(1)攻略前準備
今話も含めて次話から金曜夜の更新になります。
交流の街の混乱は数日で落ち着いた。
今後どのように対応するかは、それぞれが空いた時間を使って連絡を取り合っていたようで、大きな混乱を起こすことは無かった。
交流の街が解放されてから数日後には、多くのギルドが結成されたと掲示板内で公表されている。
もともと裏で連絡を取り合っていたのを、正式に発表したのである。
その中には、ハジメが所属してパティがギルドマスターになっている「紅月華園」もあった。
「紅月華園」は、所属しているメンバーの数から、十本の指に数えられるほどの規模になっている。
ギルマスが商人であるパティであることから、生産組のギルドだと勘違いもされているが実はそうではない。
メンバーの四分の三以上は、パティの店の固定客である女性討伐組だった。
残りの四分の一は生産組だ。
生産組の中にはパティ以外の商人もいる。
ハジメはパティ以外には卸している商人はいないが、他の生産者の中には複数の商人に品物を卸していたりするので、その繋がりがあったりするのだ。
パティ自身が交流を結んでいる商人たちもいる。
「紅月華園」の所属してる討伐組は全てが女性プレイヤーになっている。
パティ自身は、メンバーが女性であることを特に縛ったわけではない。
だが、そもそもパティの店で売られている商品が女性向けになっているために、ギルドに所属する討伐組は女性メンバーのみと言う結果になったのである。
その中に所属している生産組の男性は、他の男性プレイヤーから白い目で見られていたりする。
「・・・・・・はあ。本当に勘弁してほしいな」
納品のためにパティの店に来たハジメは、来る前に受けた視線のことを思い出しため息を吐いた。
「ハハハ。そう言わんといてや。女性メンバーが多くなったのは、うちのせいやないで。自然にそうなったんや」
そう力説するパティだったが、品揃えを見る限りではどう考えてもパティの仕業だろう。
もっとも、こうなることはある程度ハジメも予測はしていたので、自業自得とも言えるのだが。
「そんなことよりも、日持ちする消耗品はまだ完成してへんの?」
「無茶を言うな。そんな簡単にできるようだったら、とっくに誰かが売り出しているだろう」
パティの無茶ぶりに、ハジメは若干呆れたように答えた。
全体イベントで露呈した問題は出来るだけ早く解決しないとならないのだが、そうそう簡単に解決できるものでもない。
「それもそうやね」
ハジメの答えを聞いたパティは、あっさりと頷いた。
既に出来ていると期待してわけではないのだ。
あくまでも話の種にしたかっただけだ。
「それで? 今日来たのはいつもの商品補充?」
「そうだ」
「それは助かるわ。すぐに検品するから品物出してや」
いつものように手慣れた様子で、パティはハジメが出して行く商品を検品していく。
回復薬は今でも不足の状態が続いているのだ。
一週間の間、無茶な攻略が出来なかった攻略組が、鬱憤を晴らすようにエリア攻略を進めている。
そのため回復薬の消費も、それに合わせるように増えている。
「相変わらず消耗品の消費は早いのか?」
「攻略組が、ここぞとばかりに討伐に出ているらしいからなあ。全く衰える気配が無いわ」
「ずっとこのままのペースが続くと、普段の供給も間に合わなくならないか?」
「流石にそれはないわ。これから遠征に行こうとしとるメンバーが買い占めてるだけやろ」
交流の街が閉鎖していて回復薬の買いだめが出来なかったために、遠征が出来なかったのだ。
そうしたプレイヤーが、遠征することを見越して買い占めを行っているのである。
とはいって、そうしたプレイヤーが攻略のために出発を始めているので、今のような動きがずっと続くわけではない。
いずれは全体イベント前の状態の戻るだろうと話して店を後にするのであった。
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本格的に第三エリアの攻略を進める前に、ハジメたちは各人のスキルを追加することにした。
イベントに合わせた準備でレベルが上がり空きスキルがかなり増えている。
この際なので、一気にそれを埋めることにしたのだ。
まずはハジメからだ。
調合のスキルが<master!>になった後に、<上級調合>のスキルが出ていたのですぐに変えておいた。
その後すぐに<魔力付与>のスキルが<master!>になった。
これも<上級魔力付与>に互換しておいたのだが、<魔力付与>がマスターしたタイミングで新しいスキルが増えていた。
そのスキルは<魔付調合>というスキルだった。
名前からするに調合スキルと魔力付与のスキルが合わさっているスキルのようだった。
残念ながら上級スキルや上級職上に関しては、<ヘルプ>にも情報が載っていないので手探りで効果を見極めていくしかない。
