(10)ファーストコンタクト
※次回更新は、1/24の21時です。
第一エリアの第三段階がクリアされたという情報が出回る前の事。
ハジメたちは、ドルガド鉱山の第二段階を攻略しようと全メンバーで坑道を進んでいた。
引き続き結界石の効果を確認する目的もあるが、一番の目的は掲示板情報にあるイベントを確認することだ。
バネッサたちが三人で攻略していた時は、第二段階までは進んでいない。
人数的な問題もあるのだが、第二段階を攻略するには時間がかかりすぎるため、日帰りをしていたバネッサたちには攻略が難しかったのだ。
イベントを探すことにしたのは、きちんとクリアできた者には、良い事が起こっているためだ。
その効果はまちまちだが、少なくとも悪い方には行っていないために、せっかくなので探してみようという話になったのである。
第二段階を本格的に攻略するためには時間がかかるため、しっかりイリスと調整を行ったうえでの攻略となった。
結界石が使えるために遠征の攻略も楽になるというのも攻略に本腰を入れる理由になっている。
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「見事なもんだな」
バネッサたち三人が、襲い掛かって来たモンスターを討伐し終えた時のハジメの感想だ。
予想より遥かに連携が上手くいっているようで、普段戦闘に加わっていないハジメとイリスの出番は全くなかった。
三人の連携の中に入ってしまうと、逆に足手まといになる可能性もあったほどだ。
「これくらいは出来ないとね」
ハジメの賛辞に、バネッサが答えた。
倒したモンスターは、ルフが片っ端から<報酬>スキルを使ってアイテムに変換して、そのアイテムをエイヤが拾い集めている。
エイヤは<収納>スキルを覚えていないために、仕舞う事はできない。
既にエイヤは空きスキルが出来ているので、次のスキルは<収納>でもいいかなと考えていた。
そのために、少しの間せっかくのアイテムの事を忘れていた。
「・・・・・・おっと、忘れてた。エイヤ、収納石は使わないのか?」
ハジメの問いかけに、エイヤは不思議そうな顔になった。
「今から使ってしまうと、すぐにいっぱいになってしまうけど?」
「うん? いっぱいになったら空の物を貰えばいいんじゃないのか?」
「??」
首を傾げるエイヤに、ハジメは話の齟齬を感じた。
「エイヤが言いたいのは、収納石がいっぱいになったらもう自分はそれ以上の物を持てなくなると言いたいのよ」
バネッサがエイヤに言いたいことをフォローして来た。
エイヤが収納石を使っているのは、あくまでも自分が使うための回復薬などを入れるためだ。
しかも戦闘中に収納石から一々取り出すのは手間なので、使ったら空の瓶と交換するといった使い方をしている。
「ん? あれ? もしかして、収納石に物を入れたまま、<収納>スキルを使えることを知らないのか?」
バネッサとエイヤが言っている事と、自分が言いたいことの食い違いが分かったハジメが、二人にそう聞いてみた。
「え!? そうなの?」
「知らなかった・・・・・・」
二人がそう言うのを聞いて、ハジメもようやく納得した。
「収納石に物を入れたまま収納石の中に入れることはできないが、<収納>スキルを使うことは出来るんだよ」
ハジメの説明に、バネッサとエイヤは肩を落とした。
「そ、そういう事だったの・・・・・・」
「し、知らなかった・・・・・・」
肩を落とす二人を不思議そうな顔で見ていたイリスに、バネッサが確認をしてきた。
「イリスは知っていたの?」
「え? あ、はい。私は、ハジメ様から聞いていましたから。収穫物をまとめるのに一々倉庫に戻らなくて済むようになって楽になりました」
イリスの場合は、かさばる野菜などを収穫していることもあって、収納石は便利に使っている。
場合によっては、収納石に入れたまま納品することも出来るのだ。
<収穫>スキルで収穫した物は、<収納>スキルのスペースに入るので、一度取り出してから収納石に入れないといけなのだが、それでも収納石のおかげである問題が無くなった。
収穫したものを保管するする倉庫の問題があったので、余り多くの収穫が出来なかったのが、その問題がある程度改善した。
ちなみに最近では、イリスが作った農産物は、自分たちで食べる分を賄うだけではなく、パティを通じて他に卸したりするようになっていた。
すでにイリスが作っている野菜類は、徐々に評判が上がってきている。
「そう言えば、エイヤも空きスキルが出来てたから、拠点に戻ったら<収納>スキルを覚えるか?」
折角なので、魔法スキルにしようかとも考えていたのだが、今回の件を見てやはり<収納>スキルの方がいいと考え直してそう聞いた。
「是非! お願いします!」
勢い込んで言って来たエイヤに、ハジメは思わず一歩引いてしまった。
「<収納>スキルがあるとないのとでは、全然違うからね。空きスキルがあるのだったらそうしたほうが良いわ」
エイヤの様子を見て苦笑していたバネッサがそう言った。
普段攻略には参加していないハジメだったが、やはり戦闘組にとっては<収納>スキルのあるなしは、かなりの影響があるようだ。
