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(2)ヒエロニムス

 第一エリア第三段階への攻略準備を着々と進めていき、いよいよ全ての用意が整った。

 第三段階へ半日ではつくことが出来ない距離があるのだが、結界石と転移石を駆使して夜の間は拠点へと戻ってくることになっている。

 別にこれはハジメたちだけが取っている方法ではなく、戦闘組の第三段階攻略の方法として示されている。

 実際、結界石が出始めた当初は、チートアイテムのように扱われていた。

 野営をする必要もなく、夜の間は拠点に戻ることが出来るようになった結界石は、そう思われても当然かもしれない。

 結界石を最初に作ったハジメとしては、さらに発展させた(?)使い方も思いついている。

 だが、思い付きだけで全く形になっていないので、後回しにしているのだった。

 

 そんな余談はともかくとして、ハジメたちは順調に第三段階へと向かっていた。

 そもそも第二段階までは、人数が少ない頃にも来たことがある。

 出現モンスター的には、どうこうなる相手ではないのだ。

 問題は第三段階に入ってからになる。

 実際、掲示板でも第三段階は全くの別物とさえ言われていた。

 当然ハジメたちもそれを覚悟して第三段階へと向かった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 第三段階へは徒歩で八時間程度と言われているのだが、焦らず翌日に入るように調整して向かった。

 勿論、ゆっくり進むだけではなくルート上で採取をしながら進んでいる。

「やっぱり<鑑定>持ちのハジメがいた方が、色んなものが見つけやすいわね」

 ハジメが歩きながら色々な物を見つけていくのを見て、バネッサがそんなことを言って来た。

「既にスキルを埋めてしまったから今更だがな」

 ハジメも肩を竦めて答える。

 空きスキルを残しているので、そこに<鑑定>を入れればいいのだが、そこまでしてほしいスキルかというと微妙な所だ。


 そんなことを話したハジメに、バネッサが頷いた。

「それもそうね」

「ただ、イリスには付けておいた方が良かったかもしれないが」

 イリスが農産物を収穫する際には、鑑定を行わずに採取をしている。

 それは、イリス自身の経験を元に収穫をしているので、鑑定を使う商人パティに卸す時にはランクが違っている可能性もある。

 もっとも、イリスが卸す農産物は常に高い評価をもらっているので、今まで不自由に感じたことはないのだが。

「あまり今まで不自由に感じたことは無かったので気にしたことはありませんでしたが、交渉スキルを付けた以上あったほうが良いかもしれません」

 基本的に、交渉スキルと鑑定スキルはセットになっていると言ってもいい。

「そうだな。そう言えば、スキルを付けた後で一つ分空きスキルが増えていたよな?」

「はい」

 スキル整理をした後で、数日間連携を確かめるための戦闘を行い職業レベルが上がっていた。

 その際に空きスキルが増えていたのだ。

「だったら拠点に戻った時に、鑑定スキルを付与しておくか」

「分かりました」

 イリスにとっても否やはない。

 ハジメの言葉に素直に頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 仮拠点を作って転移石で本拠点に戻り、予定通りイリスに<鑑定>スキルを付けた。

 翌日はまた第三段階への攻略という事になる。

 夜の間に本拠点で就寝するのは、既に戦闘組の間では定番のパターンとなっている。

 冒険らしくなくて味気ないといって、敢えて仮拠点でテントを張って寝泊まりする戦闘組もいるようだが、ハジメたちはそんな酔狂なことをするつもりはない。

 ついでに本拠点に戻ると、アイテム生産も行えるので都合が良いのだ。

 

 そんな感じで翌日も攻略を進めた。

「・・・・・・もういい加減第三段階へ入っているよな?」

 足を進めながらハジメは、隣にいたエイヤへと聞いた。

 森の中を進んでいるので、エイヤに聞くのが一番いいのだ。

「間違いなく」

 そのエイヤも言葉上は断言しているのだが、若干首を傾げている。

 ちなみに、他の二人も似たような表情になっている。

 ルフの表情までは読めないのだが。

 