というわけで、早速<魔付調合>のスキルをセットした。
このスキルをセットしたからといって、<上級調合>や<上級魔力付与>のスキルが消えたりはしていない。
<魔付調合>のスキルは、これら二つのスキルとは別の物として扱われているらしい。
さらに、<魔付調合>はスキル枠を二つ分使っていた。
セットした瞬間に空きスキルが二つ分減っていたのだ。
これは、二つのスキルを合わせたようなスキルは枠を二つ分使う物があるという情報が、掲示板に出ていた。
<魔付調合>もこの条件に当てはまっていたらしい。
これで残りの空きスキルは四つ。
いつもの通り一つは空けておくとして残りの三つを何にするかだが、この後第三エリアに向かう事を考えて戦闘スキルか補助スキルをつけることにした。
ハジメのパーティは、スキル的に前衛が多い。
そのため中衛を埋めるために槍術を覚えた。
付け焼刃になるが、無いよりは遥かにましだ。
さらに、一気に戦闘スキルを覚えても生産系スキルと同じように器用貧乏になり兼ねないので、普段の行動でもレベルが上がると言れている補助スキルを覚えた。
追加したのは、気配察知と魔力操作だ。
気配察知はモンスターの気配を察知して逃げやすくするためだ。
魔力操作は生産には必要ないかと思っていたが、そもそも魔力を扱うための基本中の基本のスキルであるため、今更ながらに覚えることにした。
続いてルフだ。
いつものようにイリスに通訳をしてもらいながら四つ分のスキルを付与していく。
まず二つ分は、現状覚えられる魔法スキルの<土魔法>と<風魔法>を覚えさせた。
これで基本魔法の四種は全て覚えたことになる。
残りの二つは補助スキルの<遠距離走法>と<隠密>を付けた。
モンスター相手にどれほどの効果になるかは予想がつかないが、残念スキルにはならない物を選んだつもりである。
そろそろルフに付けるスキルは、どんなものを付けていいのかが分からなくなってきているので、空きスキルがさらに増えた場合は何を付けるのか悩むところだ。
耐性系のスキルがあればいいのだが、残念がらスキルの一覧には表示されていない。
それらのスキルはあることは確認されているのだが、どういう条件で発生するのかがわかっていないのだ。
ハジメたちのパーティでは誰も取得条件を満たしている者はいないのだった。
ルフに続いてイリスである。
まずは、<栽培>が<master!>になったので、<上級栽培>へと変更した。
全体イベントに気を取られてスキルの変更をサボっていたが、ようやく変更することが出来た。
空きスキルに付いては、四つ分がある。
イリスに関しては、戦闘スキルもさほどレベルが上がっていないので、今回に関しては全て補助スキルを埋めることにした。
まず一つ目が、戦闘に関わる<体術>だ。
続いて二つ目が、魔法に関する<魔力操作>。
最後の三つめが、<交渉>スキルを付けることにした。
最後の<交渉>スキルに関しては、普段はパティに卸しているので特に必要はないのだが、いずれエリア内の町に行くことになった時のことを考えて付けることにした。
ついでに、普段の交渉でもある程度の効果を期待している。
といっても、パティたちのような商人にLVで勝てるとは思えないのだが。
更にバネッサ。
まずは<剣術>が<master!>になっていたので、<上級剣術>へと変更。
さらに空きスキルには、魔法スキルの<水魔法>と<地魔法>、補助スキルの<俊敏>を付けた。
「こんなに一気に増えると、器用貧乏になりそうね」
「ああ。俺の生産スキルも似たようなもんだ。そろそろ空きスキルを埋めるだけじゃなく、既存のスキルを伸ばすことを考えた方が良いかもしれないな」
「そうねえ。でも、複合スキルみたいな物もあるのでしょう?」
複合スキルと言うのは、ハジメが覚えた<魔付調合>のようなスキルのことだ。
ただし、今のところ複合スキルが見つかっているのは、生産スキルだけで戦闘系スキルではまだ見つかっていない。
更に、複合スキルは必ず発現するという物でもないらしく、職業や種族に依存しているのではないかと掲示板では話題になっている。
ただし今のところ、はっきりとした結論は出ているわけではない。
「ああ。そのための枠は空けておいた方が良いかもしれないな。今はまだ戦闘スキルでは出てきてないようだから必要ないとは思うが」
「そうね。どちらにせよ、戦闘スキルは今の物を伸ばすだけで精一杯ね」
「わかった。新しくスキル枠が出来たらまた考えよう」
最初のうちは欲しかった空きスキルだったが、スキルが増えてくればそれが仇になってくる。
下手にスキルを取りすぎると器用貧乏になってしまうのだ。
今後は、空きスキルのままで残しておいた方が良いのかもしれない。
あるいは、生産スキルを付けるか。
