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第三十二話

「お、レベルアップした」


もうすぐ次の町に着くといったところでレベルが上がった。進路上の魔物を潰す時は経験値稼ぎやギルドのポイント目当てにシエルに任せていたから、もう少しって状態で放置されていた経験値をためておこうと魔力上げもかねて窓から見える魔物を魔法でぷちぷちしていたのだ。


「おめでとう」

「ありがとう」


シエルに言われたので礼を言っておく。他の馬車の面子はこいつアレ以上強くなんのかよとでも言わんばかりの何ともいえない表情になっている。もういいよ、どうとでも思ってくれ。もうぼっちは卒業したわけだし、シエルは気にしてないみたいだから問題ないのだ。ないったらない。


「失礼ですが、何レベルなんです?」


聞いてきたのは自信をなくしたとか言っていた冒険者の人だ。そういえば誰にも教えたこと無かったか。たしか23になったと思うんだが、一応確認しておくか。



・名前 ヒラヤス ショウ

・種族 ヒト

・レベル 23 (0/100)

・HP 441587/441587

・MP 354847/354847

・力 31541 (10×3154) ■■□□□

・体力 22079 (7×3154) ■■■□□

・器用 28387 (9×3154) ■□□□□

・俊敏 25233 (8×3154) □□□□□

・魔力 17742 (5×3154) ■■■■□



ずいぶんと強くなったものである。7レベルだと九倍だったはずだから、大体三百倍より大きいって位か。まともに言っても信じてもらえるか怪しいし、適当にごまかしておくか。


「あー、本当に聞きたいっすか?まあ口外した時どうなる「やっぱりいいです」」


即答ってレベルじゃねえぞ。確かに雰囲気出るような感じで言ったけどさぁ、そんな簡単に人に暴力を振るうような不良ではないよ? あ、返り討ちとはいえチンピラを撃退してたっけか。あと襲ってきた盗賊に火の玉で脅しをかけてたっけ。傍から見たら危ない奴なんだろうか。


「ボクにも教えてくれないのかい?」

「ここは一つ禁則事項ってことで」


むーとふくれるシエルにネタで返しておく。大体今言ったらごまかした意味が無いっての。それにチートにも関わってくるし、言ってもいいけど隠しておくのも面白い範囲内だろ。今度からはレベルアップしても黙っておこう。


「まあ大体の予想はつくからいいよ」

「そ、そうか。それならいいや」


若干ドヤ顔なんだがシエルさん、その予想はおそらく間違ってますよー。大方7になったとか思ってるんだろう、残念な人だ。道中の魔物を蹴散らすときも魔法を使うときにぼそぼそつぶやいていて、よくよく聞いてみれば


「深遠より()でし炎よ、その劫火(ごうか)で眼前の敵を燃やし尽くせ!」


とか


「我が眼前に立ちふさがる障害を、その熱を持って焼き払え!」


とか言っていたし、むしろこっちが恥ずかしくなるレベルに残念な人だ。いつかからかう時のネタにとっておくべきか、忘れてあげるべきか判断に苦しむ。


そんなことを考えつつ残ね……シエルを見ていると、ドワーフの町に着いたようだ。今回は他の用事も無いわけだし、皆さんと一緒に宿に向かおう。



********************



宿に向かう道中、ドワーフの視線が俺に集中していた。


いや、確かに町に入ったときにシエルと一緒にドワーフだすげーとはしゃいだ記憶もあるが、だからってこれは異常に注目を受けている気がする。しかもシエルは別にそんなことはないらしい。他のヒトもそんなことは無い……けど確かにショウさんは見られてますねぇと言っている。一体なんでだろうか。


「あのーすみません、何か用でしょうか?」

「い、いや別に……ワシはこれで」


話しかけたら大体がこのパターンで逃げられた。見た目おっさんの男ドワーフでこれなんだから、もし女性にも同じような反応で逃げられたら傷つくので、そっちには話しかけていない。見た目幼女に逃げられるとか絶対ダメージでかいって。


「避けられてるみたい……だね?」

「の割にはめっちゃ見てるんだよなぁー」


仕方が無いのでコミュニケーションはあきらめて宿へと向かう。何が原因かわかれば対処の仕方もあるが、何もわからない現状ではそうする他無い。滞在も一日だし、まあ気にせずに過ごせばいいか。


というわけで宿の部屋でおとなしくしていたら、観光してくる! と言って出かけていったシエルが饅頭のような物をくわえながら両手にフランクフルトと焼き鳥みたいな肉類の屋台なんかで出てそうな食べ物を持って帰ってきた。


「はへはへへむひむーまままっまも」

「とりあえず口のものをどうにかしてからもう一回話してくれる?」


急いで話そうとしたのかアホの子みたいな真似をするシエルに突っ込む。ネタなのか素なのか判断が難しくなってきた。


「んぐんぐ……ごくん、避けられてる理由がわかったよ!」

「ほほう、なんでだった?」

「なんでも黒い髪のヒトの集団の噂があって、それで黒い髪のショウを見かけてビクビクしてたみたいだね」

「噂?」

「なんでも金属を不思議な方法で加工して想像もつかない謎で一部どころじゃない割合で危険なものを作ってる集団だって。いくらか被害も出てるらしくて、今王都にいるらしいけど金属を手に入れるために近くの町にも来るかもしれないって噂だよ」

「物凄いトリッパー臭のする噂だな。それにしても王都って目的地だろ?」


なんともまあ迷惑なやつらだ。生産チートってやつだろうか、それにしても危険なものってなんだろう。


「まあ会うことになっても危ないことには付き合わない方針で観光でもしようか」

「ボクも賛成だね。ところで昇、食べるかい?」


半分ほど食べた焼き鳥っぽい串を差し出してくるシエル。これって間接キ……スにならない無駄にきれいな食べ方だ。ちょっと残念だと思う。

更に残念なのは貯金せずに道中の魔物からのゴールドで食べ歩きしてる所ですね。

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