三エリアが第一エリアと比べ物にならないくらい広いためなのか、それとも第一エリアのように閉鎖された空間ではないためなのかは分かっていない。

 ただし、未だに第三エリアで街が発見されたという報告はされていない。

 そのため、どちらの可能性もあるという事でいまだに分かっていないというのが実情だった。

 それはともかくとして、現在バネッサたちが攻略している場所は、彼女たちのレベルからすれば丁度いい場所のようで、かなりの勢いで成長している。

 ハジメもイリスもそれぞれに成長が早まっているので、全体的に急成長している感じだ。

 といっても、流石にトップを走っている戦闘組には戦闘では勝てるわけではない。

 その辺りは当然と言えば当然だろう。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 エイヤの<魔力操作>のスキルが<master!>状態になっているが、残念ながらその上位に当たるスキルは無かった。

 掲示板情報によると、補助スキルに当たるスキルには上級スキルが無いということだった。

 その他の戦闘・魔法・生産スキルにはきちんと上級スキルが存在している。

 補助スキルに関しては、今のところ複数の組み合わせで派生するスキルが無いか検証している状態だ。

 そんなことをエイヤが自分で掲示板で調べたようだ。

 正直、最近のハジメは攻略アイテムを作るのに手いっぱいになっているので、各自で動いてくれるのは非常に助かる。

 そして、調べた上で疑問に思ったことを夕食の最中に聞いてきた。

 ちなみに、どんなに忙しくなっても、遠征しているとき以外は、朝食と夕食は欠かさず一緒に食べている。

「ということは、魔力操作はこれ以上上手くならないってこと?」

 そのエイヤの疑問にハジメが首を傾げた。

「どうだろうな? その結論はまだ早いんじゃないか?」

「というと?」

「組み合わせの派生スキルに関しては、まだわかっていないんだろう? それに、上級魔法スキルが条件になっているかもしれない」

 ハジメが言っているのは、ある程度のレベルの上級魔法スキルが、魔力操作の上位スキルの解放の条件になっている可能性があるということだ。

「エイヤも精霊術が上級になったんだ。上級精霊術を鍛えて行けば、何かが出てくる可能性もある」

「そっか」

 ハジメの言葉に、エイヤも頷くのであった。

 

 エイヤがスキルについて話をしてきたついでに、今後のスキルの扱いについて話をすることにした。

 今までは、一応パーティのバランスを考えてスキルを付与して来たのだが、既にパーティの役割も固定してきた。

 さらに、メインとなるスキルが伸びてきているので、大きくバランスを崩すことも無くなった。

 そのため、今後空きスキルに関しては、各自自由につけて良いことにしたのだ。

「・・・・・・というわけで、今後は自分の好きなタイミングで好きにつけていい」

 ハジメの説明に各自頷いていたが、その後首を傾げたバネッサが聞いてきた。

「私達はいいけれど、ルフはどうするの?」

「それは勿論、この後も俺が付けるさ。まあ、よっぽどの物じゃない限りルフの希望通りに付けるよ」

 とはいえ、ルフのスキルを付ける際には、どうしてもある程度の会話が出来るイリスと一緒に付けることになる。

 結局、ルフに関しては、今までと全く変わらないのだった。

 

「それで、ハジメは今後スキルはどうするの? わざわざ今その話をしたってことは何か決めてあるのでしょう?」

 ルフでモフモフを堪能していたハジメに、バネッサが聞いてきた。

「ああ。決めてある」

「やっぱりね」

 バネッサは、質問というより確信をもって聞いてきたようだった。

「はっきり言えば、今はあのアイテムを作るので精いっぱいだからな。他のスキルにまで手をまわしている余裕がない」

「そうよね」

「生産を補助するようなスキルがあればそれを付けるかもしれないが、今のところは考えていないな。これで答えになったか」

「ええ。勿論よ。有難う。私も参考にするわ」

「ああ」

 どうやらバネッサは、今後の自分の方針を決めるために、ハジメに聞いてきたようだ。

 何やら考える様子を見せながら端末へと向かって行った。

 どんなスキルがあるのか、再確認するのだろう。

 その上で良いスキルがあれば、付ければいいと考えるハジメであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ハジメがイベント攻略アイテムの作成に励んでいる間に、次の全体イベントの期間がやって来た。