いずれにせよ、今回は予定分は埋めたのでバネッサの分は終了となった。
最後にエイヤだが、まずは魔法使いがマスターになっているので職業の変更から行う。
「上級職で出ているのが魔導士か魔術師だけど、どっち選ぶ?」
「魔導士で」
<魔導士>にしてほしいと即答して来た。
もう一つある上級職の<魔術師>は、いわば属性魔法のスペシャリストという事になる。
その分、スキルレベルアップのボーナスがあるのだが、属性魔法は一種類しか使えなくなるという欠点もある。
一つの属性で上級スキルを極めた後に、次は別の属性を、と順々に転職していくことも検討されていたが、それが有利になるかどうかは分からない。
エイヤには、こうした利点欠点を話しておき、魔法使いのマスターする前にどちらに転職するかを決めておいてもらったのだ。
すぐに答えが出て来たという事は、事前に話をしておいたのは無駄ではなかったわけだ。
エイヤの希望通りに、職業を<魔導士>に変更した。
職業を変更したからと言って姿形が変わるわけではない。
「どう?」
一応エイヤに確認を取ったが、塔の本人も首を傾げた。
「特に変わったようには・・・・・・」
「まあ、それはそうか。上級職になった効果は、後で確認しよう。今はスキルを考えようか」
「うん」
エイヤの現在の空きスキルは全部で五つ。
いつものように一つの空きスキルを作っておくので、今回埋めるのは全部で四つだ。
といっても、他のメンバーのようにほとんど悩まずに決めることが出来た。
まずは、折角魔導士になったので、基本魔法四種の内残りの二つである<土魔法>と<水魔法>を覚えた。
残りは二つだが、まず一つはこれまで覚えてなかった戦闘系スキルを付けることにした。
「というわけで、戦闘スキルはどうする? 出来れば後衛のスキルが良いと思ったんだが」
ハジメがそう言うと、エイヤはちょっとだけ首を傾げた。
「戦闘スキルを付けるんだったら、剣術が良いと思ったんだけど?」
「剣術か。それだと前衛ばかりになってバランスが悪いんだがな」
現状、ハジメたちのパーティは、前衛に偏っている。
弓術をこなすバネッサは後衛も出来なくはないのだが、前衛のスキルが多いので今のままオールラウンダーでいてもらいたいのだ。
悩むハジメだったが、すぐにエイヤが別のスキルを言って来た。
「だったら弓術で」
「それだったら問題ないんだが、いいのか?」
「構わない。空きスキルが増えたらまた剣術を覚えればいいし」
あっさりとそう言ったエイヤに、ハジメも頷いた。
「だったら今回は弓術で、次は剣術だな。しかし、剣術に何かこだわりがあるのか?」
ハジメの問いかけに、エイヤはちょっと首を傾げた。
「そうじゃないけど・・・・・・武器は何を持つか考えたら、剣が思い浮かんだ」
「それはちょっと気になるな。何か前提武器とかあるのか?」
基本的にエイヤたちサポートキャラは、ハジメたちと違って前世(?)があるわけではなく、サポートキャラとして生み出された存在だと言われている。
だとすれば、所謂「こだわり」のようなものがあるわけではないはずなのだが、何があるのかもしれない。
ただし、そうしたことは掲示板でも特に話題になっていたことは無い。
「よくわからないよ」
言っている本人も首を傾げているので、ちょっとした予感のような感じなのだろう。
具体的に何か説明をしろと言われても困るといった感じだった。
「まあいいや。その辺は後で掲示板で確認して見よう。取りあえず今は弓術だな」
「それでいい」
多少の強引さは感じはしたが、今はパーティのバランスを優先することにした。
後日、ハジメが掲示板で確認をしたが、特にそう言った話は出ていなかった。
これで残り一つになったわけだが、後は弓術をサポートするための<鷹の目>をセットした。
とにかくこれがあると無いとでは、弓術スキルは雲泥の差だと評判だったからだ。
更に魔術スキルを遠距離で放つ際にも効果があると言われているので、これに関してはエイヤもすぐに同意することとなった。
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これで全員のスキルの準備が出来た。
その日から数日間は、新しいスキルに慣れるためと連携を形にするために、ノームの集落近辺で討伐を行った。
この間、生産系のスキルのLV上げがおざなりになってしまったが、こればかりはどうしようもない。
基本的に生産スキルと戦闘スキルを同時に上げることは出来ないのだ。
かといって、ずっと戦闘ばかりを行うわけにもいかないので、戦闘系スキルのLV上げはある程度の段階でやめておいた。
そして、次はいよいよ第三段階の攻略である。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:上級作成師LV32(2up)