今回のエイヤを見て、改めてそう感じるハジメだった。
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最初から遠征するつもりで来ているので、適当な場所を見つけてその日は坑道内で一泊することになった。
坑道といっても場所によっては、広くなっている所もある。
そこに結界石を使って安全な場所を確保すれば、一時的なセーフエリアになるのだ。
セーフエリアを作った後は、簡易テントを使って寝る場所を確保した。
その間、イリスは皆の食事を作っていた。
「遠征なのに、こんな美味しい食事を食べれるのは贅沢な気がするね」
食事中にエイヤがポツリとそう言って来た。
「そうね。そもそも手間をかけて食事を作ることなんて出来ないはずだし。何よりイリスの食事はいつもながら美味しいわ」
「あ、ありがとうございます」
バネッサの言葉に、イリスが頭を下げた。
結界石のおかげでモンスターの襲撃を気にせずに、食事その他の用意が出来たのでいつもと変わらないクオリティーになっている。
そう考えてみると、確かにかなりの贅沢と言えるかもしれない。
「もし第三段階でも結界石が使えるのだったら、攻略もはかどるだろうな」
「間違いなくそうね」
バネッサが同意するように頷いていた。
「出来ることなら第三段階を攻略して情報を出してほしいもんだ」
「フィールドボスが問題なんでしょうか?」
「そうみたいだな。まあ、ボスの所にたどり着く頃にはパーティが機能しなくなっているというのもあるみたいだが」
「連戦に次ぐ連戦で、休みもなしに移動していれば、そうなるわよね」
「あの・・・・・・私達は、攻略はしないの?」
エイヤの疑問に、全員が顔を見合わせた。
「うーん。戦闘職が揃っている攻略組でさえまだクリアできていないしな。焦ってクリアする必要もないから、取りあえずまだ保留かな」
「そうなんだ」
ハジメとしては、特に今のところ作成アイテムに不自由はしていない。
と言うよりも、今現在<神の作業帳>に出てきているアイテム全てをまだ作り切れていないので、それを埋めてからと考えていた。
その間にバネッサたちのレベルが上がれば、攻略も楽になるだろう。
「そうね。その方がいいわね」
「わかった」
その考えを話すと、バネッサとエイヤが同意するように頷いた。
そんなことを話した後は、各自自由行動になった。
ハジメは持ってきた道具類を使って、いつもの回復薬作成を行う。
回復薬程度であれば、既に片手間でも作れるようになっているので、こういう場所でも作るのには問題がないのだ。
イリスたちは、折角坑道に来ているということで、採掘をしている。
折角覚えたスキルなので、スキルのレベルアップも兼ねている。
結界石の効果は十分に検証してあるが、それでも何かあった時のために、ハジメの足元にはルフがいる。
バネッサたちも離れた場所にいるわけではなく、セーフエリアから一番近い鉱脈の所に行っていた。
採掘をしている音が聞こえてきていたので、さほど離れていないのだ。
ノルマの分の作成が終わるころになって、イリスたちが戻って来た。
「お。戻って来たか。どうだった?」
「採掘できたのは、水晶がほとんどで魔晶石が少々といった所です」
「おお。なかなかよかったじゃないか」
「はい。それよりも結界石ですが、結界の中で採掘作業が出来ました」
試しに鉱脈が結界石の中に入るように張ってみると普通に効力を発揮したので、ついでに採掘を行ったとか。
すると、特に問題なく採掘することが出来たので、そのまま作業を続行していたそうだ。
結界は中から外、あるいは外から中への干渉が出来なくなるのだが、中で魔法を使う事は出来るし、当然武器を扱う事も出来る。
その性質を使って、結界の中に鉱脈が来るように設置をすると採掘も出来るということだった。
これは採掘を行うプレイヤーにとっても朗報だろう。
モンスターの邪魔を考えずに採掘をすることが出来るのだ。
「おかげで、私達は楽だったわ」
「そうだね」
バネッサとエイヤが、笑いながらそう言って来た。
「なるほどな。となるとセーフエリアを作る以外にも色々使えそうだな」
「そうですね」
結界石を使って色々な作業が出来るとなると、職業によっては色々な活用方法がありそうだった。
残念ながら、ハジメたちは全ての職業を把握しているわけではないので、何に使えそうかまでは思いつかないが。
それに関しては、それぞれのプレイヤーに考えてもらうしかないだろう。
その後は、特にこれ以上の事は何も起こらずに、結界石も無事に効力を発揮してモンスターに襲撃されることなく翌日を迎えるのであった。
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翌日。
ハジメたちは、戦闘をこなしつつ行動を進んでいた。
既に時間的には第二段階まで進んできているだろう。
明らかに、モンスターの襲撃の割合も増えている。
ドルガド鉱山の坑道は一本道というわけではない。
きっちりとマッピングをしたうえで進んできていた。
昨晩泊まった場所から数時間ほど進んだところで、明らかに坑道の様子が変わった。