 彼らがそんな表情になっているのには訳がある。

 時間と距離で言えば間違いなく第三段階へと入っているのだが、敵の出現率が思ったほど高くないのである。

 確かにレベルで言えばワンランク上の敵が出てきているが、掲示板で騒がれているほどの出現率ではない。

 短時間の休みを取ろうと思えば、取れてしまうくらいだ。

「もしかして、生産職は第三段階でも出現率が低くなっているのか?」

「考えられなくはないけれど、断定するには情報が足りないわ」

 ハジメの言葉に、バネッサがウーンと首を捻りつつ答えた。

 戦闘中はイケイケドンドンなバネッサも普段(?)は冷静なのだ。

 

 そもそも生産組の第三段階の攻略情報は、全くと言って良い程流れていない。

 既に攻略に行っている者がいて情報を出し渋っているのか、それとも全く行っている者がいないのかも分からない。

 ハジメは一組も攻略に行っている者がいないとは考えていない。

 今現在のハジメたちは余裕を持って攻略できているが、それは第三段階のノームたちのいる拠点周辺で狩りを続けていたからだ。

 ハジメとイリスはともかくとして、バネッサたちは個人で戦闘組のトップ百を狙えるくらいの実力はある。

 ちなみにバネッサたちがそこまでレベルを上げられているのは、本人たちの努力もあるがハジメとイリスの稼ぎでトップクラスの装備を揃えられているおかげでもある。

 勿論、装備に振り回されないだけの実力もあるのだが。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 訝しく思いながらもさらに探索を進めていった。

 だが、結局その日は、特に大きな変化も見つけられずに、仮拠点を作ってお開きとなった。

 動きがあったのはその翌日のことである。

 

 ハジメ達は当然のように、周囲を警戒しながら歩いていたのだが、ルフが急に警戒を強めたのだ。

 最初はピタリと歩みを止めて、ある一方向を睨んだままグルグルと喉を鳴らしていた。

 明らかに戦闘態勢になっている様子だった。

「・・・・・・あちらの方に、何かありそうか?」

 ルフの様子を見て、ハジメがエイヤへと確認を取った。

 ルフの次に索敵範囲が広いのは、精霊魔法が使えるエイヤなのだ。

 だが、そのエイヤは首を振った。

「私はまだ何も。こういう時は、ルフの方が早いから」

「そうか」

 エイヤの答えに、ハジメは短く答えた。

 

「ルフはこのまま進めそうか?」

 最大限の警戒を続けているルフを見て、ハジメは確認を取った。

 この先に待っているであろう敵が、恐らくエリアボスであることはルフの様子を見て既に確信している。

 こんな状態になったルフは見たことが無いからだ。

 場所とそのルフの様子を見れば、結論は一つしかない。

 だが、無理にルフを動かしたとしてもいざというときに役に立たない可能性があるのだ。

「進むのは、特に問題なさそうです」

 イリスがルフに確認を取って、そう返事を返して来た。

 こういう時は、ルフと簡単な会話が出来るイリスがいると便利だ。

「そうか。それじゃあ、このまま進もう」

 ハジメがそう言って、一行は再び歩みを始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 しばらく進んで見つけた目の前にある光景に、ハジメは思わず息を飲んだ。

 もともとゲームのような世界にいるのだ。

 もしかしなくとも、いつかは会う事もあるかも知れないと想像はしていた。

 元の世界では空想上の生き物だったその生物は、間違いなくモンスターを含めた生物の頂点にいるべき存在だと思わせる威圧感を放っていた。

 今ハジメたちの目の前にいるそのモンスターは、まごうことなきドラゴンだ。

 姿形は、東洋で語られているヘビに手足が生えているような姿の竜ではなく、西洋でよく登場しているドラゴンだ。

 そのドラゴンは、深い森林が続いている中でそこだけぽかりと空が見えている空間に身を置いていて日の光を浴びている。

 全身にある緑の鱗が、日の光を浴びてきれいに反射していた。

 もし鱗の一枚でも手にすることが出来れば、どの宝石にも負けない程の輝きを放つはずだ。

 とっくに武装しているハジメたちのことには気づいているのだろう。

 だが、それでも悠然と地べたに身を横たえている。

 ハジメ達の実力では、その身に傷一つ付けられないことがわかっているのだ。

 