 残念がら回復薬系統の劇的な変化は起きなかったが、それでも以前の準備とは大違いになっている。

 長期保存は不可能だとしても、イベントの最中は保管が可能な回復薬も出てきていた。

 それだけではなく、以前のイベントでは交流の街に来ることが出来なかった生産職が増えているのも大きい。

 その中には、単独では戦闘レベルを上げるのが中々難しい農畜産業家達が多くいたのである。

 おかげで薬草などの生産量が増えたのだ。

 そうした様々な理由で、今回のイベントでは回復薬系統が不足状態になることはないと見積られている。

 

 勿論、そうした改善が行われたのは、回復薬作成に関わる生産組だけではない。

 戦闘組は鍛冶師たちと連携して、装備の更新も行われた。

 とはいっても、以前のイベントで懸念された水陸両方の性質を持つ装備を全員に用意するには時間が足りなさすぎる。

 ついでに、両方の性質を持つ装備は、どうしても高価になるためにそれだけの資産を持っている高ランク戦闘組から更新して行った。

 そうした装備に更新できなかった戦闘組は、代わりにアクセサリなどが回されることになった。

 勿論、そうした装備の購入は自腹なので、あくまでも任意である。

 ただし、前回のイベント攻略失敗の影響のためか、ほとんどの者はそうした対策を行っていた。

 結果として、生産組・戦闘組両方ともに万全の状態で今回の全体イベントに挑むという事になったのである。

 

 流石に全体イベントの最中は、攻略用アイテムの作成にかまけるわけにもいかず、ハジメは回復薬の作成に励んだ。

 今回は、イリスの生産力が上がったのと他のところから回される高品質の薬草があるために、材料不足になるという事は無かった。

 そのため、材料が手に入ったタイミングで、すぐに生産を行う事が出来たのである。

 とはいえ、薬草類の生産も余裕があったわけではない。

 結果からすれば、何とかぎりぎり足りたというのが実情だった。

 

 ハジメは、生産組のリーダーたちが集まる会議に顔を出していた。

 その場で今回のイベントが勝利に終わったことを確認した。

 室内の雰囲気は、喜びの感情も勿論あったが、それよりも安堵の方が大きかった。

「・・・・・・何とかなりましたか」

 今回も生産組のリーダーに選ばれたエルマーがそう呟いた。

 リーダーたちを含めて、この場に居る全員が安堵しているのにはわけがある。

 イベントの最終盤、前回は到達できなかった時間帯にモンスター達の襲撃が苛烈さを増したのである。

 その分回復薬の消費も激しくなった。

 最終日ということで余裕をもって用意はしていたのだが、回復薬系統の保管率は十%を切っていたのだ。

 これは、もう一当てモンスター達の襲撃があれば、間に合わなかった可能性もある数字だ。

 

 室内の重い空気を吹き飛ばすように、パティが殊更明るい声で言った。

「まあ、反省会は後でええとして、今は勝ったことを喜ぼうや!」

「それもそうだな」

 ヤーコブが同意して頷くと、参加者たちに笑顔が広がって行った。

 内情はどうあれ、結果的には初めて全体イベントに勝利することが出来たのだ。

 今はそのことを喜ぶのが先だろう。

 そんなこんなで、にわかに室内が喜びの声で騒めき始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 全体イベントが勝利で終わった翌日。

 戦闘組と生産組のリーダーたちが集まって、会議が開かれた。

 話す内容は、勿論全体イベントに関してだ。

 今回は無事に勝利で終わったが、生産組と同じように戦闘組でもいくつかの反省点があったようだ。

 今後のイベントの為にも両方で情報を共有しておく必要があるため集まることになったのである。

 それ以外にも話し合いが必要な重要な事があった。

 それは、今回のイベントの勝利報酬についてだ。

 勝利が決まってすぐに運営側からその報酬が発表されたのだが、その内容が何と交流の街の近くに鉱山地区を解放するという物だったのだ。

 夜が明けて日の光の下で街の北の方角を見てみると、確かに前日までは無かった大きな山が存在していたのである。

 何とも壮大な報酬に、プレイヤーたちが驚きに包まれたのは当然の事だった。

 

 報酬として現れた鉱山地区は、これから調査も含めて情報が出てくることになる。

 鉱山に入るために護衛が必要なのかとか、入ってからモンスターは出現してくるのかとか、いろいろな話が出てくるだろう。

 そうしたことで、トラブルが発生する可能性もある。

 そのためには、色々な規約を決める必要があるかも知れない。

 鉱山地区については、今後色々な議論を呼び起こすことになるのは間違いないのであった。

 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:上級作成師ハイクリエイターLV44(6up)