体力 :3830(+103)
魔力 :6199(+160)
力 :365(+15)
素早さ:460(+21)
器用 :934(+40)
知力 :588(+27)
精神力:757(+30)
運 :20
スキル:調合LV20(master!)⇒上級調合LV3(New!→2up)、魔力付与LV20(2up→master!)⇒上級魔力付与LV2(New!→1up)、魔付調合LV3(New!→2up)、鑑定LV17(1up)、俊敏LV11(2up)、
短剣術LV10(2up)、槍術LV3(New!→2up)、風魔法LV10(1up)、地魔法LV9(1up)、水魔法LV9(1up)、火魔法LV9(1up)、収納LV16(1up)、宝石加工LV11、装飾作成LV10、
光魔法LV10、闇魔法LV10(1up)、錬金術LV9、気配察知LV3(New!→2up)、魔力操作LV3(New!→2up)、空き×1
職業スキル:短縮作成
名前:ルフ
種族:フェンリル
職業:魔狼LV14(2up)
体力 :7789(+262)
魔力 :2932(+140)
力 :821(+42)
素早さ:468(+25)
器用 :245(+19)
知力 :249(+15)
精神力:281(+15)
運 :10
スキル:牙撃LV14(1up)、激爪LV10(1up)、威圧LV15、俊敏LV16(1up)、気配察知LV16(1up)、収納LV14(1up)、火魔法LV14(1up)、魔力操作LV14(1up)、報酬LV15(1up)、体当たりLV13(1up)、
水魔法LV13(1up)、風魔法LV3(New!→2up)、土魔法LV3(New!→2up)、遠距離走法LV2(New!→1up)、隠密LV2(New!→1up)、空き×1
職業スキル:遠吠え
固有スキル:鋭敏な鼻
名前:イリス
種族:牛獣人
職業:農婦(一人前)LV41(2up)
体力 :4967(+161)
魔力 :2785(+102)
力 :358(+21)
素早さ:160(+12)
器用 :421(+28)
知力 :222(+17)
精神力:312(+25)
運 :10
スキル:栽培LV20(master!)⇒上級栽培LV3(New!→2up)、料理LV16(1up)、棍棒術LV10(2up)、怪力LV16(1up)、採取LV19(1up)、成長促進LV17(1up)、水魔法LV15(1up)、採掘LV9、
地魔法LV15(1up)、収納LV13(1up)、収穫LV13(1up)、体術LV3(New!→2up)、魔力操作LV3(New!→2up)、交渉LV1(New!)、空き×2(1up)
職業スキル:種子作成
固有スキル:緑の手
名前:バネッサ
種族:アマゾネス
職業:戦乙女LV16(2up)
体力 :5655(+262)
魔力 :3030(+161)
力 :518(+32)
素早さ:380(+26)
器用 :298(+21)
知力 :356(+24)
精神力:253(+22)
運 :10
スキル:剣術LV20(master!)⇒上級剣術LV2(New!→1up)、槍術LV15(1up)、弓術LV14、体術LV17(1up)、火魔法LV12(1up)、風魔法LV12(1up)、水魔法LV3(New!→2up)、地魔法LV3(New!→2up)、
魔力操作LV15(1up)、収納LV13(1up)、解体LV11(1up)、鷹の眼LV12(1up)、俊敏LV3(New!→2up)、空き×1
名前:エイヤ(1)
種族:ダークエルフ
職業:魔法使いLV30(master!)→魔導士LV1(New!)
体力 :811(+60)
魔力 :2941(+140)
力 :157(+7)
素早さ:191(+8)
器用 :263(+12)
知力 :341(+13)
精神力:229(+10)
運 :10
スキル:火魔法LV18(1up)、風魔法LV18(1up)、精霊術LV19(1up)、魔力操作LV19(1up)、料理LV10(1up)、精霊魔具作成LV5(1up)、空き×5(1up)
名前:エイヤ(2)
種族:ダークエルフ
職業:魔導士LV3(New!→2up)
体力 :933(+122)
魔力 :3124(+183)
力 :172(+15)
素早さ:207(+16)
器用 :289(+26)
知力 :368(+27)
精神力:249(+20)
運 :10
スキル:火魔法LV19(2up)、風魔法LV19(1up)、土魔法LV4(New!→3up)、水魔法LV4(New!→3up)、精霊術LV19、弓術LV3(New!→2up)、鷹の目LV4(New!→3up)、魔力操作LV19、
料理LV11(1up)、精霊魔具作成LV5、空き×1