 一方で、ハジメ達も今の実力ではとてもかなわないと肌で感じていた。

 逆に、何故このような所に、生物の頂点たるドラゴンがいるのか分からない。

 第三段階を越えるためのイベントだという事は分かるのだが、とても敵うはずがない相手なのだ。

 いくらなんでも周辺に出てくるモンスターと比べて、格が違いすぎだった。

 そうは言ってもイベントが進まないことには第三段階を越えることが出来ない。

 決心したハジメは、ドラゴンのいる場所へとゆっくりと進んで行った。

 

「ほう。我の姿を見てなお、近づいてくるか」

 ハジメ達がある程度の距離まで近づくと、ドラゴンから話しかけて来た。

 地を響かせるようなその声は、口が動いているようには見えなかったが、しっかりと耳を伝って聞こえて来た。

 その不思議な感覚に驚きつつ、それでもハジメはしっかりと受け答えをした。

 ドラゴンの姿を見てからこの場所に来るまで、ある程度の距離があったのだ。

 しっかりと考える時間はあった。

 

 ある程度の傍まで近づいたハジメは、ドラゴンに対して頭を下げた。

「この辺りの主かと存じます。突然の対面、失礼いたします」

 明らかに格上の相手だ。

 ハジメとて、普段の対応とは違い、礼節を重んじる挨拶くらいは出来る。

 もっとも、相手がそれを嵩に礼を失した態度を取ってくる可能性もあるのだが、それは賭けになる。

 ただし、いきなり攻撃してくるような相手ではないことから、ある程度は大丈夫という考えもあるのだが。

「・・・・・・ほう。それなりの態度が取れるようだな」

 最初の挨拶が功を奏したのか、ドラゴンは少し興味を示したような声色になった。

「だが、そのような態度は好ましくない。普段通りの言葉で話すがいい」

 どういうつもりなのかは分からないが、深緑色のドラゴンがそんなことを言って来た。

 あるいは次のハジメの態度で、今後のことを見極めるつもりなのかもしれない。

 それに気付いた上で、ハジメも堅苦しい態度を止めることにした。

「それはありがたいな。慣れているとはいえ、四六時中気を遣って話すのは疲れる」

 態度を急変させたハジメに、ドラゴンは特に怒るでもなく言葉を発した。

「さもありなん。美辞麗句で飾った言葉よりも、本音で語り合う方が建設的だ」

 ハジメの台詞に、ドラゴンは同意する言葉を向けてくるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 一方で、ハジメがドラゴンと普通に会話しているのを見たサポートキャラの面々は、唖然とした思いを抱いていた。

 目の前にいるドラゴンは、どんな世界においても最強に例えられる生物だ。

 それが、襲って来る気配がないとは言え、ごく普通に会話をこなしている事自体が信じられないのだ。

 彼らのそんな思いを余所に、ハジメとドラゴンの会話は続けられていた。

「そういえば、名前はあるのか?」

 突然のハジメの問いに、ドラゴンは咄嗟に返答が出来なかった。

「名前? 我のか?」

「ああ。主とかドラゴンとかは、お前の個体名ではないだろう?」

 ハジメにしてみれば、何となく聞いてみた、という感じだったのだが、突然ドラゴンが笑い出した。

 ただ、笑うと言ってもその巨体が振動するのだから、かなり迫力があった。

「クックック。我に名前を聞いてきたのは、其方が初めてだ」

「そうなのか? お互いを知るのには名前から、だと思っていたが?」

 首を傾げるハジメに、ドラゴンは変わらず楽しそうに続けた。

「そもそも我に会いに来るような酔狂者は、我を倒しに来るような者だけだったからな。挨拶しようという者などいなかった」

 若干寂しそうな声色になったドラゴンに、今度はハジメが笑った。

「なるほどな。という事は、俺たちが初めてというわけだ」

「クック。そうなるな。・・・・・・いや、話がそれた。それで我の名前だったな」


 ドラゴンは、一拍置いてからさらに続けて言った。

「我の名前は、ヒエロニムスと言う」

「そうか。俺の名前は、ハジメだ」

「フム。ハジメか。それで? 後ろにいる仲間たちも紹介してもらえるのか?」

 お互いに名乗った後は、ヒエロニムスがハジメの仲間たちへと視線を向けた。

 