 体力 :4438(+302)

 魔力 :7182(+495)

 力  :505(+48)

 素早さ:632(+60)

 器用 :1293(+128)

 知力 :751(+80)

 精神力:948(+95)

 運  :20

 スキル:上級調合LV10(5up)、上級魔力付与LV10(6up)、魔付調合LV11(4up)、鑑定LVMAX(master!)、俊敏LV14(1up)、短剣術LV11、槍術LV4、風魔法LV13(2up)、地魔法LV13(2up)、水魔法LV13(2up)、

     火魔法LV13(2up)、収納LV19(1up)、宝石加工LV20(4up→master!)、装飾作成LV14(2up)、光魔法LV13(2up)、闇魔法LV13(2up)、錬金術LV13(3up)、気配察知LV4、魔力操作LV12(2up)、空き×3(1up)

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:魔狼LV23(4up)

 体力 :8972(+526)

 魔力 :3563(+280)

 力  :1012(+85)

 素早さ:580(+50)

 器用 :300(+25)

 知力 :312(+27)

 精神力:348(+30)

 運  :10

 スキル:牙撃LV18(1up)、激爪LV15(2up)、威圧LV18(1up)、俊敏LV17、気配察知LV18、収納LV17(1up)、火魔法LV16(1up)、魔力操作LV17(1up)、報酬LV17(1up)、

     体当たりLV15(1up)、水魔法LV16(1up)、風魔法LV10(3up)、土魔法LV10(3up)、遠距離走法LV8(3up)、隠密LV9(4up)、空き×3(1up)

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス(1)

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(一人前)LV45(master!)→農婦ファーマー(達人)LV1(New!)

 体力 :5472(+130)

 魔力 :3069(+80)

 力  :394(+14)

 素早さ:177(+8)

 器用 :450(+13)

 知力 :243(+11)

 精神力:345(+14)

 運  :10

 スキル:上級栽培LV5、料理LV18、棍棒術LV12、怪力LV17、採取LV20(master!)、成長促進LV18、水魔法LV16、採掘LV9、

     地魔法LV16、収納LV15、収穫LV13、体術LV6、魔力操作LV7、交渉LV3、鑑定LV4、空き×3(1up)

 職業スキル:種子作成、農地管理

 固有スキル:緑の手

 

 名前:イリス(2)

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(達人)LV7(New!→6up)

 体力 :6252(+780)

 魔力 :3629(+560)

 力  :478(+84)

 素早さ:225(+48)

 器用 :528(+78)

 知力 :309(+66)

 精神力:433(+84)

 運  :10

 スキル:上級栽培LV10(5up)、料理LV19(1up)、棍棒術LV12、怪力LV18(1up)、採取LV20(master!)、成長促進LV20(2up→master!)、水魔法LV20(2up→master!)、採掘LV9、

     地魔法LV18(2up)、収納LV16(1up)、収穫LV15(2up)、体術LV6、魔力操作LV10(3up)、交渉LV6(3up)、鑑定LV5(1up)、空き×4(1up)

 職業スキル:種子作成、農地管理

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦乙女LV26(6up)

 体力 :6867(+728)

 魔力 :3838(+483)

 力  :672(+92)

 素早さ:503(+80)

 器用 :398(+60)

 知力 :479(+72)

 精神力:361(+64)

 運  :10

 スキル:上級剣術LV7(4up)、槍術LV18(1up)、弓術LV16(1up)、体術LV20(2up→master!)、火魔法LV16(2up)、風魔法LV16(2up)、水魔法LV9(3up)、地魔法LV8(2up)、

     魔力操作LV18(1up)、収納LV15(1up)、解体LV13(1up)、鷹の眼LV14(1up)、俊敏LV10(3up)、空き×3(1up)

 

 名前:エイヤ

 種族:ダークエルフ

 職業:魔導士LV16(7up)

 体力 :1720(+423)

 魔力 :4858(+988)

 力  :266(+50)

 素早さ:314(+59)

 器用 :449(+87)

 知力 :547(+97)

 精神力:384(+74)

 運  :10

 スキル:火魔法LV20(1up→master!)、風魔法LV20(1up→master!)、土魔法LV13(4up)、水魔法LV13(4up)、精霊術LV20(master!)、弓術LV10(3up)、鷹の目LV12(4up)、魔力操作LV20(master!)、

     料理LV14(1up)、精霊魔具作成LV7(1up)、交渉LV3(1up)、空き×4(2up)

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