坑道というよりも、自然の洞窟といった雰囲気になったのだ。
「敵の質も変わったわね」
一戦交えた後で、バネッサがそう言って来た。
敵の強さや数からいっても明らかに違いがある。
既に、ルフ・バネッサ・エイヤの三人だけで倒すには時間がかかりすぎるレベルになっている。
そのために、ハジメやイリスも戦闘に交じっていた。
「倒せない強さじゃないけど、隙を突かれると危ないね」
「危なっかしいが、この際だからしっかりと連携できるようになるしかないな」
「そうね」
第二段階はまだいいのだが、第一エリアの第三段階に関しては、どうしてもこのメンバーで攻略する必要がある。
もしかしたらサポートキャラが増える可能性があるが、増えない可能性もある。
そうすると、どうしてもこのメンバーでの連携を鍛えておく必要があるのだ。
ここに出てくるモンスターは、改めて連携を見直すにはちょうどいい相手といえた。
「油断せずに進もう」
ハジメの言葉に全員が頷き、更に攻略を進めることになった。
途中にお昼を挟んで、更に洞窟を進んで行く。
既に何度も大きな空間だったり枝分かれの道を選択して進んでいる。
そんなことを繰り返していると、大きな空間に出た。
今までと同じだなとハジメが考えているとエイヤが、
「人工的なところがある」
と言ってきた。
そのエイヤに、全員の視線が集まる。
「ほら。あそこ」
そう言って指さしたところには、縦横二十㎝くらいの穴が開いていた。
エイヤがそれを人工的と言ったのは、しっかりと平らに均されていたからだ。
自然の穴だとこうはならない。
周囲を見渡してみたが、他に同じような物は見当たらなかった。
最後にその穴を確認しようと全員で近づこうとしたその時。
ピョン、という感じで、体長十センチほどの小人が飛び出して来た。
ハジメたちが思わず驚いて、その場に固まっていると、その小人もびっくりしたように飛び上がった。
飛び上がった小人が地面に着地するかしないかのところで、穴から同じような小人がさらに五人ほどわらわらと沸いてきた。
追加した小人たちも同じように飛び上がり、最初の小人が穴のところまで戻るのを見て、全員が穴の中に戻った。
穴の中に戻って行った小人たちは、そのまま奥まで逃げるかと思いきや、穴の縁のところから怖々とこちらを見ている。
これが、ハジメたちとノームたちのファーストコンタクトなのであった。
名前:ハジメ
種族:ヒューマン(人間)
職業:上級作成師LV9(3up)
体力 :2657(+152)
魔力 :4247(+245)
力 :175(+25)
素早さ:225(+33)
器用 :457(+64)
知力 :283(+40)
精神力:333(+46)
運 :9
スキル:調合LV12、魔力付与LV12、鑑定LV10、俊敏LV7(1up)、短剣術LV6(1up)、風魔法LV6(1up)、収納LV10、宝石加工LV9、装飾作成LV7、光魔法LV5(1up)、闇魔法LV5(1up)、空き×3(1up)
職業スキル:短縮作成
名前:ルフ
種族:フェンリル
職業:狼LV27(1up)
体力 :5147(+105)
魔力 :1645(+52)
力 :364(+23)
素早さ:220(+12)
器用 :104(+6)
知力 :122(+5)
精神力:128(+8)
運 :10
スキル:牙撃LV4(1up)、威圧LV10、俊敏LV9、気配察知LV9、収納LV8(1up)、火魔法LV8(1up)、魔力操作LV9、報酬LV7、体当たりLV4(1up)、水魔法LV3(1up)、空き×1
職業スキル:遠吠え
固有スキル:鋭敏な鼻
名前:イリス
種族:牛獣人
職業:農婦(一人前)LV26(1up)
体力 :3748(+84)
魔力 :2026(+52)
力 :200(+11)
素早さ:73(+6)
器用 :199(+16)
知力 :110(+8)
精神力:141(+13)
運 :10
スキル:栽培LV12、料理LV8(1up)、棍棒術LV6(1up)、怪力LV9、採取LV11、成長促進LV10、水魔法LV8、採掘LV7(1up)、地魔法LV8(1up)、収納LV6(1up)、収穫LV4、空き×2
職業スキル:種子作成
固有スキル:緑の手
名前:バネッサ
種族:アマゾネス
職業:戦士LV24(1up)
体力 :3097(+102)
魔力 :1579(+33)
力 :178(+17)
素早さ:106(+11)
器用 :79(+10)
知力 :97(+10)
精神力:58(+7)
運 :10
スキル:剣術LV11、槍術LV6(1up)、弓術LV7(1up)、体術LV10、火魔法LV4(1up)、風魔法LV4(1up)、魔力操作LV5(1up)、収納LV5(1up)、空き×1
名前:エイヤ
種族:ダークエルフ
職業:魔法使いLV9(3up)
体力 :318(+64)
魔力 :1100(+245)
力 :45(+15)
素早さ:57(+20)
器用 :76(+25)
知力 :99(+34)
精神力:67(+23)
運 :10
スキル:火魔法LV7(2up)、風魔法LV7(2up)、精霊術LV7(2up)、魔力操作LV7(2up)、空き×2