 ヒエロニムスの視線を受けたイリスたちは緊張で身を固くしたが、ハジメはそれに頓着せずに一人一人の紹介をして行った。

 面白かったのが、一番最初に恐る恐るヒエロニムスに近づいたのが、ルフだったことだ。

 ただ、一度近づいて攻撃されないことがわかると、後は遠慮なしにいつものように(?)フンフンと匂いを嗅ぎまわっていた。

 そんなルフの様子を見て、他のメンバー達もようやく緊張を解くのであった。

 名前:ハジメ

 種族:ヒューマン(人間)

 職業:上級作成師ハイクリエイターLV33(1up)

 体力 :3882(+52)

 魔力 :6279(+80)

 力  :374(+9)

 素早さ:471(+11)

 器用 :954(+20)

 知力 :602(+14)

 精神力:773(+16)

 運  :20

 スキル:上級調合LV3、上級魔力付与LV2、魔付調合LV4(1up)、鑑定LV18(1up)、俊敏LV13(2up)、短剣術LV11(1up)、槍術LV4(1up)、風魔法LV10、地魔法LV10(1up)、水魔法LV10(1up)、

     火魔法LV10(1up)、収納LV17(1up)、宝石加工LV11、装飾作成LV10、光魔法LV10、闇魔法LV10、錬金術LV9、気配察知LV4(1up)、魔力操作LV5(2up)、空き×1

 職業スキル:短縮作成

 

 名前:ルフ

 種族:フェンリル

 職業:魔狼LV15(1up)

 体力 :7921(+132)

 魔力 :3002(+70)

 力  :842(+21)

 素早さ:480(+12)

 器用 :251(+6)

 知力 :257(+8)

 精神力:288(+7)

 運  :10

 スキル:牙撃LV15(1up)、激爪LV11(1up)、威圧LV16(1up)、俊敏LV16、気配察知LV17(1up)、収納LV15(1up)、火魔法LV14、魔力操作LV15(1up)、報酬LV15、体当たりLV13、

     水魔法LV14(1up)、風魔法LV5(2up)、土魔法LV5(2up)、遠距離走法LV3(1up)、隠密LV3(1up)、空き×2(1up)

 職業スキル:遠吠え

 固有スキル:鋭敏な鼻

 

 名前:イリス

 種族:牛獣人

 職業:農婦ファーマー(一人前)LV42(1up)

 体力 :5049(+82)

 魔力 :2835(+50)

 力  :368(+10)

 素早さ:167(+7)

 器用 :435(+14)

 知力 :229(+7)

 精神力:325(+13)

 運  :10

 スキル:上級栽培LV3、料理LV17(1up)、棍棒術LV12(2up)、怪力LV17(1up)、採取LV19、成長促進LV17、水魔法LV16(1up)、採掘LV9、

     地魔法LV15、収納LV14(1up)、収穫LV13、体術LV5(2up)、魔力操作LV5(2up)、交渉LV1(New!)、鑑定LV3(New!→2up)、空き×1

 職業スキル:種子作成

 固有スキル:緑の手

 

 名前:バネッサ

 種族:アマゾネス

 職業:戦乙女LV17(1up)

 体力 :5777(+122)

 魔力 :3110(+80)

 力  :534(+16)

 素早さ:393(+13)

 器用 :308(+10)

 知力 :369(+13)

 精神力:264(+11)

 運  :10

 スキル:上級剣術LV1(1up)、槍術LV16(1up)、弓術LV15(1up)、体術LV17、火魔法LV13(1up)、風魔法LV13(1up)、水魔法LV5(2up)、地魔法LV5(2up)、

     魔力操作LV16(1up)、収納LV14(1up)、解体LV11、鷹の眼LV13(1up)、俊敏LV5(2up)、空き×1

 

 名前:エイヤ

 種族:ダークエルフ

 職業:魔導士LV5(2up)

 体力 :1054(+121)

 魔力 :3307(+183)

 力  :186(+14)

 素早さ:223(+16)

 器用 :314(+25)

 知力 :395(+27)

 精神力:270(+21)

 運  :10

 スキル:火魔法LV19、風魔法LV19、土魔法LV6(2up)、水魔法LV6(2up)、精霊術LV19、弓術LV5(2up)、鷹の目LV6(2up)、魔力操作LV20(1up→master!)、

     料理LV12(1up)、精霊魔具作成LV5、空き×2(1up)

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